社労士試験で障害(補償)給付についてマークすべきものの一つに「併合」があります。
◯級と◯級の2つの身体障害があったときに何級になるでしょうか、みたいな問題ですね。
これはテキストを読んでいるだけでは知識を使いこなすのが難しいので、問題を解いて慣れるのが一番ですね。
つまり、テキスト読みと問題演習のバランスを取って勉強するのがいいです。
問題を解くとき、同じ問題を繰り返し解くのは全く問題ありません。
よく「問題を覚えてしまいます。」という声を聞きますが、問題だけ解いていては確かに実力アップにはつながりにくいです。
問題の論点を見たときに、テキストの該当箇所を思い出すようにし、テキストに書いてある要件とリンクさせる訓練を積むことで基礎力はもちろん、応用力もつくようになりますのでぜひお試しくださいね。
それでは最初の問題を見てみましょう。
身体障害の等級を決めるときの対処が論点になっていますので確認しましょう。
傷害等級表にない身体障害の場合の対処
(平成30年問6A)
厚生労働省令で定める障害等級表に掲げるもの以外の身体障害は、その障害の程度に応じて、同表に掲げる身体障害に準じて障害等級を定めることとされている。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
問題文にある「同表」というのは「別表第1」のことで、その表には等級別にいろいろな症状が記載されていますが、
そこに載っていない症状については、表にある身体障害に準じて障害の等級が決まることになります。
この「別表第1」は下にリンクを貼っておきますのでご興味のある方はご自由にご参考になさってくださいね。
参考記事:労働者災害補償保険法施行規則 別表第1 障害等級表
さて、もし身体障害が2つ以上あるときはどのように障害等級を決定するんでしょうか。
それには色々とルールがあり、社労士試験でも出題されていますので見てみましょう。
障害が2つある時の考え方
(令和2年問6D)
障害補償給付を支給すべき身体障害の障害等級については、同一の業務災害により身体障害が2つある場合で、一方の障害が第14級に該当するときは、重い方の身体障害の該当する障害等級による。(問題文を一部補正しています。)
解説
解答:正
問題文のとおりです。
身体障害が2つ以上ある場合は「併合」という処置になるので、2つ分の障害(補償)年金や障害(補償)一時金がもらえるわけではありません。
この併合には2つの要件があり、上記は「第14級」が関係するものです。
つまり、身体障害が2つあったとして、一つの身体障害が第14級だった場合は、どちらか重いほうの身体障害が該当する障害等級になります。
ではもう一つの要件は何かというと、「併合繰上げ」です。
これは、身体障害が2つ以上あるときに、あるルールによって障害を一つにまとめて障害等級を決定するものです。
それがどういうルールになっているのか次の問題で確認しましょう。
併合繰上げの法則とは
(平成30年問6E)
障害等級表に該当する障害が2以上あって厚生労働省令の定める要件を満たす場合には、その障害等級は、厚生労働省令の定めに従い繰り上げた障害等級による。具体例は次の通りである。
① 第5級、第7級、第9級の3障害がある場合・・・第3級
② 第4級、第5級の2障害がある場合・・・第2級
③ 第8級、第9級の2障害がある場合・・・第7級
解説
解答:誤
問題文のケースでは、②が誤りで、「第2級」ではなく「第1級」になります。
この併合繰上げの要件がどうなっているのかというと、
- 第13級以上に該当する身体障害が2以上あるとき → 重いほうを1級繰上げ
- 第8級以上に該当する身体障害が2以上あるとき → 重いほうを2級繰上げ
- 第5級以上に該当する身体障害が2以上あるとき → 重いほうを3級繰上げ
となっています。
なので、問題文をもう一度見てみると、
①は、重い順に5級、7級となっているので、8級以上が2以上ある要件に該当し、重いほうの5級を2級繰上げて3級になります。
②は、4級と5級があり、5級以上が2つの要件になるので、重いほうの4級を3級繰り上げることになり、1級となります。
③については、8級と9級の2つですから、13級以上が2以上あるときの要件に該当しますから、重いほうの8級を1級繰り上げて7級ということになります。
しかし、障害が2つ以上あるからといって、何でもかんでも併合されるかというとそうでもないようです。
それはどんなケースなのか、次の過去問で見てみましょう。
症状が派生している時の障害等級の決め方
(平成25年問2D)
業務災害による身体の部位の機能障害と、そこから派生した神経症状が、医学的にみて一個の病像と把握される場合には、当該機能障害と神経症状を包括して一個の身体障害と評価し、その等級は重い方の障害等級による。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
つまり、問題文のように「身体の部位の機能障害」とそこから派生した「神経症状」の2つの症状が出ているとしても、
一方の障害がもう一方の障害から派生した、つまり関連性のあるものの場合、それらの症状をまとめて一つの障害として見ることになります。
その結果、重い方の障害等級が採用されることになります。
では最後に、障害(補償)一時金についての問題を見ておきましょう。
次の問題では、障害補償一時金を受け取った後に、障害の程度が重くなった場合の取り扱いについて問われています。
障害(補償)一時金を受けた後、障害が重くなったら、、、?
(平成30年問6B)
障害補償一時金を受けた者については、障害の程度が自然的経過により増進しても、障害補償給付の変更が問題となることはない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
障害(補償)一時金の場合、障害(補償)年金と違って、障害の程度が自然的経過によって重くなったとしても、その分の一時金が出るわけではありません。
逆にいうと、障害の程度が軽くなっても一時金を返してね、ということにはならないということです。
今回のポイント
- 「別表第1」に記載のない症状については、のことなんですが、表にある身体障害に準じて障害の等級が決まることになります。
- 身体障害が2つあったとして、一つの身体障害が第14級だった場合は、どちらか重いほうの身体障害が該当する障害等級になります。
- 併合繰上げの要件は、
- 第13級以上に該当する身体障害が2以上あるとき → 重いほうを1級繰上げ
- 第8級以上に該当する身体障害が2以上あるとき → 重いほうを2級繰上げ
- 第5級以上に該当する身体障害が2以上あるとき → 重いほうを3級繰上げ
となっています。
- 「身体の部位の機能障害」とそこから派生した「神経症状」の2つの症状が出ているとしても、一方の障害がもう一方の障害から派生した、つまり関連性のあるものの場合、それらの症状をまとめて一つの障害として見ることになり、重いほうの障害等級を採用することになります。
- 障害(補償)一時金の場合、障害の程度が自然的経過によって重くなったとしても、その分の一時金が出るわけではありません。
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