厚生年金保険原簿には、被保険者の氏名や資格の取得・喪失の年月日、標準報酬などが記録されていますが、
今回はそんな厚生年金原簿そのものや記録についての問題を見ていくことにしましょう。
最初の問題は、被保険者の資格の取得についての「通知」に関する論点ですが、
一般の被保険者のものではありませんのでちょっと戸惑うかもしれません。
では早速見ていきましょう。
厚生労働大臣が認可した場合の通知は誰にする?
(令和2年問8C)
厚生労働大臣は、適用事業所以外の事業所に使用される70歳未満の者を厚生年金保険の被保険者とする認可を行ったときは、その旨を当該被保険者に通知しなければならない。
解説
解答:誤
問題文の場合、厚生労働大臣は「被保険者」ではなく「事業主」へ通知します。
で、厚生労働大臣から通知があったら、事業主はすみやかに被保険者へ通知する必要があります。
ちなみに、厚生労働大臣から行う事業主への通知には、被保険者の資格の得喪の確認や、標準報酬の決定や改定などがあります。
しかし、次の問題の場合は事情が違うようです。
それは、離婚などをしたときにちなんだ通知なのですが、、、
離婚などによる標準報酬の改定や決定をしたときは、、、
(平成27年問10A)
厚生労働大臣は、第一号厚生年金被保険者の標準報酬の決定又は改定を行ったときはその旨を原則として事業主に通知しなければならないが、厚生年金保険法第78条の14第2項及び第3項に規定する「特定被保険者及び被扶養配偶者についての標準報酬の特例」における標準報酬の改定又は決定を行ったときは、その旨を特定被保険者及び被扶養配偶者に通知しなければならない。(問題文を一部補正しています)
解説
解答:正
問題文のとおりです。
被保険者と被扶養配偶者が離婚などをした時に、被扶養配偶者が第3号被保険者だった期間の被保険者の標準報酬月額をシェアする、いわゆる「3号分割」というのがありますが、標準報酬を分ける被保険者を特定被保険者と呼んでいます。
で、標準報酬の改定や決定を行なったときは、厚生労働大臣は特定被保険者と被扶養配偶者に通知を行います。
まぁ、こんな超プライベートなことを事業主に通知するわけにはいきませんよね。苦笑
さて、次は原簿そのものを論点にした問題を見てみましょう。
下の過去問は、第2号厚生年金被保険者について問われています。
第2号厚生年金被保険者だったものは厚生労働大臣に原簿の訂正を請求できない?
(平成30年問6A)
第2号厚生年金被保険者であった者は、その第2号厚生年金被保険者期間について厚生労働大臣に対して厚生年金保険原簿の訂正の請求をすることができない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
厚生年金保険原簿は、実施機関が記録をするのですが、第2号厚生年金保険者の実施機関は国家公務員共済組合、国家公務員共済組合連合会ですから、厚生労働大臣に原簿の訂正請求をするのはおかしいですね。
また、規定では、第1号厚生年金被保険者が、第1号厚生年金被保険者の資格の得喪の年月日や標準報酬などを記録した「特定厚生年金保険原簿記録」についての訂正の請求をするのを認めていますが、
第2号厚生年金被保険者や、第3号、第4号の厚生年金被保険者については、原簿の訂正請求の規定は適用しない、と定められています。
なので、問題文は誤りということになるのですね。
では厚生年金保険原簿の訂正請求ができるのは本当に第1号厚生年金被保険者だけなのでしょうか。
次の過去問で確認しましょう。
第1号被保険者以外で厚生年金保険原簿の訂正を請求できる人
(平成30年問6B)
第1号厚生年金被保険者であった老齢厚生年金の受給権者が死亡した場合、その者の死亡により遺族厚生年金を受給することができる遺族はその死亡した者の厚生年金保険原簿の訂正の請求をすることができるが、その者の死亡により未支給の保険給付の支給を請求することができる者はその死亡した者の厚生年金保険原簿の訂正の請求をすることができない。
解説
解答:誤
問題文の場合、「遺族厚生年金を受給することができる遺族」や、「未支給の保険給付の支給を請求することができる者」も、
厚生年金保険原簿に記録された特定厚生年金保険原簿記録が「事実でない」、「記録されていない」と思料する時は、厚生労働大臣に訂正請求をすることができます。
「厚生年金保険原簿に記録された特定厚生年金保険原簿記録」というのは変な表現ですが、
たとえば公務員やサラリーマンをやったことがあるようであれば、
原簿にいろいろ記録されている中から第1号厚生年金保険被保険者分の記録である「特定厚生年金保険原簿記録」についての訂正請求をすると考えればイメージしやすいでしょうか。
では、最後に厚生労働大臣が原簿の訂正について意見を聞く相手が誰なのかを確認しておきましょう。
さて厚生労働大臣はどこに意見を求めるのでしょうか。
原簿の訂正に関する方針を定めようとするときは
(平成30年問6C)
厚生労働大臣は、訂正請求に係る厚生年金保険原簿の訂正に関する方針を定めなければならず、この方針を定めようとするときは、あらかじめ、社会保障審議会に諮問しなければならない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
厚生労働大臣は、訂正請求かかる厚生年金保険原簿の訂正に関する方針を決める必要があるのですが、その時はあらかじめ専門家の意見を聴いて決めるよう定められています。
それが社会保障審議会です。
諮問というのは、意見を求めるという意味です。
ちなみに、訂正に関する方針を変更しようとするときも同様です。
今回のポイント
- 適用事業所以外の事業所に使用される70歳未満の者を厚生年金保険の被保険者とする認可を行ったとき、事業主に通知されます。
- 3号分割で、標準報酬の改定や決定を行なったときは、厚生労働大臣は特定被保険者と被扶養配偶者に通知を行います。
- 第1号厚生年金被保険者が、「特定厚生年金保険原簿記録」についての訂正の請求を行うことができますが、第2号、第3号、第4号厚生年金保険被保険者が、厚生年金保険原簿の訂正請求をすることはできません。
- 「遺族厚生年金を受給することができる遺族」や、「未支給の保険給付の支給を請求することができる者」も、厚生年金保険原簿に記録された特定厚生年金保険原簿記録が「事実でない」、「記録されていない」と思料する時は、厚生労働大臣に訂正請求をすることができます。
- 厚生労働大臣は、訂正請求かかる厚生年金保険原簿の訂正に関する方針を決める必要があるのですが、その時はあらかじめ社会保障審議会の意見を聴いて決めるよう定められています。
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