今回は、労働に関する一般常識から、個別労働関係紛争解決促進法(以下、個紛法と呼びます)と最低賃金法を取り上げたいと思います。
まず個紛法は、労働者と使用者との間で発生したトラブルについて、「あっせん」などの制度を設けることで、トラブルの早期解決を図るのが目的です。
新型コロナウイルスの影響で景気が悪化したことにより、解雇や賃金引き下げなどのトラブルが懸念されますから、社労士試験的には時勢を反映したものと言えるかもしれませんね。
また、最低賃金法についても、毎年最低賃金は上昇傾向にありますのでチェックしておく価値はありそうです。
個紛法や最低賃金法については、頻出の法律ではありませんが、これを機に見ていくことにしましょう。
まずは、個紛法から「労働関係」について取り扱った問題を確認していきますね。
個紛法における労働関係って?
(令和2年問3D)
個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第1条の「労働関係」とは、労働契約に基づく労働者と事業主の関係をいい、事実上の使用従属関係から生じる労働者と事業主の関係は含まれない。
解説
解答:誤り
個紛法でいうところの「労働関係」は、「労働契約に基づく労働者と事業主の関係」と、「事実上の使用従属関係から生じる労働者と事業主の関係」も含まれます。
ちなみに、労働基準法第1条に出てくる「労働関係の当事者」は、使用者と労働者との間にある「労務の提供・賃金の支払」が軸になった関係を指しますので、
個紛法においても、事実上の使用従属関係があるのであれば、そこには労働関係があると言えますね。
念のために個紛法の目的条文である第1条を記載しておきますね。
『この法律は、労働条件その他労働関係に関する事項についての
個々の労働者と事業主との間の紛争(労働者の募集及び採用に関する事項についての個々の求職者と事業主との間の紛争を含む。以下「個別労働関係紛争」という。)について、
あっせんの制度を設けること等により、その実情に即した迅速かつ適正な解決を図ることを目的とする。』
で、この個別労働関係紛争は具対的には、
「解雇や雇止め、労働条件の不利益変更(例:賃金を下げられた)などの労働条件に関する紛争」や、「いじめ・嫌がらせなどの職場環境に関する紛争」などがあります。
これらの個別労働関係紛争を解決するために、都道府県労働局長が行う「助言・指導」や「あっせん」の制度があるわけですが、
「採用・募集に関する紛争については、「助言・指導」が対象になっていて、「あっせん」では取り扱うことができません。
さて、この「あっせん」は誰が行うのか、というのが次の問題の論点になっていますので見てみましょう。
個紛法でのあっせんは誰がやるの?
(平成29年問2イ)
個別労働関係紛争解決促進法第5条第1項は、都道府県労働局長は、同項に掲げる個別労働関係紛争について、当事者の双方又は一方からあっせんの申請があった場合において、その紛争の解決のために必要があると認めるときは、紛争調整委員会にあっせんを行わせるものとすると定めている。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
「あっせん」は、紛争調整委員会が担当しています。
紛争調整委員会とは、弁護士や大学教授、社会保険労務士などの労働問題の専門家である学識経験者により組織されていて、
都道府県労働局ごとに設置されています。
この紛争調整委員会の委員の中からあっせん委員が選ばれて、あっせんを実施することになっています。
ちなみに、「助言・指導」や「あっせん」は無料で利用することができます。
さて、次は最低賃金法を見ていくことにしましょう。
最初の問題は、最低賃金額は何がベースになっているのかが論点になっています。
時給なんでしょうか、それとも日給でしょうか?
最低賃金は時給?日給?
(平成29年問2ア)
最低賃金法第3条は、最低賃金額は、時間又は日によって定めるものとしている。
解説
解答:誤り
最低賃金額は、時間又は日ではなく、「時間」によって定められる、と規定されています。
最低賃金には、都道府県ごとに定められた地域別最低賃金と、産業別に定められた特定最低賃金がありますが、どちらも時給ベースになっていて、
特定最低賃金は地域別最低賃金よりも高く設定されている必要があります。
ということで、最低賃金は時給ベースになっているわけですが、
臨時に支払われる結婚手当などの賃金や、賞与などの1月を超える期間ごとに支払われる賃金は、最低賃金を計算する上では対象外になっています。
ご参考用に、令和2年度の地域別最低賃金の表のリンクを貼っておきますので、よろしければご覧になってくださいね。
参考記事:地域別最低賃金の全国一覧
で、一つ気になることがあるのですが、派遣労働者の方の場合、雇用契約は派遣元と行いますが、実際に働く場所は派遣先になります。
もし、派遣元と派遣先の所在地が違う都道府県の場合、どちらの地域別最低賃金が採用されるのでしょうか。
次の過去問で確認しましょう。
派遣労働者の賃金はどこの最低賃金が適用される?
(令和元年問4A)
労働者派遣法第44条第1項に規定する「派遣中の労働者」に対しては、賃金を支払うのは派遣元であるが、当該労働者の地域別最低賃金については、派遣先の事業の事業場の所在地を含む地域について決定された地域別最低賃金において定める最低賃金額が適用される。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
最低賃金法では、「派遣先」の事業場の所在地がある都道府県の地域別最低賃金が適用されることになります。
実際に生活するのは、派遣先の事業場に近いことが多いでしょうから、最低賃金も実情に合わせたものになっているんでしょうね。
では最後に、最低賃金法に違反した場合の罰則について確認しましょう。
最低賃金法に違反した場合、罰則はある?
(平成26年問2D)
最低賃金法に定める最低賃金には、都道府県ごとに定められる地域別最低賃金と、特定の産業について定められる特定最低賃金があり、これらに反する労働契約の部分は無効となり、最低賃金と同様の定めをしたものとみなされるが、同法違反には罰則は定められていない。
解説
解答:誤り
地域別最低賃金や特定最低賃金に「反する」ではなく、「達しない」労働契約の賃金は無効になり、
無効になった賃金については最低賃金と同様の定めをしたものとみなされ、50万円以下の罰金に処せられますので罰則はあります。
他にも、最低賃金法に違反しているのではないかと労基署などに申告した労働者に対して、解雇などの不利益な取り扱いをした場合は、
6月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられる、というものがあります。
今回のポイント
- 個紛法でいうところの「労働関係」は、「労働契約に基づく労働者と事業主の関係」と、「事実上の使用従属関係から生じる労働者と事業主の関係」も含まれます。
- 「あっせん」は、紛争調整委員会が担当していて、都道府県労働局ごとに設置されています。
- 最低賃金額は、「時給」がベースになっています。
- 最低賃金法では、「派遣先」の事業場の所在地がある都道府県の地域別最低賃金が適用されることになります。
- 地域別最低賃金や特定最低賃金に「達しない」労働契約の賃金は無効になり、無効になった賃金については最低賃金と同様の定めをしたものとみなされ、50万円以下の罰金に処せられます。
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