過去問

「労基法 過去問で読み解く労働条件や労働者の原則」過去問・労基-38

今回は、労基法の根っことも言える「労働条件」や「労働者」についての原則を論点にした過去問を集めてみました。

条文ではさらっと書いてあるのですが、中身は奥が深いですね。

通達判例には条文の趣旨が説明してあるので、そういう意味では通達や判例を少し読んでおくのはオススメです。

ですが、くれぐれも深入りしませんように。。。

最初の問題は労働条件の原則についてを論点にしています。

労働条件というのはどういうことなのか確認しましょう。

 

労働条件の原則とは

(平成27年問1A)

労働基準法は、労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならないとしている。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

ポイントは、労働者が「人たるに値する生活」を営むための必要を労働条件は満たす必要がある、ということです。

戦前の労働基準法ができる前の労働条件は熾烈で、安い賃金で1日の労働時間が18時間にも及ぶ職場もあったそうです。

そんな状態で「人たるに値する生活」を営めるわけもありません。

今でも長時間労働に苦しんでいる人がいますから、労働基準法の理念を広めていきたいですね。

また、問題文は労働基準法第1条1項の文章ですが、それに続く2項では、

「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。」

と書かれています。

つまり、労働基準法で定められている規定は最低基準なわけで、それに甘んじることなく労使が力を合わせて労働条件を向上していくようにしないといけないわけですね。

すみません、脱線してしまいましたが大事な考え方だと思いますのでご容赦ください。

さて、労基法1条にある「人たるに値する生活」について掘り下げた過去問を見てみましょう。

ここでは、「人たるに値する生活」には「労働者の家族も含む」とあるのですが、家族の範囲はどこまでを指すのかについて問われています。

 

どこまでが家族の範囲?

(平成30年問4ア)

労働基準法第1条にいう「人たるに値する生活」には、労働者の標準家族の生活をも含めて考えることとされているが、この「標準家族」の範囲は、社会の一般通念にかかわらず、「配偶者、子、父母、孫及び祖父母のうち、当該労働者によって生計を維持しているもの」とされている。

 

解説

解答:誤

標準家族」の範囲は、「社会の一般通念にかかわらず」ではなく、「その時その社会の一般通念によって理解されるべきもの」としています。

つまり、家族を生計維持とか◯親等などの枠に入れて判断するのではなく、時代に合った考え方をしようということでしょうね。

たとえば、一昔前までは自分の親と同居するのが当たり前でしたが、いまは核家族の方が多いですよね。

ひょっとすると、50年後にはオンライン家族が標準になっているのかも??

それはさておき、問題文にも出ていますが「労働者が人たるに値する生活を営むためには、その標準家族の生活をも含めて考える」必要があるんですね。

下に通達のリンクを貼っておきますのでご自由にご参考になさってくださいね。

ただ、データのサイズが重いのでWi-Fi環境下でご覧になると良いかもしれません。

 

参考記事:労働基準法関係解釈例規について

 

次の問題は「労働条件」についての論点です。

一口に労働条件と言っても、お給料から職場環境まで範囲が広いですが、労基法での労働条件の範囲はどこまでなのかを確認しましょう。

 

労働条件に含まれるもの

(平成25年問5A)

労働基準法第1条にいう「労働条件」とは、賃金、労働時間、解雇、災害補償等の基本的な労働条件を指し、安全衛生、寄宿舎に関する条件は含まない。

 

解説

解答:誤

「安全衛生、寄宿舎に関する条件」も労働条件に含まれます。

上記の通達(4ページ)には、「その他の労働条件」には解雇、災害補償、安全衛生、寄宿舎等に関する条件も含む趣旨である、と書かれています。

これは法3条の均等待遇の箇所ですが、労働条件の範囲について記載されています。

つまり、労働者の仕事に関わることは労働条件になるということなんでしょうね。

さて次は「労働者」についてスポットを当ててみます。

そもそも労働者とはどういう人のことを指すのでしょうか。

働いている人はすべて労働者になるのでしょうか??

 

労働者の定義とは?

(平成23年問1D)

労働基準法に定める「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいい、この定義に該当する場合には、いかなる形態の家事使用人にも労働基準法が適用される。

 

解説

解答:誤

「いかなる形態の家事使用人」が誤りです。

労基法では、「同居の親族」と「家事使用人」は労働者とはなりませんが、家事使用人については、実態に応じて判断されるということになっています。

上記の通達の24ページにありますが、一般的に、家事代行業者などに雇われてその会社の指示で家事をして働く人は「家事使用人」にならず、労働者とみなされます。

ではこの「労働者」についての事例問題に触れておきましょう。

事例問題については、ひととおり読んでみて、解くのに時間がかかりそうであれば躊躇なく後回しして時間を浪費しないようにしましょうね。

 

労働者に関する事例問題 その1

(平成29年問5オ)

医科大学附属病院に勤務する研修医が、医師の資質の向上を図ることを目的とする臨床研修のプログラムに従い、臨床研修指導医の指導の下に医療行為等に従事することは、教育的な側面を強く有するものであるため、研修医は労働基準法第9条所定の労働者に当たることはないとするのが、最高裁判所の判例の趣旨である。

 

解説

解答:正

研修医については、法9条所定の労働者に「当たることはない」のではなく、「当たることがあります」。

これは関西医科大学研修医事件という判例からの出題なのですが、

研修医とはいえ、お客さんである患者さんに対して医療行為をするということは、病院の経営者のために仕事をするということになりますから、

研修という名で教育的な側面が強かったとしても、経営者や上司の指揮命令下で医療行為をするのであれば、労基法9条の労働者にあたります

最後にもう一問、労働者に関する事例問題をチェックしましょう。

 

労働者に関する事例問題 その2

(令和元年問3エ)

いわゆる芸能タレントは、「当人の提供する歌唱、演技等が基本的に他人によって代替できず、芸術性、人気等当人の個性が重要な要素となっている」「当人に対する報酬は、稼働時間に応じて定められるものではない」「リハーサル、出演時間等スケジュールの関係から時間が制約されることはあっても、プロダクション等との関係では時間的に拘束されることはない」「契約形態が雇用契約ではない」のいずれにも該当する場合には、労働基準法第9条の労働者には該当しない。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

これは通達(昭和63年7月30日基収355号)からの出題になるのですが、下記のいずれにも該当する場合には、法9条の労働者には該当しないとしています。

  1. 当人の提供する歌唱、演技等が基本的に他人によって代替できず、芸術性、人気等当人の個性が重要な要素となっている。
  2. 当人に対する報酬は、稼働時間に応じて定められるものではない
  3. リハーサル、出演時間等スケジュールの関係から時間が制約されることはあっても、プロダクション等との関係では時間的に拘束されることはない
  4.  契約形態が雇用契約ではない

なるほど、「当人の個性が重要な要素」と言われると「労働者」とはかけ離れている気がしますね。

乱暴な言い方になるかもしれませんが、労働者は月給や時給など「時間」を売ってるとも言えますが、芸能タレントは「芸」を売っているんですもんね。

 

今回のポイント

  • 労働基準法は、労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければなりません。
  • 標準家族」の範囲は、「その時その社会の一般通念によって理解されるべきもの」としています。
  • 「労働条件」とは、賃金、労働時間、解雇、災害補償だけでなく、解雇、災害補償、安全衛生、寄宿舎等に関する条件も含みます。
  • 労基法では、「同居の親族」と「家事使用人」は労働者とはなりませんが、家事使用人については、実態に応じて判断されるということになっています。

 

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