健康保険は、生活をしているうえでは身近な存在なのですが、こと社労士試験となると難しいイメージがありませんか?
実際の生活で見ることのできる健康保険は、健康保険法の中でもごく一部だからなのかもしれないですね。
たとえば、保険料率がどうやって決定されているのかなど目にすることはありませんし。苦笑
これは過去問演習とテキストの通読によって知識を身につける必要がありますね。
今回は保険料についての過去問を見ていきたいと思います。
最初の問題では、保険料率の決定方法について確認しましょう。
健康保険の保険料率の決定方法
(平成26年問4D)
全国健康保険協会(以下「協会」という。)が管掌する健康保険の被保険者に関する一般保険料率は、1,000分の30から1,000分の130までの範囲内において、支部被保険者を単位として協会が決定する。なお、支部被保険者とは、各支部の都道府県に所在する適用事業所に使用される被保険者及び当該都道府県の区域内に住所又は居所を有する任意継続被保険者をいう。(問題文を一部補正しています)
解説
解答:正
問題文のとおりです。
一般保険料率は、「1,000分の30から1,000分の130」の範囲内で決定されます。
支部被保険者は、会社などに勤めている被保険者ということになりますので、たとえば、京都府に住んでいても大阪府の会社に勤めていれば、その人は大阪府の支部被保険者ということになりますね。
どうしてこのような仕組みになっているかというと、保険料は会社が被保険者のお給料から天引きして納付しますよね。
人によって保険料率が変わってしまうと計算が大変です。
なので、会社の所在地を基準にして保険料率を決めてしまえばその方が作業がラクですよね。
次の問題は、その保険料率を変更するときの手順についての内容になっています。
誰がどのように手順を進めるのか、に注目してみましょう。
保険料率を変更するときの手順は?
(平成23年問10A)
全国健康保険協会が都道府県単位保険料率を変更しようとするときは、あらかじめ、運営委員会が当該変更に係る都道府県に所在する支部の支部長の意見を聴いたうえで、理事長に対しその変更について意見の申出を行う。
解説
解答:誤
全国健康保険協会が都道府県単位保険料率を変更しようとするときは、
- あらかじめ、「理事長」が支部長の意見を聴きます。
- そして運営委員会の議を経なければなりません。
なので問題文はいろいろと間違いがありますね。
上記のように、保険料率は全国健康保険協会が決定したり変更したりするわけですが、
もし厚生労働大臣が「〇〇県の保険料率はこのままではマズい」と判断したときはどうなるんでしょうね。
協会に対して、「保険料率を変更しなさい」と言えるのでしょうか。
下の問題でチェックしましょう。
厚生労働大臣が保険料率を変更できる?
(令和元年問6A)
全国健康保険協会は政府から独立した保険者であることから、厚生労働大臣は、事業の健全な運営に支障があると認める場合には、全国健康保険協会に対し、都道府県単位保険料率の変更の認可を申請すべきことを命ずることができるが、厚生労働大臣がその保険料率を変更することは一切できない。
解説
解答:誤
「厚生労働大臣がその保険料率を変更することは一切できない」の箇所が誤りです。
下の規定を見てみましょう。
(保険料率)
法160条
10 厚生労働大臣は、都道府県単位保険料率が、当該都道府県における健康保険事業の収支の均衡を図る上で不適当であり、協会が管掌する健康保険の事業の健全な運営に支障があると認めるときは、協会に対し、相当の期間を定めて、当該都道府県単位保険料率の変更の認可を申請すべきことを命ずることができる。
11 厚生労働大臣は、協会が前項の期間内に同項の申請をしないときは、社会保障審議会の議を経て、当該都道府県単位保険料率を変更することができる。
と定められています。
たとえ、全国健康保険協会が言うことを聞かなかったとしても、厚生労働大臣が都道府県単位保険料率を変更できるだけの権限があるんですね。
ちなみに、問題文に「一切できない」とか「まったくない」といった強めの否定語が出てきたときはその問題文は誤りの可能性があるので注意して問題文を読むようにしましょうね。
さて、健康保険料は一般保険料と介護保険料があるわけですが、被保険者がたとえば40歳になっていれば介護保険料が発生するのは当然として、
もし被保険者ではなく、被扶養者の方が40歳以上の場合は介護保険料の扱いはどうなるのでしょうか。
被扶養者なので徴収できない?それとも心を鬼にして徴収する??
協会は被扶養者の介護保険料を徴収できるのか
(平成22年問3A)
全国健康保険協会は、被保険者が介護保険第2号被保険者でない場合であっても、当該被保険者に介護保険第2号被保険者である被扶養者がある場合には、規約により、当該被保険者(特定被保険者)に介護保険料額の負担を求めることができる。
解説
解答:誤
「全国健康保険協会」は特定被保険者に介護保険料の負担を求めることはできません。
特定被保険者というのは、40歳以上65歳未満の介護保険第2号被保険者を被扶養者としている健康保険の被保険者のことです。
話を戻しますと、全国健康保険協会は特定被保険者に介護保険料の負担を求めることはできませんが、「健康保険組合」の場合は、規約で定めれば、特定被保険者に対して介護保険料の負担を求めることができます。
おそらく、ですが健康保険組合は財政的に厳しい所が多いと聞きますので、そのような処置ができるのかなと思いますね。
では最後に、被保険者の資格を喪失したときの保険料の徴収について見ておきましょう。
資格を喪失したとき、保険料は徴収される?
(平成25年問2D)
前月から引き続き被保険者であり、12月10日にその年度で初めての賞与として30万円を支給された者が、同月20日に退職した場合、事業主は当該賞与に係る保険料を納付する義務はない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
法156条3項では、
「前月から引き続き被保険者である者がその資格を喪失した場合においては、その月分の保険料は、算定しない」
と規定していますので、問題文のように、賞与であっても扱いは同じです。
ちなみに、月末に退職した場合は、資格の喪失は翌月になりますので退職月の保険料は発生しますから注意が必要ですね。
今回のポイント
- 一般保険料率は、「1,000分の30から1,000分の130」の範囲内で決定されます。
- 全国健康保険協会が都道府県単位保険料率を変更しようとするときは、あらかじめ、「理事長」が支部長の意見を聴き、運営委員会の議を経なければなりません。
- 厚生労働大臣は、協会に対し、都道府県単位保険料率の変更の認可を申請すべきことを命ずることができ、協会が申請をしないときは、社会保障審議会の議を経て、当該都道府県単位保険料率を変更することができます。
- 「健康保険組合」の場合は、規約で定めれば、第2号被保険者被扶養者(40歳以上65歳未満)がいる特定被保険者に対して介護保険料の負担を求めることができます。
- 前月から引き続き被保険者である者がその資格を喪失した場合においては、その月分の保険料は、算定しません。
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