過去問

『社労士試験 労働に関する一般常識 「労使間の交渉等に関する一般調査」から何を学ぶ?』労一-20

今回の労働に関する一般常識では、統計調査から、令和元年度社労士試験からの出題で、

「平成29年労使間の交渉等に関する実態調査(厚生労働省)」

について取り扱った問題を取り上げたいと思います。

「平成29年労使間の交渉等に関する実態調査」というのは、労使関係総合調査ということで、

労使関係の状況を総合的に把握することを目的として、毎年テーマを変えて昭和58年から実施されています。

今回の調査は、労働組合と使用者との関係について行われた調査になっています。

社労士試験の勉強をする上で、統計調査に触れる時は、細かい数字にとらわれるのではなく

おおよそのイメージを掴む感覚で、「広く浅く」押さえていくことが大切です。

どの統計が出題されるのか分からないわけですし、数字だけ追っかけても労力が大変ですので深入りしないようにしたいですね。

それでは最初の問題に進みたいと思います。

1問目は、労働組合と使用者の間で労働協約を締結している割合について問われています。

労働協約というのは何だったのか思い出しながら問題文を読んでみましょう。

 

労働組合と使用者で労働協約を結んでいる割合は?

(令和元年問2A)

労働組合と使用者(又は使用者団体)の間で締結される労働協約の締結状況をみると、労働協約を「締結している」労働組合は9割を超えている。

 

解説

解答:正

問題文のとおりで、労働協約を使用者と締結している労働組合は94.7%と、「9割」を超えています。

そもそも労働協約とは、労働者の賃金や待遇などの労働条件について、労働組合と使用者が話し合い、合意した文書のことです。

労働協約として成立するためには、

・合意した内容を書面にすること

・会社と労働組合の双方が、署名し、または記名押印すること

が条件です。

なので、会社に労働組合があるのであれば、労働協約を結んでいるのが当たり前と言ってもいいかもしれませんね

100%になっていないのは、ユニオンなど社外の労働組合が統計に入っているからかもしれません。

ちなみに、労働協約に規定がある事項については、

「労働時間・休日・休暇に関する事項」67.9%とが一番多くて、

「人事等に関する事項」62.6%、「賃金に関する事項」59.4%と続いています。

では次に、労働組合が使用者と具体的に交渉を行なった内容について、どんな項目が上位に入ってきたのかを見てみましょう。

先ほどの、労働協約に規定がある事項については一旦忘れてくださいね。笑

 

労働者は使用者とどんなことを交渉していた?

(令和元年問2B)

過去3年間(平成26年7月1日から平成29年6月30日の期間)において、「何らかの労使間の交渉があった」事項をみると、「賃金・退職給付に関する事項」、「労働時間・休日・休暇に関する事項」、「雇用・人事に関する事項」が上位3つを占めている。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

労使間でどのような事柄について話し合われたのかというと、

  1. 賃金・退職給付に関する事項」→ 89.7%
  2. 労働時間・休日・休暇に関する事項」→ 79.0%
  3. 雇用・人事に関する事項」→65.9%

となっていて、やはりお金に関することが多かったようですね。

さて、労働組合があるからといって、しょっちゅう団体交渉が行われているのかというと、そうでもないようです。

平成26年7月から平成29年6月までの3年間で団体交渉を行なった労働組合はどれだけあるのでしょうか?

 

3年間で使用者と団体交渉を行なった労働組合はどれだけある?

(令和元年問2C)

過去3年間(平成26年7月1日から平成29年6月30日の期間)において、使用者側との間で行われた団体交渉の状況をみると、「団体交渉を行った」労働組合が全体の約3分の2、「団体交渉を行わなかった」労働組合が約3分の1になっている。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

平成26年7月から平成29年6月までの3年間で団体交渉を行なった労働組合は、67.6%で約3分の2となっています。

私の感想としては「少ない」ですね。

3年間という期間で3分の2の労働組合しか団体交渉をしていないのか、という感じです。

統計を勉強するときに、この「感想」は大事にしたいです。

あなたなりの感想を持つことで、イメージとして定着しやすいのでオススメです。

ちなみに、過去3年間に団体交渉を行った労働組合について、1年で何回団体交渉をしたのか、交渉回数の平均は、

  1. 3〜4回 → 37.0%
  2. 1〜2回 → 26.8%
  3. 5〜9 回 → 21.5%

となっています。

およそ四半期に1回くらい団体交渉を行うのが多いようですね。

では、労働組合と使用者との話し合いをしていくなかで、双方が合意せず、争いになるケースもあります。

これを「労働争議」といいますが、果たして実際に労働争議があった労働組合はどれくらいあるのか見てみましょう。

 

労働争議に発展した労働組合はどのくらいあるのか

(令和元年問2D)

過去3年間(平成26年7月1日から平成29年6月30日の期間)において、労働組合と使用者との間で発生した労働争議の状況をみると、「労働争議があった」労働組合は5%未満になっている。

 

解説

解答:正

問題文のとおりで、労働争議があった労働組合は、1.7%で「5%未満」となっています。

この労働争議では、ストライキなどの争議行為があるものと、労働委員会があっせんや調停をしたりするケースがありますが、

かなり「少ない」という印象ですね。

で、どうして労働争議がなかったのか、という項目もあるのですが、

「対立した案件がなかったため」という理由が一番多く、53.6% だったそうです。

それだけ労使が協力的なのでしょうね。

そんな感想を持ったうえで最後の問題を見てみましょう。

使用者側との労使関係について「安定的」と答えた労働組合がどれだけあるのかが問われています。。。

 

労働組合と使用者との関係はどんな状態?

(令和元年問2E)

使用者側との労使関係の維持について労働組合の認識をみると、安定的(「安定的に維持されている」と「おおむね安定的に維持されている」の合計)だとする割合が約4分の3になっている。

 

解説

解答:誤り

労働組合と使用者側との労使関係の維持について、労働組合がどう思っているのかというと、

  1. 安定的に維持されている → 42.7%
  2. おおむね安定的に維持されている →46.4%

となっていて二つを合わせると、4分の3ではなく、「約9割」が安定的であると答えています。

労使が争うことなく、協力して会社を盛り上げるのが一番ですよね。

 

今回のポイント

  • 統計を勉強するときは、自分なりの感想を持つことで、イメージとして定着しやすいのでオススメです。
  • 労働協約を使用者と締結している労働組合は94.7%と、「9割」を超えています。
  • 労使間でどのような事柄について話し合われたのかというと、賃金・退職給付に関する事項」が最も多く、約9割となっています。
  • 平成26年7月から平成29年6月までの3年間で団体交渉を行なった労働組合は、約3分の2となっています。
  • 労働争議があった労働組合は、1.7%で「5%未満」となっています。
  • 労働組合と使用者側との労使関係の維持について、労働組合がどう思っているのかというと、「約9割」が安定的であると答えています。

 

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