〜「労災保険法 これだけで理解できる傷病(補償)年金の仕組み」労災-29〜
傷病(補償)年金のキーワードは
「まだ治ゆしていない」
です。
まだ治療中なので、療養(補償)給付を受けながら治療を続けているのですが、1年6ヶ月経過してもまだ「治ゆしていない」状態で、一定の傷病等級に該当していると、所轄労基署長が支給の決定をしてくれるのです。
こういった大まかな流れをつかんでおいて過去問を見ていくことにしましょう。
休業(補償)給付と併給はできる?
(平成30年問5C)
休業補償給付と傷病補償年金は、併給されることはない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
これは、法18条2項に「傷病補償年金を受ける者には、休業補償給付は、行わない。」と書いています。
この、傷病(補償)給付と休業(補償)給付もどちらも生活の補償のための給付ですよね。
違うのは、傷病(補償)年金の方は文字どおり「年金」なのです。
つまり、休業(補償)給付は月に1回程度ごとに請求を繰り返す必要がありますが、傷病(補償)年金の方は、障害状態にある限り、年金として支給されるので、請求の手間が省けます。
要するに、障害があるほどの傷病であれば、1か月に1回支給申請をする手間をかける必要はないだろう、ということですね。
また、ほかの論点としては、傷病(補償)年金は、
- 療養開始後、1年6箇月を経過した日か、それ以後の日において「傷病が治っていない」&「傷病等級にある」こと
- 支給の決定は所轄労基署長が職権によって行われること(支給申請をするのではない)
- 年1回、定期報告がある
ということを押さえておきましょう。
次は、先述した「傷病等級」と支給要件についての過去問です。
傷病(補償)年金と障害の程度の関係は?
(平成29年問2B)
傷病補償年金の支給要件について、障害の程度は、6か月以上の期間にわたって存する障害の状態により認定するものとされている。
解説
解答:正
問題文のとおりで、傷病補償年金の支給要件として、障害の程度が、6か月以上の期間、続いていることが必要となります。
つまり、たとえば足の骨を折ったとして、最初の時期は立って歩けないほどの状態でそのときは傷病等級に該当していたとしても、治療が進むにつれてだんだん症状が軽い方に変化していきますよね。
なので、傷病(補償)年金が支給されるためには、それなりの長期間、傷病等級に該当するほどの状態である必要があるわけです。
でなければ休業(補償)給付で十分対応できるわけですもんね。
次は、傷病(補償)年金と打切保障についての過去問です。
傷病(補償)年金を受けていて打切補償は成り立つ?
(平成29年問2E)
業務上負傷し、又は疾病にかかった労働者が、当該負傷又は疾病に係る療養の開始後3年を経過した日において傷病補償年金を受けている場合には、労働基準法第19条第1項の規定の適用については、当該使用者は、当該3年を経過した日において同法第81条の規定による打切補償を支払ったものとみなされる。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
これは業務災害に限った話になりますが、本来、業務災害が起きたときは、事業主が労働基準法の災害補償の規定に基づいて労働者に対して療養補償や休業補償などをする義務があります。
それを、政府に保険料を払うことによって、政府が保険会社のような役割をしているということになります。
なので、労働基準法にある「打切補償」の制度が労災保険法にも適用されているということですね。
ですが、たとえ労働者が打切保障で解雇制限が解除になったとしても、傷病補償年金まで止まるとこはもちろんありません。
では最後に、傷病(補償)年金が受けられなくなった時、どうなるのかについて確認しましょう。
傷病(補償)年金が受けられなくなったらどうなる?
(平成29年問2C)
傷病補償年金の受給者の障害の程度が軽くなり、厚生労働省令で定める傷病等級に該当しなくなった場合には、当該傷病補償年金の受給権は消滅するが、なお療養のため労働できず、賃金を受けられない場合には、労働者は休業補償給付を請求することができる。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
障害の程度が軽くなって、傷病等級に該当しなくなって傷病(補償)年金を受けることができなくなったとしても、療養のために労働ができず、賃金がもらえない限りは、休業(補償)給付を請求することができます。
今回のポイント
- 休業補償給付と傷病補償年金は、併給されることはありません。
- 傷病補償年金の支給要件として、障害の程度が、6か月以上の期間、続いていることが必要となります。
- 療養の開始後3年を経過した日において傷病補償年金を受けている場合には、使用者は、当該3年を経過した日において打切補償を支払ったものとみなされます。
- 傷病(補償)年金を受けることができなくなったとしても、療養のために労働ができず、賃金がもらえない限りは、休業(補償)給付を請求することができます。
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