今回の労働一般では、職業安定法、労働者派遣法、労働施策総合推進法を取り上げたいと思います。
どれも出題頻度はそれほど高くありませんが、この記事でサラッとチェックしていただけましたら幸いです。
また、このような雲をつかむような一般常識に出てくる法律を勉強するときに、まず手をつけるべきは過去問かと思います。
テキストを読んでいてもどこが重要なのかが分かりにくいので、出題実績のある項目から見ていく方が合理的ですね。
それでは過去問に入っていきましょう。
まずは職業安定法から、公共職業安定所が中立の立場を維持するために規定されていることにはどんなことがあるでしょうか?
職業安定法:中立の立場の維持のために
(令和元年問4E)
公共職業安定所は、労働争議に対する中立の立場を維持するため、同盟罷業又は作業所閉鎖の行われている事業所に、求職者を紹介してはならない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
公共職業安定所は、労働者による同盟罷業(ストライキ)や使用者によって作業所が閉鎖されている事業所に対して、中立の立場を維持するために、求職者を紹介してはなりません。
こうした措置が取られるのは、労働争議が行われているところへ求職者を紹介することによって、どちらか一方に都合の良い労働者が送り込まれるのを防ぐため、と考えることもできますね。
ちなみに、上記の規定は、特定地方公共団体が無料の職業紹介事業を行う場合や、職業紹介事業者が職業紹介事業を行う場合などにも準用されます。
では、職業安定法における職業紹介について見てみましょう。
職業紹介というのは、、求人者と求職者との間における雇用関係の成立のあっせんすることです。
あっせんというのは求人者と求職者の間を取りもって世話をすることなのですが、
この「あっせん」という行為がスカウトも当てはまるのか、というのが次の問題の論点です。
東京エグゼクティブ・サーチ事件という最高裁判例からの過去問ですが見てみましょう。
職業安定法:あっせんの要件
(令和元年問4D)
職業安定法にいう職業紹介におけるあっせんには、「求人者と求職者との間に雇用関係を成立させるために両者を引き合わせる行為のみならず、求人者に紹介するために求職者を探索し、求人者に就職するよう求職者に勧奨するいわゆるスカウト行為(以下「スカウト行為」という。)も含まれるものと解するのが相当である。」とするのが、最高裁判所の判例である。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
職業紹介のあっせんは、求人者と求職者を引き合わせることだけを指すのではなく、
「この会社いいですよ」と求職者に勧めるいわゆるスカウト行為もあっせんに含まれるということです。
この裁判の何が争点になったのかというと、職業紹介事業をするには厚生労働大臣の許可が必要で、手数料(報酬)の額についても規定があります。
しかし、当時スカウトであれば職業安定法の規定は採用されないであろうということで、手数料の他にコンサル料金も報酬に含まれていました。
求人者は、手数料以外の報酬を支払う必要はないということで裁判になったわけです。
結局は、スカウト行為も職業紹介のあっせんになるということで手数料以外の報酬は無効となったのです。
さて、次は労働者派遣法を見ていきましょう。
派遣法では、派遣先における、同じ業務に派遣できる期間に制限が設けれられています。
たとえば、◯◯株式会社の△△支店の営業事務の仕事は一定の期間までしか同じ派遣労働者を派遣してはダメですよ、というものです。
では、その期間はどのように設定されているのか、次の問題を見てみましょう。
労働者派遣法:継続して派遣できるのは、、
(平成28年問2D)
労働者派遣法第35条の3は、「派遣元事業主は、派遣先の事業所その他派遣就業の場所における組織単位ごとの業務について、3年を超える期間継続して同一の派遣労働者に係る労働者派遣(第40条の2第1項各号のいずれかに該当するものを除く。)を行つてはならない」と定めている。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
派遣元は、派遣先の組織単位の業務について、同一の派遣労働者を3年を超えて派遣することはできません。
ちなみに、派遣先にも同様の規定があって、3年(派遣可能期間)を超える期間を継続して労働者派遣の役務の提供を受けることができません。
ただ、過半数代表の意見を聴いて、別の派遣労働者を迎え入れることで派遣可能期間を延長することもできます。
では、先ほどの、◯◯株式会社の△△支店の営業事務の仕事に直接雇用の労働者の募集をしよう、ということになった場合、
その仕事には派遣労働者の方がいるのですが、募集をする際にルールはあるのでしょうか。
労働者派遣法:就業場所に労働者の募集をするときは
(平成30年問4B)
派遣先は、当該派遣先の同一の事業所その他派遣就業の場所において派遣元事業主から1年以上継続して同一の派遣労働者を受け入れている場合に、当該事業所その他派遣就業の場所において労働に従事する通常の労働者の募集を行うときは、その者が従事すべき業務の内容、賃金、労働時間その他の当該募集に係る事項を当該派遣労働者に周知しなければならない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
派遣元から1年以上、同じ派遣労働者を受け入れているのであれば、通常の労働者の募集を行うときはその派遣労働者に募集について周知を行う必要があります。
通常の労働者というのは、いわゆる正社員のことですが、1年以上派遣として働いているのであれば正社員登用のチャンスをあげてくださいね、ということですね。
では最後に、労働施策総合推進法について見ておきましょう。
この法律は、過去10年をみてもほとんど出題されていないのですが、
もともと雇用対策法という名前だったのが、2020年の6月に改正されて「パワハラ防止法」と呼ばれ話題になった法律です。
パワハラを防止するための企業の措置に対する行政の指導は現在、大企業が対象になっていますが、中小企業も2021年4月から施行されます。
で、この労働施策総合推進法は、パワハラ以外にも募集や採用、再就職援助措置などいろいろな規定があります。
次の過去問では、年齢制限が論点になっているのですが、どのようなルールになっているのか確認しましょう。
労働施策総合推進法:年齢制限を禁止しているのは?
(平成26年問2A)
労働施策総合推進法は、労働者の募集、採用、昇進または職種の変更に当たって年齢制限をつけることを、原則として禁止している。(問題文を一部補正しています)
解説
解答:誤り
年齢制限をつけることを禁止されているのは、「募集・採用」が対象で、昇進や職種の変更は対象外です。
この年齢制限は、「◯歳以下を募集」というように、若い人を限定するのはダメですが、
「◯際以上を募集」と、若い人を排除するのもアウトです。
ただ、定年の定めをしていて、無期雇用で労働者を募集するときは、定年の年齢以上を募集の対象外にするのは大丈夫です。
今回のポイント
- 公共職業安定所は、労働者による同盟罷業(ストライキ)や使用者によって作業所が閉鎖されている事業所に対して、中立の立場を維持するために、求職者を紹介してはなりません。
- 職業紹介のあっせんは、求人者と求職者を引き合わせることだけを指すのではなく、いわゆるスカウト行為もあっせんに含まれます。
- 派遣元は、派遣先の組織単位の業務について、同一の派遣労働者を3年を超えて派遣することはできません。
- 派遣元から1年以上、同じ派遣労働者を受け入れているのであれば、通常の労働者の募集を行うときはその派遣労働者に募集について周知を行う必要があります。
- 年齢制限をつけることを禁止されているのは、「募集・採用」が対象です。
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