標準報酬月額の決定や改定をする方法として、定時決定や資格取得時決定、随時改定、育児休業や産前産後休業が終了した時の改定、保険者算定とありますが、
今回は定時決定について出題された過去問を取り上げてみました。
勉強の仕方としては、すべてに通じることですが、まず原則を押さえて、例外規定にどんなものがあるのかを理解することです。
(暗記するときには、例外から覚えた方が早いということはありますが。笑)
原則をわかっていないと、応用問題に対応しにくくなりますので、繰り返し触れることで自分のものにしたいですね。
それでは、最初の問題に入っていきましょう。
この問題では、定時決定の原則が論点になっていますので、どのように規定されているのか見ていくことにしますね。
定時決定の要件とは
(平成26年問3B)
4月に被保険者資格を取得した者の定時決定について、4月、5月、6月に受けた報酬の支払基礎となった日数がそれぞれ5日、16日、18日であった場合、5月と6月に受けた報酬の平均額をもってその年の9月から翌年の8月までの標準報酬月額を決定する。
解説
解答:誤り
定時決定では、報酬の支払基礎となった日数が17日未満である月がある時は、その月を除いて算定するので、
問題文の場合、6月の報酬を報酬月額にして標準報酬月額を決定することになります。
「定時決定」の位置付けを確認したいと思いますが、
被保険者の健康保険料や厚生年金保険料の額を決めるのに標準報酬月額があります。
この標準報酬月額は、実際のお給料の額と合わせるために、年に1回見直します。
その方法として、定時決定があるのですが、どうやって標準報酬月額を決定するのかというと、
7月1日現在で使用している被保険者の3ヶ月間(4月~6月)の報酬月額を事業主が届出をします。
で、厚生労働大臣は、その届出内容に基づいて標準報酬月額を決定する仕組みになっています。
決定した標準報酬月額は、その年の9月から翌年8月までの各月に適用されることになります。
ちなみに、4〜6月に受けた報酬というのは、その月に「実際に支給された報酬」のことを指しますので、
4月分のお給料という意味ではないので注意しましょう。
さて、事業主のもとで働いているのは、フルタイムの従業員ばかりでなく、パートなど毎日出勤していない従業員の方もおられるでしょう。
となると、報酬が支払われる基礎に日数が17日以上になるとは限りません。
このように、いわゆる4分の3基準を満たさない被保険者の定時決定はどのように行われるのか見てみましょう。
特定適用事業所の短時間労働者への適用は?
(平成29年問9エ)
特定適用事業所において被保険者である短時間労働者の標準報酬月額の定時決定は、報酬支払いの基礎となった日数が11日未満である月があるときは、その月を除いて行う。また、標準報酬月額の随時改定は、継続した3か月間において、各月とも報酬支払いの基礎となった日数が11日以上でなければ、その対象とはならない。
(短時間労働者とは、1週間の所定労働時間が同一の事業所に使用される通常の労働者の1週間の所定労働時間の4分の3未満である者又は1か月間の所定労働日数が同一の業所に使用される通常の労働者の1か月間の所定労働日数の4分の3未満である者のことをいいます)
解説
解答:正
問題文のとおりです。
特定適用事業所で短時間労働者の被保険者について定時決定を行う場合、報酬の支払基礎日数は原則の17日ではなく、「11日」と読み替えることになります。
なので、報酬の支払い基礎日数が、11日未満の場合は、その月を除いて定時決定され、
随時改定の場合は、3ヶ月すべての月が11日以上である必要があります。
では、この報酬の支払い基礎日数についてもう少し見てみましょう。
次の問題では、日給月給の方のケースについて問われていますが、どのように考えていくのでしょうか。
支払基礎日数の考え方
(平成25年問1A)
標準報酬月額の定時決定等における支払基礎日数の取扱いとして、月給者で欠勤日数分に応じ給与が差し引かれる場合にあっては、就業規則、給与規程等に基づき、事業所が定めた日数から当該欠勤日数を控除した日数を支払基礎日数とする。
解説
解答:正
問題文のとおりで、いわゆる「日給月給」の被保険者の場合、1ヶ月の所定労働日数から欠勤した日を除いて、報酬の支払基礎日数とします。
なぜ、このような取り扱いにしているかというと、通常の月給者については、1ヶ月の日数はカレンダーの日数(歴日数)で計算するので、
日給月給の人に対しては、実態に合わせた形にしてあるのですね。
なので、日給で支払われる方については、出勤日数で見ることになります。
ところで、定時決定でその年の9月からの標準報酬月額が決まるわけですが、
場合によっては定時決定による標準報酬月額が採用されないこともあります。
では、定時決定の適用が除外になるのはどんなケースがあるのでしょうか。
定時決定が適用除外になるのは?
(平成24年問3D)
7月1日に被保険者資格を取得した者については、標準報酬月額の定時決定を行わず、資格取得時に決定された標準報酬月額を、原則として翌年の6月30日までの1年間用いることになっている。
解説
解答:誤り
問題文の場合、定時決定が行われないのは正しいですが、資格取得時決定で決まった標準報酬月額の効力は、
翌年の6月30日までではなく、「翌年の8月31日」までとなっています。
ということで、定時決定の適用除外についてまとめておきましょう。
- 6月1日から7月1日までの間に被保険者の資格を取得した場合
- 随時改定や、育児休業等、産前産後休業を終了した際の改定によって、7月から9月までのいずれかの月から標準報酬月額を改定されるか、改定されるべき被保険者
ちなみに、資格取得時決定では、1月から5月までに資格を取得した場合は、その年の8月までその標準報酬月額が採用されます。
では最後に、定時決定の届出方法について問われた過去問がありますので、それを確認しておきましょう。
定時決定を届出する手続きの方法
(令和2年問8A)
健康保険被保険者報酬月額算定基礎届の届出は、事業年度開始の時における資本金の額が1億円を超える法人の事業所の事業主にあっては、電子情報処理組織を使用して行うものとする。ただし、電気通信回線の故障、災害その他の理由により電子情報処理組織を使用することが困難であると認められる場合で、かつ、電子情報処理組織を使用しないで当該届出を行うことができると認められる場合は、この限りでない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
事業年度開始時に、資本金の額が1億円を超える法人の事業所の事業主については、「電子情報処理組織」を使用して行う必要があります。
つまり、紙ではなく、電子申請で定時決定の手続きをしてね、ということですね。
資本金が1億円を超えるということは、被保険者の数もハンパないでしょうから、電子申請の利用を義務づけた形になります。
ただ、通信回線が故障したりして電子申請ができない場合は仕方ないですね。
今回のポイント
- 定時決定では、報酬の支払基礎となった日数が17日未満である月がある時は、その月を除いて算定します。
- 特定適用事業所で短時間労働者の被保険者について定時決定を行う場合、報酬の支払基礎日数は原則の17日ではなく「11日」と読み替えることになりますので、報酬の支払い基礎日数が、11日未満の場合は、その月を除いて定時決定され、随時改定の場合は、3ヶ月すべての月が11日以上である必要があります。
- 「日給月給」の被保険者の場合、1ヶ月の所定労働日数から欠勤した日を除いて、報酬の支払基礎日数とします。
- 定時決定の適用除外の要件として、
- 6月1日から7月1日までの間に被保険者の資格を取得した場合
- 随時改定や、育児休業等、産前産後休業を終了した際の改定によって、7月から9月までのいずれかの月から標準報酬月額を改定されるか、改定されるべき被保険者 があります。
- 事業年度開始時に、資本金の額が1億円を超える法人の事業所の事業主については、「電子情報処理組織」を使用して行う必要があります。
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