過去問

「社労士試験 労基法 雑則で押さえるべきポイントはここから!」過去問・労基-53

労基法の雑則といえば、法令の周知義務から賃金台帳、労働者名簿、記録の保存や付加金など様々なことが規定されていますが、

今回は「法令の周知義務」と「付加金」についての過去問を中心に集めてみました。

特に、周知義務についてはちょっと細かいところもありますので、少しずつ見ていくことにしましょう。

最初の問題は、施行規則からの出題で、労基法の雑則部分からの出題ではありませんが、使用者の所轄労基署長への報告義務についての過去問に触れておきましょう。

 

労基署長へ報告する義務があるのは?

(令和2年問2E)

使用者は、事業を開始した場合又は廃止した場合は、遅滞なくその旨を労働基準法施行規則の定めに従い所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。

 

解説

解答:誤

使用者は、事業を開始した場合は所轄労基署長に報告しなければなりませんが、廃止した場合は報告する必要はありません。

事業を開始した場合は、様式23号の2(適用事業報告)を所轄労基署に提出することになります。

「事業を開始」というのは、労働者を使用することになった場合、と置き換えてもいいです。

つまり、労基法でいうところの「適用事業」というのは、「労働者がいる事業」ということになりますから、1人で商売する場合は関係ありませんね。

(労働者がいなければ、そもそも労基法は適用されませんし。)

ただ、事業を廃止した場合の取り扱いについては規定がありません。

さて、事業主には労基法などの法令や就業規則、労使協定などの内容を労働者に周知する必要がありますが、どれをどの程度まで周知すればいいのでしょうか。

次の問題がその論点になっていますので見ていくことにしましょう。

 

使用者が行う労働者への周知はどの範囲まで?

(令和2年問2A)

労働基準法第106条により使用者に課せられている法令等の周知義務は、労働基準法、労働基準法に基づく命令及び就業規則については、その要旨を労働者に周知させればよい。

 

解説

解答:誤

労基法や労基法に基づく命令は「要旨の周知で大丈夫ですが、就業規則は要旨だけではダメで全文」を周知する必要があります。

まとめると、

  • 要旨でオーケー → 労基法、労基法施行規則、労基法に基づく命令など
  • 全文で周知 → 就業規則、労使協定、企画業務型裁量労働制や高度プロフェッショナル制度にかかる労使委員会の決議

となります。

労基法などの法律については、そのすべての条文が労働者にとって必要なものとは限りません(たとえば年少者の規定など)が、

就業規則や労使協定は、その会社のルールですからきちんと全部を明らかにしなさい、ということですね。

では周知をするためにはどんな方法ですればいいのでしょうか。

次の問題では、就業規則の周知方法について問われていますので確認しましょう。

 

就業規則の周知方法は?

(平成23年問5E)

労働基準法第106条に定める就業規則の周知義務は、磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置することによっても果たされ得る。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

就業規則や労使協定、労基法などの周知方法として、

  • 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること
  • 書面を労働者に交付すること
  • 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること

が規定されています。

別の言い方をすると、それらのような方法を取っていれば、労働者が実際に見たかどうかまでは問われず、周知義務を果たしたことになりますが、

労働者が「就業規則見せて」と要望したにもかかわらず拒否すると労基法第106条違反になります。

では、この「周知」について別の視点で見てみましょう。

労使協定や労使委員会の内容を労働者に周知する必要があるのは分かりましたが、周知する労働者の範囲はどうなっているのでしょうか。

その対象になる労働者への周知だけで事足りるのでしょうか。。。

 

36協定や労使委員会の決議はどこまで周知すればいい?

(令和2年問2B)

使用者は、労働基準法第36条第1項(時間外及び休日の労働)に規定する協定及び同法第41条の2第1項(いわゆる高度プロフェッショナル制度に係る労使委員会)に規定する決議を労働者に周知させなければならないが、その周知は、対象労働者に対してのみ義務付けられている。

 

解説

解答:誤

問題文のように、36協定のような労使協定や、高度プロフェッショナル制度にかかる労使委員会の決議の周知は、対象労働者だけではなく、「労働者全員」に周知する必要があります。

労基法第106条には、

『使用者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨、就業規則、(中略)、第36条第1項、(中略)並びに第41条の2第1項に規定する決議を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によつて、労働者に周知させなければならない。』

と規定しています。

つまり、条文には対象労働者とは一言も書かれていませんので、すべての労働者に周知しないと要件を満たしたことにはならないということですね。

さて、最後に「付加金」について見ておきましょう。

付加金は、労働者の請求によって裁判所が使用者に命じるものですが、その付加金の対象になるお金にはどんなものがあったかを次の問題で確認しましょう。

 

付加金の対象になるもの

(平成24年問1E)

裁判所は、労働基準法第20条(解雇予告手当)、第26条(休業手当)若しくは第37条(割増賃金)の規定に違反した使用者又は第39条第9項の規定による賃金(年次有給休暇中の賃金)を支払わなかった使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができることとされているが、この付加金の支払に関する規定は、同法第24条第1項に規定する賃金の全額払の義務に違反して賃金を支払わなかった使用者に対しては適用されない。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

付加金は、

  • 解雇予告手当
  • 休業手当
  • 割増賃金
  • 年次有給休暇期間の賃金

の4種類が対象になっていて、使用者が賃金の全額払の義務に違反したとしても付加金の対象にはなりません。

ちなみに、付加金は、上記の4つのお金を払わなかった金額だけでなく、それと同額のお金の支払いを裁判所は使用者に命ずることができます。

いわゆる「倍返し」ということになりますね。

また、この付加金の請求は、違反のあった時から5年(当分の間は3年)以内にする必要があります。

 

今回のポイント

  • 使用者は、事業を開始した場合は所轄労基署長に報告しなければなりませんが、廃止した場合は報告する必要はありません。
  • 労基法や労基法に基づく命令は「要旨の周知で大丈夫ですが、就業規則は全文」を周知する必要があります。
  • 就業規則や労使協定、労基法などの周知方法として、
    • 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること
    • 書面を労働者に交付すること
    • 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること

    が規定されています。

  • 問題文のように、36協定のような労使協定や、高度プロフェッショナル制度にかかる労使委員会の決議の周知は、「労働者全員」に周知する必要があります。
  • 付加金は、
    • 解雇予告手当
    • 休業手当
    • 割増賃金
    • 年次有給休暇期間の賃金

    の4種類が対象になっています。

 

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