療養(補償)給付は、原則としては「療養の給付」といった現物給付になるので、労働者が政府から治療費を受け取るわけではではありません。
ただ、療養の給付が困難な場合や、療養の給付を受けないことについて労働者に相当の理由がある場合は、例外的に「療養の費用」の支給を受けることができます。
今回は、療養の給付の基本的な事項についての過去問を集めてみました。
最初の問題は、療養の給付の範囲についての問題です。
療養の給付の範囲は居宅におけるお世話は対象外?
(平成30年問2D)
療養補償給付としての療養の給付の範囲には、病院又は診療所における療養に伴う世話その他の看護のうち、政府が必要と認めるものは含まれるが、居宅における療養に伴う世話その他の看護が含まれることはない。
解説
解答:誤
療養補償給付としての療養の給付の範囲には、居宅における療養に伴う世話その他の看護も含まれます。
では、療養の給付の範囲にはどのようなものがあるのか、条文で確認しましょう。
〔療養補償給付〕
第13条 療養補償給付は、療養の給付とする。
② 前項の療養の給付の範囲は、次の各号(政府が必要と認めるものに限る。)による。
一 診察
二 薬剤又は治療材料の支給
三 処置、手術その他の治療
四 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
五 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
六 移送
③ 政府は、第一項の療養の給付をすることが困難な場合その他厚生労働省令で定める場合には、療養の給付に代えて療養の費用を支給することができる。
となっています。
ちなみに、6番目に「移送」がありますが、健康保険法の療養の給付の範囲には入っていません。
次の問題は、その「移送」についての過去問です。
治療を受けるために、医療機関に移送されている途中で不幸にも亡くなってしまった場合は、移送費として認められるのでしょうか。
医療機関に搬送途中で亡くなった場合、移送費は支給される?
(令和元年問5D)
被災労働者が、災害現場から医師の治療を受けるために医療機関に搬送される途中で死亡したときは、搬送費用が療養補償給付の対象とはなり得ない。
解説
解答:誤
問題文の場合は、移送費の対象になります。
これは、「昭和30年7月13日基収841号」で回答が出ていますのでご紹介しますね。
問)
標記については、昭和22年10月25日付基発第138号その他の解説書により承知致しておりますが、災害現場において医師の診察を受けず、被災者を医療機関への搬送の途中該被災者が死亡した場合の、該被災者が死亡に至る迄に要した搬送の費用を「移送」に要した費用として支給して宜しいか、聊か疑義がありますのでお伺い致します。(後略)
答)
本件のごとく、被災労働者が死亡に至る迄に要した搬送の費用は、療養のためのものと認められるので、移送費として支給すべきである。
となっています。
治療を行うつもりで搬送していたのであれば、それは移送費として認めるということなんでしょうね。
では、実際に療養の給付を受けようとする時の手続きはどうなっているのでしょうか。
下の過去問で確認しましょう。
療養の給付を受ける際の請求書は誰に提出する?
(平成27年問2C)
療養補償給付たる療養の給付を受けようとする者は、厚生労働省令に規定された事項を記載した請求書を、直接、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
解説
解答:誤
療養の給付を受けるときの請求書は、労基署長へ直接提出するのではなく、「指定病院等を経由して」提出します。
ただ、「療養の費用」の場合は、直接、所轄労働基準監督署長に提出することになりますので、整理しておきましょう。
また、通勤災害によって療養給付を受ける場合は、労働者から一部負担金を徴収することになっています。
その一部負担金はどのように徴収されるのかをチェックしておきましょう。
一部負担金はどうやって徴収する?
(令和元年問5E)
療養給付を受ける労働者から一部負担金を徴収する場合には、労働者に支給される休業給付であって最初に支給すべき事由の生じた日に係るものの額から一部負担金の額に相当する額を控除することにより行われる。
解説
解答:正
問題文のとおりで、一部負担金は、最初に支給される休業給付から一部負担金の額に相当する額を控除することにより行われます。
ちなみに、一部負担金は200円ですが、以下の場合には一部負担金は徴収されません。
- 第三者の行為によつて生じた事故により療養給付を受ける者
- 療養の開始後3日以内に死亡した者その他休業給付を受けない者
- 同一の通勤災害に係る療養給付について既に一部負担金を納付した者
さて、いま治療を受けている病院から、たとえば自宅に近い指定病院へ変更したいときの手続き方法についてチェックしておきましょう。
指定病院等を変更するときの届はどこに出す?
(令和元年問5B)
療養の給付を受ける労働者は、当該療養の給付を受けている指定病院等を変更しようとするときは、所定の事項を記載した届書を、新たに療養の給付を受けようとする指定病院等を経由して所轄労働基準監督署長に提出するものとされている。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
指定病院等を変更しようとするときは、届書を新たな指定病院等を経由して所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません。
今回のポイント
- 療養補償給付としての療養の給付の範囲には、居宅における療養に伴う世話その他の看護も含まれます。
- 被災労働者が死亡に至る迄に要した搬送の費用は、療養のためのものと認められるので、移送費として支給されます。
- 療養の給付を受けるときの請求書は、労基署長へ直接提出するのではなく、「指定病院等を経由して」提出します。
- 一部負担金(200円)の徴収は、最初に支給される休業給付から一部負担金の額に相当する額を控除することにより行われます。
- 指定病院等を変更しようとするときは、届書を新たな指定病院等を経由して所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません。
各科目の勉強法の記事をまとめました
労働基準法から一般常識までの全科目の勉強法の記事をまとめましたのでぜひご覧ください
リンク「社労士試験 独学合格法 各科目の勉強方法の記事をまとめました!」
科目ごとにまとめて記事を見ることができます!
スマホでご覧になっていただいている場合は、一番下までスクロールすると、科目名が並んでいますのでご覧になりたい科目をタップいただくと、その科目だけの記事を見ることができます。
もしくは、一番右上の三本線(メニューになっています)をタップしていただいて科目名を表示させる方法もあります。
ぜひご活用ください!
この記事へのコメントはありません。