「賃金」は、労働時間と並んで重要な労働条件ですね。
また、そこから計算される平均賃金も社労士試験では重要項目になっています。
まずは、労基法でいうところの賃金や平均賃金がどういうものなのかをおさらいしていきましょう。
ということで1問目の問題は、「ズバリ!賃金とは?」です。
労基法では、賃金をどのように定義しているのか見ていきますね。
労基法でいうところの「賃金」とは?
(平成23年問1E)
労働基準法に定める賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者又は顧客が労働者に支払うすべてのものをいう。
解説
解答:誤り
労基法における賃金は、労働の対償として、使用者又は顧客ではなく、「使用者」が支払うものすべてを指します。
なので、顧客が労働者に渡すチップや心づけのようなものは賃金に含まれません。
では、使用者が労働者に支払うものでも賃金に入らないものがあるのでしょうか。
ちょっと次の問題で確認しましょう。
恩恵的な見舞金は賃金にならない?
(平成28年問1オ)
労働協約、就業規則、労働契約等によってあらかじめ支給条件が明確にされていても、労働者の吉凶禍福に対する使用者からの恩恵的な見舞金は、労働基準法第11条にいう「賃金」にはあたらない。
解説
解答:誤り
結婚祝金や災害見舞金などの名目で、使用者から「恩恵的に」支払われる見舞金は、原則として賃金に当たりませんが、
問題文のように、労働協約、就業規則、労働契約などによってあらかじめ支給条件が明確なものについては、労働の対償として支払われる賃金になります。
ちなみに、徴収法では、就業規則などで支給条件が明確なものであっても賃金には該当しませんので注意が必要ですね。
さて、次は「平均賃金」について見ていこうと思います。
平均賃金は、解雇予告手当や休業手当、年次有給休暇を取ったときの賃金の算定に使われますが、
この平均賃金を算出するにあたっては、過去3ヶ月間に支払われた「賃金」の総額が対象になります。
ということで、平均賃金に算入される賃金と入らない賃金の違いを下の問題で確認しましょう。
賞与は平均賃金に算入されるのか
(平成24年問4E)
労働基準法に定める「平均賃金」とは、これを算定すべき事由の発生した日以前3か月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいい、年に2回6か月ごとに支給される賞与が当該3か月の期間内に支給されていた場合には、それも算入して計算される。
解説
解答:誤り
問題文の場合、賞与は平均賃金には算入されません。
平均賃金は、
「算定すべき事由の発生した日以前3ヶ月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額」
のことです。
ただ、
- 臨時に支払われた賃金
- 3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(たとえばボーナス)
- 通貨以外のもので支払われた賃金で所定の範囲外のもの
は平均賃金を計算するときには対象外となります。
問題文の賞与は6ヶ月ごとに支払われているので平均賃金の計算には入らないということになりますね。
逆にいうと、賞与という名目であっても、3ヶ月ごとに支払われている場合は平均賃金の算定に入ります。
ちなみに、平均賃金の計算方法として、
「算定すべき事由の発生した日以前3ヶ月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額」
と記載しましたが、
時給や日給、出来高制などで働いている人の平均賃金を出す場合は、「最低保障」が適用されます。
つまり、原則どおり「賃金総額を総日数で割った額」と、「賃金総額を労働日数で割った額の60%」を比較して、
高い方の金額を平均賃金として採用されますので、合わせて押さえておきましょう。
さて、次の問題の場合、平均賃金への算入はどうなのでしょう。
通勤用の定期券が賃金になるかどうかが論点になっていますので見ていきますね。
定期券は平均賃金の算定に入る?
(平成26年問3ウ)
ある会社で労働協約により6か月ごとに6か月分の通勤定期乗車券を購入し、それを労働者に支給している。この定期乗車券は、労働基準法第11条に規定する賃金であり、各月分の賃金の前払いとして認められるから、平均賃金算定の基礎に加えなければならない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
会社が労働協約や労使協定などの規定によって支給している通勤用の定期券は労基法上の賃金に当たります。
これがたとえ、6ヶ月分の定期だったとしても、毎月支払われる賃金に対して、前もって支払われているだけなので、
賃金に変わりはないということですね。
なので、問題文の場合は、平均賃金を算定するときは、定期代を1ヶ月分に割って算入することになりますね。
では最後に、平均賃金を算定する上で、お金の面だけではなく、時間の観点も含めた過去問に触れておきましょう。
平均賃金を計算するときには、「算定すべき事由の発生した日以前3ヶ月間」という期間がありますが、
その期間から外されるものがあるのです。
公民権の行使による休業と平均賃金
(平成27年問2B)
平均賃金の計算において、労働者が労働基準法第7条に基づく公民権の行使により休業した期間は、その日数及びその期間中の賃金を労働基準法第12条第1項及び第2項に規定する期間及び賃金の総額から除外する。
解説
解答:誤り
平均賃金を計算するときに、公民権の行使によって休業した期間については、その期間や賃金を控除するという規定はありません。
平均賃金を算定するときに対象外となる期間やその間の賃金は、
- 業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間
- 産前産後の女性が労基法第65条の規定によって休業した期間
- 使用者の責めに帰すべき事由によって休業した期間
- 育児介護休業法による育児休業もしくは介護休業をした期間
- 試みの使用期間
となっています。
なので、労基法第7条の公民権の行使によって休業したとしても、平均賃金の算定から期間や賃金が除かれることはありません。
もし無給の休業であれば平均賃金の額が下がるということになりますね。
今回のポイント
- 労基法における賃金は、労働の対償として「使用者」が支払うものすべてを指します。
- 結婚祝金や災害見舞金などの名目で、使用者から「恩恵的に」支払われる見舞金は、原則として賃金に当たりませんが、労働協約、就業規則、労働契約などによってあらかじめ支給条件が明確なものについては、労働の対償として支払われる賃金になります。
- 平均賃金は、「算定すべき事由の発生した日以前3ヶ月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額」のことですが、
- 臨時に支払われた賃金
- 3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(たとえばボーナス)
- 通貨以外のもので支払われた賃金で所定の範囲外のもの
は平均賃金を計算するときには対象外となります。
- 会社が労働協約や労使協定などの規定によって支給している通勤用の定期券は労基法上の賃金に当たります。
- 平均賃金を算定するときに対象外となる期間やその間の賃金は、
- 業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間
- 産前産後の女性が労基法第65条の規定によって休業した期間
- 使用者の責めに帰すべき事由によって休業した期間
- 育児介護休業法による育児休業もしくは介護休業をした期間
- 試みの使用期間
となっています。
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