今回は、使用者が労働者に対して行う賃金の保障について見てみたいと思います。
具体的には、休業手当(26条)と出来高払制の保障給(27条)になるのですが、
それぞれの支払に関する考え方についておさらいしておきましょう。
それでは過去問を見ていきましょう。
最初の問題は、休業手当と賃金の関係について問われています。
休業手当の支払についてどのようになっているのか見てみましょう。
休業手当と賃金支払5原則
(令和元年問5E)
労働基準法第26条に定める休業手当は、賃金とは性質を異にする特別の手当であり、その支払については労働基準法第24条の規定は適用されない。
解説
解答:誤り
休業手当は、賃金にあたると解されるので、労基法第24条の規定が適用されますから誤りです。
ちなみに、解雇予告手当は、解雇予告手当を支払わないと解雇が成立しないので、一定期日払などは適用されませんが、
通貨払、直接払は賃金に準ずる扱いをすることになります。
では、休業手当の支払が発生する日について見てみましょう。
次の問題では、休日に休業手当が発生するかが問われていますがどうでしょう。
休業手当は休日にも発生する?
(平成29年問6E)
労働基準法第26条に定める休業手当は、同条に係る休業期間中において、労働協約、就業規則又は労働契約により休日と定められている日については、支給する義務は生じない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
休業手当は、使用者の責に帰すべき事由によって休業する場合に支払義務が発生しますので、もともと休日で労働日ではない日に休業手当の支払義務は発生しません。
では次のケースではどうでしょう。
使用者が労働者に休業を命じているのですが、私傷病が原因となったものなのです。
このような場合、休業手当は必要となるのでしょうか。
私傷病での休業は休業手当の対象となるか
(平成23年問6A)
労働安全衛生法第66条による健康診断の結果、私傷病を理由として医師の証明に基づき、当該証明の範囲内において使用者が休業を命じた場合には、当該休業を命じた日については労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当するので、当該休業期間中同条の休業手当を支払わなければならない。
解説
解答:誤り
問題文の場合、休業手当の支払義務はありませんので問題文は誤りです。
休業手当は、先ほども述べたように、「使用者の責に帰すべき事由」による休業の場合に支払義務が発生するので、
私傷病は使用者側に責任はありませんから、使用者が労働者に休業を命じたとしても、休業手当の支払義務は発生しません。
さて、次は出来高払制が採用されている場合の賃金の保障について見てみましょう。
出来高払制は、時給や月給と違って、支払われる賃金が不安定なので、労働者が就業したにもかかわらず、
材料不足のために待ち時間が発生したことなどが原因で賃金が低下する場合に、
一定の賃金を保障するのが保障給です。
ということで、出来高払制の保障給について下の問題で確認しましょう。
出来高払制における賃金の保障
(平成26年問4E)
いわゆる出来高払制の保障給を定めた労働基準法第27条の趣旨は、月給等の定額給制度ではなく、出来高払制で使用している労働者について、その出来高や成果に応じた賃金の支払を保障しようとすることにある。
解説
解答:誤り
出来高払制の保障給は、出来高や成果に応じた賃金の支払ではなく、「労働時間に応じて」一定額の賃金の保障をするものなので誤りです。
それでは最後に、保障給に該当しないものについて問われている過去問を確認しましょう。
出来高払制の保障の対象外となるもの
(平成28年問3E)
労働基準法第27条に定める出来高払制の保障給は、労働時間に応じた一定額のものでなければならず、労働者の実労働時間の長短と関係なく1か月について一定額を保障するものは、本条の保障給ではない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
出来高払制の保障給は、労働時間に応じて一定額の賃金を支給するものなので誤りです。
なので、問題文のように実労働時間の長短と関係ない賃金は、保障給に該当しません。
今回のポイント
- 休業手当は、賃金にあたると解されるので、労基法第24条の賃金支払5原則の規定が適用されます。
- 休業手当は、使用者の責に帰すべき事由によって休業する場合に支払義務が発生しますので、もともと休日で労働日ではない日に休業手当の支払義務は発生しません。
- 私傷病の場合は、使用者側に責任はありませんので、使用者が労働者に休業を命じたとしても、休業手当の支払義務は発生しません。
- 出来高払制の保障給は、出来高や成果に応じた賃金の支払ではなく、「労働時間に応じて」一定額の賃金の保障をするものです。
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