たとえば建設の現場(有期事業)ごとに保険関係の手続きをしていたら、事業主もお役所も大変なので「有期事業の一括」という制度があるわけなのですが、
現状がスムーズに制度にあてはまらず、「〇〇の時はこうする」みたいな問題が社労士試験でも出題されています。
概算保険料の額が160万円未満で、立木の伐採の場合は素材の見込み生産量が1000立方メートル未満、建設の事業であれば請負金額が1億8000万円未満である、
といった原則の要件を押さえた上で、それぞれのケースを過去問演習やテキスト読みで補っていくのがいいかなと思います。
最初の過去問は有期事業の一括についての一番基本的な考え方です。
有期事業の一括に承認は必要??
(平成24年労災問8D)
有期事業の一括は法律上一定の要件に該当する場合には当然に行われるものであり、事業主からの申請、都道府県労働局長による承認は不要である。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
「有期事業の一括」は、「法律上当然に」行われるので事業主が申請したり、承認を受ける必要はありません。
(いまでは一括有期事業開始届の提出も必要ありません。)
ではどういう形でお役所に報告するのかというと、後述する「一括有期事業報告書」を提出することで行います。
では、有期事業を一括するのはいいとして、建設の現場事務所で労働保険料の申告ができる人や設備がない場合はどうすればいいのでしょうか。
次の過去問で確認してみましょう。
施工はできるけど、事務ができない時の一括はどうなる?
(平成23年労災問10E)
有期事業の一括の要件としては、それぞれの事業に係る労働保険料の納付の事務が一の事務所で取り扱われることが必要であるとされているが、当該事業の施工に当たるものの、労働保険料の申告及び納付事務を行う事務能力を有しない事務所については、当該事務所を統括管理する事務所のうち、当該事業に係る労働保険料の申告及び納付事務を実際に行う直近上位の事務所を一括事務所として取り扱うこととされている。
解説
解答:正
問題文のとおりで、事務能力を有しない事務所の場合は、直近上位の事務所に一括事務所になってもらいます。
もし、職人さんがほとんどの現場事務所に労災保険の手続きをお願いするのは酷というものですよね。
で、有期事業の一括が行われたら、一括された事業は継続事業のような扱いになり、労働保険料の納付などの業務をするわけですが、
労基署などのお役所へは、どこのお役所へ手続きに行くことになるのでしょうか。
いいかえれば、所轄のお役所がどこになるのか、ということですね。。。
有期事業が一括された時の所轄のお役所はどこ?
(平成28年労災問8E)
有期事業の一括が行われると、その対象とされた事業はその全部が一つの事業とみなされ、みなされた事業に係る労働保険徴収法施行規則による事務については、労働保険料の納付の事務を行うこととなる一つの事務所の所在地を管轄する都道府県労働局長及び労働基準監督署長が、それぞれ、所轄都道府県労働局長及び所轄労働基準監督署長となる。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
キーワードは、「労働保険料の納付の事務を行うこととなる一つの事務所の所在地」ですね。
上記の所在地を管轄している労基署長が「所轄」労基署長になるということです。
手続きをするのには近くて助かりますね。
さて、建設の事業であれば、仕様の変更などで請負金額が変わることがあるかもしれません。
最初は1億8000万円に収まっていたのが、増額になって超えてしまうことも考えられます。
そういったように事業の途中で有期事業の一括の要件から外れてしまった場合はどうするんでしょうね。
要件から外れた時点で一括有期事業からも除外されてしまうのでしょうか。
もし途中で事業の規模が変わったら、、、
(平成23年労災問10D)
有期事業の一括とされた建設の事業について、一括されている一の事業について事業開始後の規模の変更等により労働保険徴収法施行規則第6条の有期事業の一括の要件に該当しなくなった場合でも、有期事業の一括の対象とならない独立の有期事業として取り扱われない。
解説
解答:正
問題文のとおりで、いちど一括された有期事業は、途中で規模が変わっても独立の有期事業になることはありません。
その方が、1億8000万円超えたと思ったらまた変更になって減額されちゃった、みたいなことに振り回されなくていいですよね。
初志貫徹、といったところでしょうか。(?)
それでは最後に、先述した「一括有期事業報告書」についての過去問を見ておきましょうか。
はたして、この報告書が出てくるタイミングはいつになるのでしょうか。
一括有期事業報告書の提出時期は?
(平成23年雇用問9C)
一括有期事業報告書は、前年度中又は保険関係が消滅した日までに終了又は廃止したそれぞれの一括された事業の明細を報告するものであり、確定保険料申告書の提出に加え、所轄都道府県労働局歳入徴収官に提出しなければならない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
一括有期事業報告書は、
- 前年度中の事業については、次の保険年度の6月1日から起算して40日以内
- 保険関係が消滅した日から起算して50日以内
に確定保険料申告書と一緒に、所轄都道府県労働局歳入徴収官に提出することになっています。
今回のポイント
- 「有期事業の一括」は、「法律上当然に」行われるので事業主が申請したり、承認を受ける必要はありません。
- 事務能力を有しない事務所の場合は、直近上位の事務所に一括事務所になってもらいます。
- 労働保険料の納付の事務を行うこととなる一つの事務所の所在地を管轄している労基署長が「所轄」労基署長になります
- いちど一括された有期事業は、途中で規模が変わっても独立の有期事業になることはありません。
- 一括有期事業報告書は、
- 前年度中の事業については、次の保険年度の6月1日から起算して40日以内
- 保険関係が消滅した日から起算して50日以内
に確定保険料申告書と一緒に、所轄都道府県労働局歳入徴収官に提出することになっています。
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