被扶養者についての要件は、国内居住要件の法改正があり、ますます複雑になりましたね。
ですが、社労士試験でもよく出題されている項目ですので、きっちり押さえたいところです。
論点としては生活に身近なものなのでイメージしながら理解を進めていくと良いでしょう。
それでは最初の問題を見てみましょう。
下の問題は、生計維持要件が論点になっています。
まずは同一世帯での生計維持要件がどうなっているのか見ていくことにしましょう。
被扶養者になるための生計維持要件(同一世帯の場合)
(令和元年問5C)
被扶養者としての届出に係る者(以下「認定対象者」という。)が被保険者と同一世帯に属している場合、当該認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上の者である場合又は概ね厚生年金保険法による障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者である場合にあっては180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入を上回らない場合には、当該世帯の生計の状況を総合的に勘案して、当該被保険者がその世帯の生計維持の中心的役割を果たしていると認められるときは、被扶養者に該当する。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
被扶養者の認定対象者について、同一世帯に属している場合の要件の原則は、
- 年間収入が130万円未満
- 60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満
であるうえに、被保険者の年間収入の2分の1未満である必要があります。
ただし、上記の原則に当てはまらなくても、年間収入の要件を満たしていて、被保険者の年間収入を上回らない場合には、
その世帯の生計の状況を総合的に勘案して、その被保険者がその世帯の生計維持の中心的役割を果たしていると認められるときは、
被扶養者となります。
まずは原則を押さえておいて、被保険者が世帯の生計維持の中心的な存在で、認定対象者が被保険者の年間収入を超えていなければ大丈夫ということですね。
では、被保険者が世帯の生計維持の中心的な存在ということは、やはり世帯主でないとならないのでしょうか。
そのあたりを次の問題で確認しましょう。
被保険者は世帯主である必要がある?
(令和2年問5ア)
被扶養者の要件として、被保険者と同一の世帯に属する者とは、被保険者と住居及び家計を共同にする者をいい、同一の戸籍内にあることは必ずしも必要ではないが、被保険者が世帯主でなければならない。
解説
解答:誤り
被扶養者と被保険者の同一世帯についての考え方ですが、被保険者が世帯主でないとならない、という規定はありません。
同一世帯というのは、被扶養者と被保険者が住居や家計を共同にしていればオーケーということです。
なので、戸籍が同じである必要もありません。
ちなみに、被扶養者が一時的に病院などに入院している場合も、一時的な別居ということで同一世帯として見てくれます。
さて、次は認定対象者が同一世帯でない場合の被扶養者要件について確認しましょう。
被扶養者になるための生計維持要件(同一世帯でない場合)
(平成26年問5イ)
被保険者と同一世帯に属しておらず、年間収入が150万円である被保険者の父(65歳)が、被保険者から援助を受けている場合、原則としてその援助の額にかかわらず被扶養者に該当する。
解説
解答:誤り
「援助の額にかかわらず」の部分が誤りです。
被保険者と同一世帯に属していない場合、年間収入が援助による収入より少ない場合は被扶養者になりますが、収入額の要件として、
- 年間収入が130万円未満
- 60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満
であることが必要です。
収入の額についての要件は先ほどの同一世帯の時と同じですが、年間収入について2分の1要件があるわけではなく、
仕送りの額が認定対象者の年間収入よりも少ないことが要件になっているのですね。
さて、配偶者が事実婚の場合で、事実婚の配偶者の父母を被扶養者にするための要件を見てみましょう。
次の問題では、事実婚の配偶者が不幸にも亡くなられた場合の引き続き被扶養者として認められるのかが問われています。
事実婚の配偶者の父母が被扶養者になるためには
(平成30年問3E)
被保険者の配偶者で届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあるものの父母及び子であって、その被保険者と同一の世帯に属し、主として被保険者により生計を維持されてきたものについて、その配偶者で届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあるものが死亡した場合、引き続きその被保険者と同一世帯に属し、主としてその被保険者によって生計を維持される当該父母及び子は被扶養者に認定される。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
事実婚の配偶者の父母については、「同一世帯」であることと、「生計維持」の2つの要件が必要ですが、
もし、不幸にも事実婚の配偶者が亡くなっても、「同一世帯」と「生計維持」の要件が続くようであれば、引き続き被扶養者になります。
これは、事実婚の父母だけでなく、「子」についても同様ですが、
祖父母や孫はそもそも初めから被扶養者の対象になっていませんのできちんと押さえておきましょう。
では最後に、被扶養者の「国内居住要件」について見ておきましょう。
法改正があってしばらく経ちますが、今一度確認しておきたいですね。
被扶養者の国内居住要件
(令和2年問3オ)
被保険者(外国に赴任したことがない被保険者とする。)の被扶養者である配偶者に日本国外に居住し日本国籍を有しない父がいる場合、当該被保険者により生計を維持している事実があると認められるときは、当該父は被扶養者として認定される。
解説
解答:誤り
問題文の場合は、被扶養者になりません。
配偶者の父なので、「同一世帯」と「生計維持」の要件を満たしていれば被扶養者になれるわけですが、「同一世帯」の要件を満たせていませんね。
また、国内居住要件から見ても問題文のケースでは被扶養者になれません。
この国内居住要件とは、被扶養者になろうとする場合、日本国内に住所があることが原則になっています。
仮に日本にいないとしても、留学や観光というように一時的に日本を離れている状態であくまでも生活の基盤は日本国内である必要があります。
ちなみに、逆に、日本国内にいる場合でも、日本国籍がなく、治療や観光目的で日本に滞在している場合は被扶養者になりません。
今回のポイント
- 被扶養者の認定対象者について、同一世帯に属している場合の要件の原則は、
- 年間収入が130万円未満
- 60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満
であるうえに、被保険者の年間収入の2分の1未満である必要があります。
- ただし、上記の原則に当てはまらなくても、年間収入の要件を満たしていて、被保険者の年間収入を上回らない場合には、その世帯の生計の状況を総合的に勘案して、その被保険者がその世帯の生計維持の中心的役割を果たしていると認められるときは、被扶養者となります。
- 被扶養者と被保険者の同一世帯についての考え方ですが、被保険者が世帯主でないとならない、という規定はありません。
- 被保険者と同一世帯に属していない場合、年間収入が援助による収入より少ない場合は被扶養者になりますが、収入額の要件として、
- 年間収入が130万円未満
- 60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満
であることが必要です。
- 事実婚の配偶者の父母については、「同一世帯」であることと、「生計維持」の2つの要件が必要ですが、もし、不幸にも事実婚の配偶者が亡くなっても、「同一世帯」と「生計維持」の要件が続くようであれば、引き続き被扶養者になります。
- 国内居住要件とは、被扶養者になろうとする場合、日本国内に住所があることが原則になっており、仮に日本にいないとしても、留学や観光というように一時的に日本を離れている状態であくまでも生活の基盤は日本国内である必要があります。
各科目の勉強法の記事をまとめました
労働基準法から一般常識までの全科目の勉強法の記事をまとめましたのでぜひご覧ください
リンク「社労士試験 独学合格法 各科目の勉強方法の記事をまとめました!」
科目ごとにまとめて記事を見ることができます!
スマホでご覧になっていただいている場合は、一番下までスクロールすると、科目名が並んでいますのでご覧になりたい科目をタップいただくと、その科目だけの記事を見ることができます。
もしくは、一番右上の三本線(メニューになっています)をタップしていただいて科目名を表示させる方法もあります。
ぜひご活用ください!
この記事へのコメントはありません。