過去問

「社労士試験 労災保険法 法改正でややこしくなった?休業(補償)給付の論点とは」過去問・労災-50

休業(補償)給付は、法改正で複数事業労働者の概念が加わって、さらにややこしくなりましたね。

これまでも所定労働時間の一部分について労働した時の休業給付基礎日額の計算方法を押さえる必要があって、ただでさえ手こずるところだったのですが、、、苦笑

ただ、法改正したての論点については、社労士試験でもそれほどひねくれた問題は出されないことが多いので、必要以上に身構える必要はないと思います。

なので、これまで通り一つ一つ丁寧に押さえていくようにしましょう。

最初の問題は、「併給」の論点になっています。

休業(補償)給付が他の給付と一緒に受給できるのか、という問題ですね。

 

休業補償給付は他の給付と併給できる?

(平成24年問3A)

療養補償給付は、休業補償給付と併給される場合がある。

 

解説

解答:正

問題文のとおりで、休業補償給付は療養補償給付と併給できる場合があります。

休業補償給付は、業務上の負傷や疾病による療養のために労働することができず、賃金を受けない日に支給されるものです。

ということは、その間、ケガや病気を治すために治療をしなくてはいけませんよね。

療養補償給付は、治療に必要な診察や薬剤などを現物給付する給付ですから、休業補償給付と併給できる方がいいですよね。

なので、休業補償給付と療養補償給付は併給できるんですね。

では、休業補償給付はどの時点から支給されるのでしょうか。

ケガや病気で仕事ができなくなったらその日から給付されるのでしょうか。

 

休業補償給付はいつから受け取れる?

(平成30年問5A)

休業補償給付は、業務上の傷病による療養のため労働できないために賃金を受けない日の4日目から支給されるが、休業の初日から第3日目までの期間は、事業主が労働基準法第76条に基づく休業補償を行わなければならない。

解説

解答:正

問題文のとおりです。

休業初日からの3日間については、待期期間となっているので休業補償給付が支給されるのは4日目からということになります。

その間、労働者には補償がないのです。

そこで、休業補償給付は、業務災害(仕事に関連した災害)の時に給付されるものですから、休業開始から3日間の待期期間については、事業主が休業補償をしてくださいね、ということになっているのです。

ここで一つ注意したいことがあります。

上記の問題は休業「補償」給付になっていましたね。

ということは、繰り返しになりますが、労働者の方は業務災害にあったということです。

労災には、業務災害以外に「通勤災害」がありました。

通勤災害の時に適用される「休業給付」の場合、事業主の休業補償はどうなっているのでしょうか。

次の過去問で確認してみましょう。

 

休業給付、、、の場合は??

(平成24年問2E)

休業給付が支給されない休業の初日から第3日目までの待期期間について、事業主は労働基準法に基づく休業補償の義務を負わない。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

休業給付の対象になっているということは、その労働者の方は通勤災害に遭われたということになります。

通勤災害の場合は、休業給付待期期間である3日間について、事業主は休業補償をする必要はありません

なぜかというと、事業場内や業務上のことであれば事業主の支配権が及びますが、通勤にまで事業主が関与しているわけではありません。

なので、事業主が関与できない部分についてまで休業補償をさせるわけにはいきませんよね。

さて次は休業補償給付の計算方法について見ていくことにしましょう。

労災保険法については、「複数事業労働者」について法改正が行われていますので、合わせて見ていくようにしましょう。

 

休業補償給付の計算方法(複数事業労働者)

(平成30年問5E)

労働者が業務上の傷病による療養のため所定労働時間のうちその一部分についてのみ労働する日若しくは賃金が支払われる休暇(以下本問において「部分算定日」という。)又は複数事業労働者の部分算定日に係る休業補償給付の額は、療養開始後1年6か月未満の場合には、休業給付基礎日額から部分算定日に対して支払われる賃金の額を控除して得た額の100分の60に相当する額とする。(問題文を一部補正しています)

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

これまでの休業補償給付の額は、休業給付基礎日額の60%ということでしたが、

ダブルワークなどで2以上の事業所に使用される場合は、それぞれの事業の適用労働者になりますので、

休業給付基礎日額も合算されることとなります。

ということは、一方の会社で休業してもう一方の会社では有給休暇を使って賃金をもらうということもあり得るわけです。

その際、有給休暇などで賃金をもらう日や、一部労働した日の用語として「部分算定日」という言葉が登場することになりました。

なので、休業補償給付の計算方法は、

(休業給付基礎日額 - 部分算定日に対して支払われる賃金の額)× 60/100

という計算式になるんですね。

また、問題文に「療養開始後1年6か月未満」という文言が出てきますが、療養を開始して1年6か月未満であれば最高限度額や最低限度額の問題はない、ということです。

1年6か月を経過すると、

「休業給付基礎日額 - 部分算定日に対して支払われる賃金の額」と「最高限度額」

のどちらか低い方の額が適用されることになります。

では最後に、休業補償給付の計算方法について、別の視点から見ていきましょう。

次の問題には複数事業労働者の論点ではなく、所定労働時間の一部分について労働したときの休業補償給付の計算方法になりますが、考え方は同じです。

 

休業補償給付の計算方法(一部労働)

(令和2年問6A)

労働者が業務上の負傷又は疾病による療養のため所定労働時間のうちその一部分のみについて労働し、当該労働に対して支払われる賃金の額が給付基礎日額の20%に相当する場合、休業補償給付と休業特別支給金とを合わせると給付基礎日額の100%となる。

 

解説

解答:誤

問題文の場合でも休業補償給付と休業特別支給金を合わせても、給付基礎日額の100%になるわけではありません。

所定労働時間の一部分を労働した時の休業補償給付と、休業特別支援金の額を計算する方法は、

  • 休業補償給付(一部労働) → (給付基礎日額-賃金の額)× 60/100
  • 休業特別支給金(一部労働) →(給付基礎日額-賃金の額)× 20/100

となります。

なので、問題文のように「休業補償給付(60%)」+「休業特別支援金(20%)」+「賃金額(給付基礎日額の20%)」=100%となるわけではないのです。

 

今回のポイント

  • 休業補償給付は療養補償給付と併給できる場合があります。
  • 休業初日からの3日間については、待期期間となっているので休業補償給付が支給されるのは4日目からということになりますので、その間、労働者には補償がない3日の待期期間の間は、事業主が休業補償を行う必要があります。
  • しかし、休業給付待期期間である3日間については、事業主は休業補償をする必要はありません
  • 休業補償給付の計算方法は、(休業給付基礎日額 - 部分算定日に対して支払われる賃金の額)× 60/100となります。

 

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