過去問

「社労士試験 厚生年金法 読むだけで理解できる標準報酬月額の改定のキモ」過去問・厚-54

厚生年金でややこしいのは、保険給付の部分はもちろんですが、標準報酬月額の改定や決定ですね。

なにがややこしいって、「条文の言い回しがわかりにくい!」の一言です。

「〇〇から起算して〇月を経過した日の属する月の翌月」とか「???」ですよね。

こればっかりは条文に慣れていくしかないので、何度も読んでイメージできるようにしていくようにしましょう。

それでは最初の問題から見ていきましょう。

1問目は、標準報酬月額の等級区分についてのお話です。

何がどうなったら等級区分の改定が行われるのかチェックしていくことにしましょう。

 

標準報酬月額の等級区分の改定

(平成23年問8B)

毎年3月31日における全被保険者の標準報酬月額を平均した額が標準報酬月額等級の最高等級の標準報酬月額を超える場合において、その状態が継続すると認められるときは、その翌年の4月1日から、健康保険法第40条第1項に規定する標準報酬月額の等級区分を参酌して、政令で、当該最高等級の上に更に等級を加える標準報酬月額の等級区分の改定を行わなければならない。

 

解説

解答:誤

標準報酬月額の等級区分の改定は、

  • 「全被保険者の標準報酬月額を平均した額」ではなく、「全被保険者の標準報酬月額を平均した額の100分の200に相当する額」
  • 「その翌年の4月1日から」ではなく、「その年の9月1日から」
  • 「行わなければならない」ではなく、「行うことができる

が正解となります。

厚生年金の標準報酬月額の等級は、令和3年1月現在、32等級まであります。

標準報酬月額は、お給料の額で等級が決まり、最高は32等級の65万円以上となっていますが、

その等級の区分について、

  • 毎年3月31日における全被保険者の標準報酬月額を平均した額の100分の200に相当する額が、
  • 標準報酬月額等級の最高等級の標準報酬月額を超える場合、
  • その状態が継続すると認められるときは、
  • その年の9月1日から、最高等級の上に更に等級を加える標準報酬月額の等級区分の改定行うことができる

と規定されているのです。

被保険者の収入に応じた標準報酬月額に近づけよう、ということなのかもしれませんね。

さて、上記は被保険者全体の話でしたが、個人の方に目を向けてみましょう。

昇給や降給があると、その額に見合った標準報酬月額の等級に変動があります

これを随時改定と呼びますが、お給料の額が少し変わったくらいで標準報酬月額を変えていては事務が面倒ですから、

随時改定をするのも要件が定められています。

その要件がどうなっているのか、次の問題で見てみましょう。

 

随時改定の要件とは

(平成23年問10C)

実施機関は、被保険者が現に使用される事業所において継続した3か月間(その事業所で継続して使用された期間に限るものとし、かつ報酬支払の基礎となった日数が17日未満である月があるときは、その月を除く。)に受けた報酬の総額をその期間の月数で除して得た額が、その者の標準報酬月額の基礎となった報酬月額に比べて、著しく高低を生じた場合において、その額を報酬月額として、その著しく高低を生じた月の翌月から標準報酬月額を改定しなければならない。なお、所定の短時間労働者である被保険者を除くものとする。(問題文を一部補正しています)

 

解説

解答:誤

随時改定は、固定的賃金や賃金体系の変動があったことで報酬の額が変動した場合に行うのですが、要件として、

  • 被保険者が現に使用される事業所において継続した3月間に受けた報酬の総額を、
  • その月数ではなく、「3」で除して得た額が、
  • その人の標準報酬月額の基礎となった報酬月額に比べて、著しく高低(2等級以上の差)を生じた場合、
  • その額を報酬月額として、その著しく高低を生じた月の翌月から標準報酬月額を改定

することになっています。

ただし、継続した3月間のすべての月において報酬支払の基礎となった日数が17日以上あることが条件です。

ちなみに、短時間労働者の場合は、11日以上となります。

で、随時改定によって改定された標準報酬月額は、その年の8月まで有効で、改定されたのが7月〜12月だった時は翌年の8月まで有効となります。

ところで、昇給や降給以外でお給料の額が変わるシチュエーションといえば産休や育休が挙げられます。

これらの場合にも、「申し出る」ことによって標準報酬月額を改定することができます。

まず、産前産後休業を終了したときの改定について見てみましょう。

下の過去問では、産前産後休業後でも改定が行われないケースについて出題されています。

さて、それはどんな時なのでしょうか?

 

産前産後休業終了時の改定で注意すべきこと

(令和元年問7A)

被保険者が産前産後休業終了日の翌日に育児休業等を開始している場合には、当該産前産後休業を終了した際の標準報酬月額の改定は行われない。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

産前産後休業を終了した被保険者が、産休後に休業の対象になる子を養育する場合、

産休終了日の翌日が属する月以後3月間に受けた報酬の総額を、

その期間の月数で除して得た額を報酬月額として、標準報酬月額を改定する仕組みになっています。

この3月については、随時改定の時と違って、報酬支払の基礎となった日数が17日未満である月があるときは、その月を除くことになっていて、

2等級以上の変動がなくても改定できるのですが、

産休が終わってそのまま育児休業に入っているときは標準報酬月額の改定は行われないのです。

育休に入っているということはお給料が発生しないことがほとんどでしょうし、社会保険料も免除になっていますから改定する意味がないでしょうね。

では、次は育児休業を終了した時の改定について見てみましょう。

次の過去問は事例問題になっていて、いつから標準報酬月額が改定されるのかが問われていますので読んでみましょう。

 

育児休業等終了時改定はいつから改定される?

