保険医療機関や保険薬局については、その「指定」にからんだ問題がよく出題されています。
指定へのプロセスや更新などにちなんだ数字などもよく問われています。
一度に理解しようとせず、チャートなどを描いてみると分かりやすいかもしれませんね。
最初の問題は、「こういう場合は指定をしませんよ」ということが問われています。
正確には、「〜のときは指定をしないことができる」と規定していますけど。
では早速見ていくことにしましょう。
保険医療機関や保険薬局が指定を受けられない時とは
(令和元年問7ア)
厚生労働大臣は、保険医療機関又は保険薬局の指定の申請があった場合において、当該申請に係る病院若しくは診療所又は薬局の開設者又は管理者が、健康保険法その他国民の保健医療に関する法律で、政令で定めるものの規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者であるときは、その指定をしないことができる。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
今回の論点では「罰金」がキーワードになっていましたが、指定をしない要件としては以下のものが規定されています。
(長いので赤字のところだけチェックしてもOKです)
- 保険医療機関又は保険薬局の指定を取り消され、その取消しの日から5年を経過しないものであるとき。
- 保険給付に関し診療又は調剤の内容の適切さを欠くおそれがあるとして重ねて指導を受けたものであるとき。
- 開設者又は管理者が、健康保険法その他国民の保健医療に関する法律で政令で定めるものの規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者であるとき。
- 開設者又は管理者が、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者であるとき。
- 開設者又は管理者が、社会保険各法の定めるところにより納付義務を負う社会保険料について、当該申請をした日の前日までに、滞納処分を受け、かつ、当該処分を受けた日から正当な理由なく3月以上の期間にわたり、当該処分を受けた日以降に納期限の到来した社会保険料のすべてを引き続き滞納している者であるとき。
- 前各号のほか、当該申請に係る病院若しくは診療所又は薬局が、保険医療機関又は保険薬局として著しく不適当と認められるものであるとき。
以上のように色々と規定されていますが、最初に押さえるのは「5年を経過」や「3月以上」と言った数字ですね。
その次に、「指定を取り消されてから5年を経過しないもの」、「社会保険料を3月以上滞納」というように少しずつ押さえる範囲を広げていくと良いでしょう。
では、めでたく指定を受けた時に、保険医療機関として指定を受けた病院は、診療する患者さんを選ぶことができるのでしょうか。
次の過去問で確認しましょう。
保険医療機関として指定を受けるということは
(平成30年問2A)
保険医療機関として指定を受けた病院であっても、健康保険組合が開設した病院は、診療の対象者をその組合員である被保険者及び被扶養者のみに限定することができる。
解説
解答:誤
問題文の場合は診療の対象者を限定することができません。
保険医療機関としての指定を受けず、健康保険組合の中だけで運営する分には自由ですが、指定を受けた以上、健康保険組合の被保険者以外のすべての被保険者などの診療を行わなければならない、としています。
これは通達にあるのですが、それによると
『問13)保険医療機関としての指定を受けた事業主病院が、保険者を二、三に限定し、この被保険者及び被扶養者のみを診療し、他の保険者に係る被保険者及び被扶養者の診療は行わないとすることは差し支えないか。
(答)保険医療機関は、すべての被保険者及び被扶養者の診療を行うものであり、一部の被保険者及び被扶養者に限定することはできない。』
となっています。
こちらの通達については、下にリンクを貼っておきますのでご自由にご参考になさってくださいね。
問題文の論点は、問13の部分です。
参考記事:健康保険法の一部を改正する法律の疑義について(抄) 昭和三二年九月二日 保険発第一二三号
さて、この「指定」には有効期間みたいなものはあるのでしょうか。
車の運転免許証にも有効期間がありますから、一度指定を取ったら生涯オッケーということはないと思いますが、どうなっているのか見てみましょう。
指定の効力の有効期間は、、、
(平成22年問7B)
保険医療機関または保険薬局の指定は、指定の日から起算して3年を経過したときは、指定の効力を失うが、保険医療機関(病院または病床のある診療所を除く。)または保険薬局であって厚生労働省令で定めるものについては、その指定の効力を失う日前6か月から同日前3か月までの間に、別段の申出がないときは、更新の申請があったものとみなされる。
解説
解答:誤
保険医療機関または保険薬局の指定の効力は、「3年」ではなく「6年」となっています。
また、この問題にはもう一つ論点あります。
指定の効力を失う日前6か月から同日前3か月までの間に、別段の申出がないときは更新の申請があったものとみなされる、という規定もあるのですが、
これは、病院や病床のある診療所は除かれます。
この論点について問われている過去問がありますので、そちらも確認しておきましょう。
診療所に◯◯があると指定は?
(平成28年問4D)
保険医個人が開設する診療所は、病床の有無に関わらず、保険医療機関の指定を受けた日から、その指定の効力を失う日前6か月から同日前3か月までの間に、別段の申出がないときは、保険医療機関の指定の申出があったものとみなされる。
解説
解答:誤
「病床の有無に関わらず」の部分が誤りです。
保険医療機関や保険薬局の指定の自動更新は、病院や病床のある診療所は対象外です。
つまり、クリニックのような個人で経営している診療所などが自動更新の対象になっているのですね。
今度は逆に指定をやめたい時にはどうすればいいのでしょうか。
こちらも日数の規定があるのか見てみましょう。
指定を辞退する時の期限
(平成29年問7B)
保険医療機関又は保険薬局は、14日以上の予告期間を設けて、その指定を辞退することができ、保険医又は保険薬剤師は、14日以上の予告期間を設けて、その登録の抹消を求めることができる。
解説
解答:誤
指定の辞退や登録の抹消は、「14日」以上ではなく、「1月」以上の予告期間を設ける必要があります。
では最後に保険医療機関の書類の保存期間についてチェックしておきましょう。
事業主の場合とは期間の長さが違いますので注意しましょう。
保険医療機関の書類の保存期間は?
(平成22年問5E)
保険医療機関は、療養の給付の担当に関する帳簿及び書類その他の記録をその完結の日から3年間保存しなければならない。ただし、患者の診療録にあっては、その完結の日から5年間保存しなければならない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
療養の給付の担当に関する帳簿などの書類は3年間で、患者の診療録については5年になっています。
ちなみに、事業主の書類の保存期間は2年ですので区別しておきましょう。
今回のポイント
- 厚生労働大臣は、「指定を取り消されてから5年を経過しないもの」、「社会保険料を3月以上滞納したもの」などについては保険医療機関又は保険薬局の指定をしないことができます。
- 保険医療機関は、すべての被保険者及び被扶養者の診療を行うもので、一部の被保険者及び被扶養者に限定することはできません。
- 保険医療機関または保険薬局の指定の効力は、「6年」となっています。
- 指定の効力を失う日前6か月から同日前3か月までの間に、別段の申出がないときは更新の申請があったものとみなされる、という規定がありますが、病院や病床のある診療所は対象外です。
- 指定の辞退や登録の抹消は、「1月」以上の予告期間を設ける必要があります。
- 書類の保存期間について、療養の給付の担当に関する帳簿などの書類は3年間で、患者の診療録については5年になっており、事業主の書類の保存期間は2年です。
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