〜「健康保険法 一般被保険者の規定はここがポイント!」健保-27〜
今回は一般被保険者についての過去問を集めてみました。
一般被保険者とは、「当然被保険者」と言われますので、適用除外になる場合を除いて、法律上当然に被保険者になります。
どこまでいくと被保険者から外れるのかについての規定を確認していくことにしましょう。
個人事業主は被保険者になることができる?
(平成29年問5B)
従業員が3人の任意適用事業所で従業員と同じような仕事に従事している個人事業所の事業主は、健康保険の被保険者となることができる。
解説
解答:誤
個人事業所の事業主は、原則として、被保険者となることはできません。
ここで条文を確認にしてみましょう。
法3条 1 「この法律において「被保険者」とは、適用事業所に使用される者及び任意継続被保険者をいう。(後略)」
被保険者になるには、「使用されている」ことが条件になるのです。
ですので、原則としては「使用している側」の事業主は被保険者になることができません。
となると、社長さんは全て被保険者になれないことになるのですが、「使用される」を念頭に置いた上で次の過去問を見てみましょう。
法人の代表者は被保険者になれるの?
(平成22年問6B)
法人の理事、監事、取締役、代表社員等の法人役員は、事業主であり、法人に使用される者としての被保険者の資格はない。
解説
解答:誤
法人役員は、法人に「使用される者」ということで被保険者になります。
法人の代表者などは、法人から、労務の対償として報酬を受けている者は、法人に使用される者として被保険者の資格を取得する、ということですね。
次は、故意に被保険者の資格を喪失して再取得するパターンです。
目的は、標準報酬月額を変更することにあるのですが。。。
60歳以上で再雇用される場合は、、、?
(令和元年問9ウ)
同一の事業所においては、雇用契約上一旦退職した者が1日の空白もなく引き続き再雇用された場合、退職金の支払いの有無又は身分関係若しくは職務内容の変更の有無にかかわらず、その者の事実上の使用関係は中断することなく存続しているものであるから、被保険者の資格も継続するものであるが、60歳以上の者であって、退職後継続して再雇用されるものについては、使用関係が一旦中断したものとみなし、当該事業所の事業主は、被保険者資格喪失届及び被保険者資格取得届を提出することができる。
解説
解答:正
60歳以上の者で、退職後に継続して再雇用される場合は、使用関係が一旦中断したものとみなして事業主は、被保険者資格喪失届及び被保険者資格取得届を提出することができます。
一般的に再雇用になった場合は、給与改定が行われてお給料が下がることが多いです。
お給料が下がると、当然社会保険料も下げてもらわなければ割に合いませんが、随時改定を待っているとその間の社会保険料がもったいないです。
ですので、再雇用の場合は一旦、被保険者の資格を喪失して再取得することで、標準報酬月額を更新することが認められています。
次は、学生さんについての過去問です。
学生さんが被保険者になれるかどうか、の論点になります。
学生さんでも被保険者になれるのでしょうか?
(平成27年問5B)
学生が卒業後の4月1日に就職する予定である適用事業所において、在学中の同年3月1日から職業実習をし、事実上の就職と解される場合であっても、在学中であれば被保険者の資格を取得しない。
解説
解答:誤
問題文の場合、被保険者の資格を取得します。
これは通達が出ていますのでご紹介しますね。
「昭和16年12月22日社発第1580号」
※赤字の部分だけ読んでもらって大丈夫です。一部読みやすいように変更しています。
中等学校最高学年在学者(学生が)ニシテ本月末以降ニ於テ職業に就くことを希望する者に対しては在学ノ侭職業実習を為し得る旨(中略)就職先における職業実習は事実上の就職とも解され且之ガ身分並ニ待遇等ハ一切就職セル場合ト同一ニ取扱ハルベキ儀卜被存候ニ付テハ(中略)健康保険又ハ職員健康保険の被保険者として取扱う(後略)。
となっています。
つまり、ポイントは「事実上の就職と解されている」点です。
なので、たとえ学生でも被保険者の資格を取得できるのです。
では、最後に適用除外から被保険者に変わる節目を扱った過去問です。
「臨時に使用される者で2月以内の期間を定めて使用される者」については適用除外になるのですが、所定の期間を超えて引き続き使用されることになった場合は、その日から被保険者になるという規定があります。
では、下の過去問の場合はどうなるのでしょうか。
適用除外が外れてはたして被保険者の資格を取得できるか?
(平成22年問5A)
60日間の期間を定めて雇用される者が、その期間中に負傷し休業のまま引き続き60日を超えて使用関係が存在し、負傷の治癒後に労務に服することが見込まれるときは、61日目から被保険者の資格を取得する。
解説
解答:正
問題文の場合は、「61日目から」被保険者の資格を取得します。
問題文のように、負傷し休業のままでも、所定の期間(60日間)を超えて引き続き使用されている場合には、61日目から被保険者の資格を取得することになります。
こちらも通達をご紹介しておきましょう。
「昭和5年8月6日保規第344号」
※赤字の部分だけ読んでもらって大丈夫です。一部読みやすいように変更しています。
60日の期間を定めて雇入れたるもの偶々雇入後58日目に負傷して引続き休業しているものを60日を超えて続けて雇入れるノ故ヲ以テ61日目に其ノ資格取得届を提出したルモノアリ此ノ場合(中略)当然資格を認められるモノト被存候モ(後略)
となっています。
ちなみに、これには続きがあって、仕事ができる状態ではないのに、単に健康保険の給付を受けるためだけに雇っている場合は被保険者の資格を取得することはない、となっています。
今回のポイント
- 個人事業所の事業主は、原則として、被保険者となることはできません。
- 法人役員は、法人に「使用される者」ということで被保険者になります。
- 60歳以上の者で、退職後に継続して再雇用される場合は、使用関係が一旦中断したものとみなして事業主は、被保険者資格喪失届及び被保険者資格取得届を提出することができます。
- 事実上の就職と解されている場合は、学生さんも被保険者の資格を取得できます。
- 負傷し休業のままでも、所定の期間を超えて引き続き使用されている場合には、その日から被保険者の資格を取得することになります。
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