(平成29年問8B)

平成28年5月31日に育児休業を終えて同年6月1日に職場復帰した3歳に満たない子を養育する被保険者が、育児休業等終了時改定に該当した場合、その者の標準報酬月額は同年9月から改定される。また、当該被保険者を使用する事業主は、当該被保険者に対して同年10月に支給する報酬から改定後の標準報酬月額に基づく保険料を控除することができる。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

育児休業終了時の改定は、育休終了後に、

  • 3歳未満の子を養育している被保険者は
  • 育休終了後3ヶ月間に受けた報酬の総額をその期間の月数で除して得た額を標準報酬月額として

改定することになりますが、産前産後休業と同じく、支払基礎日数が17日未満の月は除かれます

で、いつ標準報酬月額が改定されるのかというと、

「育児休業等終了日の翌日から起算して2月を経過した日の属する月の翌月」

から改定されます。

これを問題文に当てはめてみると、

  • 育児休業等終了日の翌日 →  6月1日
  • 6月1日から2月を経過した日の属する月の翌月 → 9月

となりますので、問題文のように、9月から標準報酬月額が改定されます。

また、保険料の控除については、基準となる月のお給料から前月分の保険料を控除することができますので、

(つまり、10月支給のお給料で、9月分の保険料を控除することができる)

これも問題文のとおりとなります。

では最後に、保険者算定について取り扱った過去問を見ておきましょう。

保険者算定というのは、さっきまで出てきた随時改定や産前産後、育児休業終了時改定、定時決定など規定の方法で標準報酬月額を決めてしまうことが難しい場合や、不当になってしまう場合に、保険者が報酬月額を算定するものです。

いわば特例みたいなものですね。

この保険者算定にはどんなケースがあるのかを下の過去問で見てみましょう。

 

保険者算定が行われるための条件

(平成24年問10C)

報酬月額の定時決定に際し、当年の4月、5月、6月の3か月間に受けた報酬の月平均額から算出した標準報酬月額と、前年の7月から当年の6月までの間に受けた報酬の月平均額から算出した標準報酬月額の間に2等級以上の差が生じた場合であって、当該差が業務の性質上例年発生することが見込まれる場合には、事業主の申立て等に基づき、実施機関による報酬月額の算定の特例として取り扱うことができる。(問題文を一部補正しています)

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

問題文では定時決定から保険者算定になるケースを取り扱っていますが、

定時決定は通常、7月1日に現に使用される事業所から4月・5月・6月の3ヶ月間に受けた報酬の額の平均額を報酬月額にして、その年の9月から1年間の標準報酬月額にします。

しかし、たとえば、4月〜6月の3ヶ月間が、毎年その会社のかき入れ時で、残業がめちゃくちゃ多い場合、

その額を基準に標準報酬月額が決まってしまうと、その3ヶ月間のせいで社会保険料が高くなってしまいます。

なので、

「当年の4月、5月、6月の3か月間に受けた報酬の月平均額から算出した標準報酬月額」と、

前年の7月から当年の6月までの間に受けた報酬の月平均額から算出した標準報酬月額」の間に

2等級以上の差を生じた場合で、その差が業務の性質上例年発生することが見込まれる場合は、著しく不当な場合に該当し、

保険者算定が行われることになります。

こちらについては、通達が出ていますので、リンクを貼っておきますね。

 

参考記事:「健康保険法及び厚生年金保険法における標準報酬月額の定時決定及び随時改定の取扱いについて」の一部改正等に伴う事務処理等について 平成23年3月31日 /保保発0331第6号/年管管発0331第14号

 

今回のポイント

  • 標準報酬月額の等級の区分は、
    • 毎年3月31日における全被保険者の標準報酬月額を平均した額の100分の200に相当する額が、
    • 標準報酬月額等級の最高等級の標準報酬月額を超える場合、
    • その状態が継続すると認められるときは、
    • その年の9月1日から、最高等級の上に更に等級を加える標準報酬月額の等級区分の改定行うことができる

    と規定されています。

  • 随時改定は、固定的賃金や賃金体系の変動があったことで報酬の額が変動した場合に行うのですが、要件として、
    • 被保険者が現に使用される事業所において継続した3月間に受けた報酬の総額を、
    • その月数ではなく、「3」で除して得た額が、
    • その人の標準報酬月額の基礎となった報酬月額に比べて、著しく高低(2等級以上の差)を生じた場合、
    • その額を報酬月額として、その著しく高低を生じた月の翌月から標準報酬月額を改定

    することになっていますが、継続した3月間のすべての月において報酬支払の基礎となった日数が17日以上あることが条件です。

  • 産前産後休業を終了した被保険者が、産休後に休業の対象になる子を養育する場合、産休終了日の翌日が属する月以後3月間に受けた報酬の総額を、その期間の月数で除して得た額を報酬月額として、標準報酬月額を改定する仕組みになっていて、この3月については、随時改定の時と違って、報酬支払の基礎となった日数が17日未満である月があるときは、その月を除くことになっており、また、2等級以上の変動がなくても改定できるのですが、産休が終わってそのまま育児休業に入っているときは標準報酬月額の改定は行われないのです。
  • 育児休業終了時の改定は、育休終了後に、
    • 3歳未満の子を養育している被保険者は
    • 育休終了後3ヶ月間に受けた報酬の総額をその期間の月数で除して得た額を標準報酬月額として

    改定することになりますが、産前産後休業と同じく、支払基礎日数が17日未満の月は除かれます

  • 保険者算定というのは、さっきまで出てきた随時改定や産前産後、育児休業終了時改定、定時決定など規定の方法で標準報酬月額を決めてしまうことが難しい場合や、不当になってしまう場合に、保険者が報酬月額を算定するものです。

 

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