今回は、適用事業所についての過去問を集めてみました。
適用事業所には、強制適用事業所と任意適用事業所があり、それぞれに要件がありますので社労士試験ではいろいろな視点で出題されています。
あと、船舶も適用事業所になりますから、そちらの知識も必要になりますね。
まずは強制適用事業所にはどんな業種がなるのか、逆に適用除外になる業種はどうなのか確認していくことにしましょう。
個人経営であれば任意適用事業所の認可を受ける?
(平成28年問1イ)
常時5人の従業員を使用する、個人経営の貨物積み卸し業の事業主は、その事業所を適用事業所とするためには任意適用事業所の認可を受けなければならない。(問題文を再構成しています)
解説
解答:誤り
貨物積み卸し業は適用業種になるので、任意適用事業所とはならず、常時5人以上の従業員を使用する場合には強制適用事業所になります。
強制適用事業所に該当するのは、法定16業種の事業所であること、そして常時5人以上の従業員を使用している時です。
また、国や地方公共団体、法人は強制適用事業所となります。
ですが、法人ならともかく、法定16業種を覚えるのは大変ですので、強制適用事業所に該当しない業種を覚えた方が早いですよね。
従業員が常時5人以上いなくても強制適用事業所にならない業種は、
- 第一次産業(農林、水産、畜産業)
- 接客娯楽業(旅館、料理屋、飲食店、映画館、理容業など)
- 法務業(弁護士や税理士、社労士などの士業)
- 宗教業(神社や寺院、教会など)
となっています。
ただ、士業については、2022年10月より個人事業でも常時5人以上いれば強制適用事業所になるようですね。
では、次の問題文に書かれている業種は法定16業種でしょうか、それとも適用除外の業種でしょうか。
見ていくことにしましょう。
個人経営の旅館は任意適用事業?
(平成28年問1ア)
常時5人の従業員を使用する、個人経営の旅館の事業主は、その事業所を適用事業所とするためには任意適用事業所の認可を受けなければならない。(問題文を再構成しています)
解説
解答:正
問題文のとおりです。
旅館業は、先ほどの接客娯楽業にあたりますので、個人経営であれば、常時5人以上いても強制適用事業所になりません。
なので、適用事業所にするためには、任意適用事業所の認可を受ける必要があります。
では実際に任意適用事業所の認可を受けるためにはどのような要件があるのでしょうか。
事業主の鶴の一声でできるものなのでしょうか。
任意適用事業所の認可を受けるためには
(平成25年問5A)
厚生年金保険法第6条第3項に定める任意適用事業所となる認可を受けようとするときは、当該事業所の事業主は、当該事業所に使用される者(同法第12条の規定により適用除外となる者を除く。)の3分の2以上の同意を得て、厚生労働大臣に申請しなければならない。
解説
解答:誤り
任意適用事業所の認可を受けようとする場合、事業主は、事業所に使用される者の、「3分の2以上」ではなく、「2分の1以上」の同意を得ないと申請することができません。
ちなみに、問題文にある「同法第12条の規定により適用除外となる者」というのは、
「日々雇い入れられる者」や「二月以内の期間を定めて使用される者」、「1週間や1ヶ月の所定労働時間の4分の3未満である短時間労働者」など、被保険者の適用除外になる人を指します。
(他に被保険者の適用除外になるのはどんなケースがあったか確認しておいてくださいね)
このような被保険者の適用除外になる人以外の被保険者の2分の1以上の同意が必要なわけですね。
さて、次は2つ以上の事業所を1つにまとめるための要件について見てみましょう。
社会保険の手続きなどを一つ一つの事業所でやっていては非効率ですし、業務をまとめらるのであればまとめたいところですよね。
で、適用事業所を一つにまとめるための要件を次の過去問で見てみましょう。
2以上の事業所を1つにするための要件
(平成25年問5C)
一定の条件を満たす2以上の異なる事業主(船舶所有者を除く。)は、厚生労働大臣に届け出れば、その2以上の事業主の事業所を1つの適用事業所とすることができる。
解説
解答:誤り
問題文のように、事業主が異なる事業所を一つにまとめることはできません。
事業所を一つにまとめるには、それぞれの適用事業所の事業主が同じでなければなりません。
で、その事業主は厚生労働大臣の承認を受けることができれば、適用事業所を一つにまとめることができます。
では、船舶の場合はどうでしょう。
2以上の船舶を所有している所有者も適用事業所を一つにまとめるのに厚生労働大臣の承認が必要なのでしょうか。
2以上の船舶を1つの適用事業所にするためには?
(平成30年問1A)
2以上の船舶の船舶所有者が同一である場合には、当該2以上の船舶を1つの適用事業所とすることができる。このためには厚生労働大臣の承認を得なければならない。
解説
解答:誤り
船舶の場合は、「法律上当然」に1つの適用事業所になるので、厚生労働大臣の承認は必要ありません。
船舶は通常の事業所と違ってあっちこっちに移動しているわけですから、「当然」に1つの適用事業所にしてもらわないと、不必要な手続きになりますよね。
今回のポイント
- 強制適用事業所に該当するのは、法定16業種の事業所であること、そして常時5人以上の従業員を使用している時で、国や地方公共団体、法人は強制適用事業所となります。
- 従業員が常時5人以上いなくても強制適用事業所にならない業種は、
- 第一次産業(農林、水産、畜産業)
- 接客娯楽業(旅館、料理屋、飲食店、映画館、理容業など)
- 法務業(弁護士や税理士、社労士などの士業)
- 宗教業(神社や寺院、教会など)
となっています。
- 任意適用事業所の認可を受けようとする場合、事業主は、事業所に使用される者の「2分の1以上」の同意を得ないと申請する必要があります。
- 事業所を一つにまとめるには、それぞれの適用事業所の事業主が同じであることが必要で、厚生労働大臣の承認がいります。
- 船舶の場合は、「法律上当然」に1つの適用事業所になります。
各科目の勉強法の記事をまとめました
労働基準法から一般常識までの全科目の勉強法の記事をまとめましたのでぜひご覧ください
リンク「社労士試験 独学合格法 各科目の勉強方法の記事をまとめました!」
科目ごとにまとめて記事を見ることができます!
スマホでご覧になっていただいている場合は、一番下までスクロールすると、科目名が並んでいますのでご覧になりたい科目をタップいただくと、その科目だけの記事を見ることができます。
もしくは、一番右上の三本線(メニューになっています)をタップしていただいて科目名を表示させる方法もあります。
ぜひご活用ください!
この記事へのコメントはありません。