過去問

「社労士試験 安衛法 過去問で読み解く事業場や事業者の考え方」安衛-30

社労士試験では、定義づけが大切になりますが、今回は安衛法の「事業場」や「事業者」についての定義について取り扱った過去問を集めました。

安衛法は労基法から独立した法律なので、労基法に影響を受けた部分もあるのですが、安衛法独自のものもありますので違いを把握できるといいですね。

では最初の問題から見ていくことにしましょう。

1問目の問題は、事業場の単位をどのようにとらえていくのかが問われていますので見ていきますね。

 

「事業場」の単位はどのように考える?

(令和2年問9B)

労働安全衛生法は、事業場を単位として、その業種、規模等に応じて、安全衛生管理体制、工事計画の届出等の規定を適用することにしており、この法律による事業場の適用単位の考え方は、労働基準法における考え方と同一である。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

安衛法は、もともと労基法の一部でしたので、事業場の単位についての考え方は労基法と同じということになります。

なので、安衛法と労基法は一体的な運用が図られなければならないと通達にも出ています。

こちらの通達についてはリンクを貼っておきますので、ご自由にご参考になさってくださいね。

問題文の論点は、「第二 この法律の基本的事項」のところにあります。

 

参考記事:労働安全衛生法の施行について 昭和四七年九月一八日 発基第九一号

 

事業場の単位の考え方が分かったところで、次は事業場の「業種」について見てみたいと思います。

業種が何なのかによって、そのまま総括安全衛生管理者などの人数要件に関わってきますので、

事業場の業種についての考え方を下の問題で見てみましょう。

 

事業場の業種の分け方は?

(平成28年問9C)

労働安全衛生法における事業場の業種の区分については、その業態によって個別に決するものとし、経営や人事等の管理事務をもっぱら行なっている本社、支店などは、その管理する系列の事業場の業種とは無関係に決定するものとしており、たとえば、製鉄所は製造業とされるが、当該製鉄所を管理する本社は、製造業とはされない。

 

解説

解答:正

問題文のとおりで、事業場の業種の区分については、それぞれの事業場の実際の業態について個別に判断することになっています。

たとえ、メインの業種が建設業や運送業だったとしても、

本社だけを見た場合に、総務部門や企画部門しかないようであれば、

本社は建設業などにはなりません。

でも、これはそうしてもらわないと、安全管理体制が現状に合ったものになりませんね。

本社に総務部門しかないのに、建設業だからということで本社に総括安全衛生管理者を選任しても、なんの安全を守るの?って話になりますもんね。苦笑。

これは、労基法でも同じ考え方で、たとえば、一つの工場に製造部門と食堂部門があったとして、

それぞれの業態が完全に別個のもので、別々に労務管理する方が適当な場合は、事業場を分けることもできますので、

実態にあった運用をしていこうということですね。

では、次は「事業者」について見ていくことにしましょう。

下の問題では、事業者と労働者について、安衛法と労基法ではどのような違いがあるのか、について問われています。

 

安衛法における事業者と労働者の考え方

(平成28年問9A)

労働安全衛生法における「事業者」は、労働基準法第10条に規定する「使用者」とはその概念を異にするが、「労働者」は、労働基準法第9条に規定する労働者(同居の親族のみを使用する事業又は事務所に使用される者及び家事使用人を除く。)をいう。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

安衛法の「労働者」については、労基法第9条に規定されている労働者を指します。

労基法第9条では、

「この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」

と規定しています。

ですが、事業者については、安衛法と労基法で違いがあるようです。

そもそも、安衛法では「事業者」と呼んでいるのに対し、労基法では「使用者」としているので、中身には違いがありそうですね。

では、それぞれどのように規定されているのか見てみることにしましょう。

 

事業者(安衛法)と使用者(労基法)の違いとは?

(平成26年問8ア)

労働安全衛生法では、「事業者」は、「事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。」と定義されている。

 

解説

解答:誤

問題文にある、

「事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。」

というのは、労働基準法の「使用者」についての規定になっています。

安衛法の「事業者」の定義は、法2条にあり、事業者とは、

「事業を行う者で、労働者を使用するものをいう」

というように定められています。

どういうことかというと、安衛法の事業者は、法人企業の場合は法人そのもの、個人事業であれば、個人事業主のことを指していて、

事業の利益を得ている張本人ということになっています。

なので、労基法で規定されている「経営担当者」や「事業主のために行為をするすべての者」は安衛法では対象外の可能性が高くなりますね。

では最後に、安衛法と事業者等の責務について問われている問題を見ておきましょう。

条文ベースで考えると誤りとも取れる問題ですが、義務規定なのか努力規定なのかという目線で読むといいですね。

 

事業者等の責務についての規定

(令和2年問9D)

労働安全衛生法は、事業者の責務を明らかにするだけではなく、機械等の設計者、製造者又は輸入者、原材料の製造者又は輸入者、建設物の建設者又は設計者、建設工事の注文者等についても、それぞれの立場において労働災害の発生の防止に資するよう努めるべき責務を有していることを明らかにしている。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

事業者の責務については具体的に触れられていませんが下記のようになっています。

事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、

快適な職場環境の実現労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。

また、事業者は、が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するようにしなければならない。

と規定されています。

で、問題文にある建設工事の注文者等については、規定上は「労働災害の発生の防止に資するよう努めるべき責務」ではなく、

安全で衛生的な作業の遂行をそこなうおそれのある条件を附さないように配慮しなければならない』

ということになっています。

本試験では、問題文が努力義務の表現になっていることと、他の選択肢に明らかな誤りがあったので、この問題文は正解肢となりました。

念のため、法3条を下記に記載しておきますね。

(事業者等の責務)
法3条
1 事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、

快適な職場環境の実現労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。

また、事業者は、が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するようにしなければならない。

2 機械、器具その他の設備を設計し、製造し、若しくは輸入する者、

原材料製造し、若しくは輸入する者又は建設物建設し、若しくは設計する者は、

これらの物の設計、製造、輸入又は建設に際して、これらの物が使用されることによる労働災害の発生の防止資するように努めなければならない

3 建設工事の注文者仕事を他人に請け負わせる者は、

施工方法、工期等について、安全で衛生的な作業の遂行をそこなうおそれのある条件を附さないように配慮しなければならない。

 

今回のポイント

  • 事業場の単位についての考え方は労基法と同じです。
  • 事業場の業種の区分については、それぞれの事業場の実際の業態について個別に判断することになっています。
  • 安衛法の「労働者」については、労基法第9条に規定されている労働者を指しており、労基法第9条では、「この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」と規定しています。
  • 安衛法の「事業者」は、「事業を行う者で、労働者を使用するものをいう」というように定められています。
  • 事業者の責務については具体的に触れられていませんが下記のようになっています。『事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。また、事業者は、が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するようにしなければならない。』と規定されています。

 

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