今回の労災保険法の給付に関する通則からは、保険給付の支給期間や請求権、未支給の保険給付などについての過去問を取り上げています。
出題頻度の高いものが多いので、これを機会に確認するようにしたいですね。
最初の問題では、年金の保険給付のスタート月と終了月についての論点になっていますので見ていくことにしましょう。
年金の保険給付の支給開始月と終了月の取り扱い
(平成27年問7ア)
年金たる保険給付の支給は、支給すべき事由が生じた月から始められ、支給を受ける権利が消滅した月で終了する。
解説
解答:誤り
年金たる保険給付の支給は
- 開始月・・・支給すべき事由が生じた月の翌月
- 終了月・・・支給を受ける権利が消滅した月
ということになっています。
もし、支給開始月をその月ということにしていたら、もしその月に受給権がなくなってしまったりしたときに色々振り回されそうですよね。
支給開始を翌月にしておけば、ある程度余裕を持って支給の手続きもできるんじゃないでしょうか。
で、年金の保険給付の支給を決定したときに年金証書を交付することになるのですが、どんなことが書かれているのか、下の問題で確認しますね。
年金証書に記載してあることとは
(令和元年問2ア)
所轄労働基準監督署長は、年金たる保険給付の支給の決定の通知をするときは、(1)年金証書の番号、(2)受給権者の氏名及び生年月日、(3)年金たる保険給付の種類、(4)支給事由が生じた年月日を記載した年金証書を当該受給権者に交付しなければならない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
年金証書の交付は所轄労基署長が行うのですが、証書には、
- 年金証書の番号
- 受給権者の氏名及び生年月日
- 年金たる保険給付の種類
- 支給事由が生じた年月日
が書かれています。
すべて覚える必要はないと思いますが、「こんなことが書いてあるんだ」という感じで頭の隅に置いておくと良いと思います。
さて、労災保険には色々な給付がありますが、保険給付についての請求権について取り扱った判例があります。
これは、労働者の方が亡くなったのは業務上のものだとして、遺族の方が保険給付の請求をしたのですが、最終的に裁判で遺族側が敗訴してしまいました。
一体どういうことなのでしょうか?
保険給付の請求権の考え方とは
(平成29年問7A)
労災保険法による保険給付は、同法所定の手続により行政機関が保険給付の決定をすることにより給付の内容が具体的に定まり、受給者は、それ以前においては政府に対し具体的な一定の保険給付請求権を有しないとするのが、最高裁判所の判例の趣旨である。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
労災保険の保険給付は、行政側が給付の決定をしてはじめて給付の内容も決まるので、給付の決定よりも前の段階では、受給権者には具体的な請求権はない、という判例になっています。
つまり、労災保険の保険給付を受けるためには、行政が定めている手続きをちゃんと踏まないと請求権も発生しません、ということなのですが、、、
この裁判では、遺族の方が業務災害の遺族補償を求めたのですが、所轄労基署長は不支給の決定をしました。
で、遺族側が審査請求などをしたまでは良かったのですが、審査の決定が出る前に裁判所に提訴したのだそうです。
もちろん、労災保険法には不服申し立ての制度があるので提訴はできるのですが、現制度ではあくまでも審査請求の結果が出てから提訴という順序を守る必要があるわけです。
別の見方をすると、労災保険では、審査請求もせずに提訴できる制度にはなっていないので、
プロセスを踏まずに保険給付の請求権があるはずだ、と主張して提訴してもダメだよということですね。
では次は船舶が事故などで沈没した場合の保険給付の取り扱いについて見ていきましょう。
具体的には、遺族補償給付などになるのですが、保険給付の手続きとしては、死亡日を確定させる必要があるので、
船の事故の場合、その日を確定できない可能性があります。
そのようなとき、どのように対応するのでしょうか。
船舶の労働者に関する遺族補償給付などの取り扱い
(令和2年問2A)
船舶が沈没した際現にその船舶に乗っていた労働者の死亡が3か月以内に明らかとなり、かつ、その死亡の時期がわからない場合には、遺族補償給付、葬祭料、遺族給付及び葬祭給付の支給に関する規定の適用については、その船舶が沈没した日に、当該労働者は、死亡したものと推定する。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
船舶に乗っていて行方不明になった労働者の生死が3ヶ月間わからない場合や、
労働者の死亡が3ヶ月以内であることは明らかになっているんだけど、死亡の時期がわからない場合は
遺族補償給付、葬祭料、遺族給付及び葬祭給付の支給に関する規定の適用については、
その船舶が沈没などをした日か、労働者が行方不明となった日に、当該労働者は、死亡したものと推定することになっています。
なので、その日を死亡した日として保険給付の手続きを進めるわけですね。
ちなみに、船員さんの場合、行方不明になっている間は、所定の要件を満たせば船員保険から行方不明手当金が支給されます。
この行方不明手当金については、船員保険について取り扱ったこちらの記事をご覧くださいね。
参考記事:「社労士試験 社会保険に関する一般常識 船員保険法を攻略するカギは〇〇との比較!」過去問・社一-18
では最後に、労災保険の保険給付を受ける権利を持っている人が亡くなったときに、
生前、その保険給付の請求をしていなかった場合の未支給の保険給付の請求について、次の過去問で見てみることにしましょう。
未支給の保険給付を受けることができる人が複数いたら、、、?
(平成30年問4ウ)
労災保険法に基づく保険給付を受ける権利を有する者が死亡し、その者が死亡前にその保険給付を請求していなかった場合、未支給の保険給付を受けるべき同順位者が2人以上あるときは、その1人がした請求は、全員のためその全額につきしたものとみなされ、その1人に対してした支給は、全員に対してしたものとみなされる。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
これは、そのように規定しておかないと、1人の保険給付を2人以上に分配してたら事務が煩雑になって大変ですよね。
なので、未支給の保険給付を請求を1人が請求したら、保険給付の全額について他の請求権を持っている全員を代表して請求したものとみなされるわけですね。
今回のポイント
- 年金たる保険給付の支給は
- 開始月・・・支給すべき事由が生じた月の翌月
- 終了月・・・支給を受ける権利が消滅した月
ということになっています。
- 所轄労基署長が交付する年金証書には、
- 年金証書の番号
- 受給権者の氏名及び生年月日
- 年金たる保険給付の種類
- 支給事由が生じた年月日
が書かれています。
- 労災保険の保険給付は、行政側が給付の決定をしてはじめて給付の内容も決まるので、給付の決定よりも前の段階では、受給権者には具体的な請求権はない、という判例になっています。
- 船舶に乗っていて行方不明になった労働者の生死が3ヶ月間わからない場合や、労働者の死亡が3ヶ月以内であることは明らかになっているんだけど、死亡の時期がわからない場合は、遺族補償給付、葬祭料、遺族給付及び葬祭給付の支給に関する規定の適用については、その船舶が沈没などをした日か、労働者が行方不明となった日に、当該労働者は、死亡したものと推定することになっています。
- 未支給の保険給付を受けるべき同順位者が2人以上あるときは、その1人がした請求は、全員のためその全額につきしたものとみなされ、その1人に対してした支給は、全員に対してしたものとみなされる。
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