過去問

「社労士試験 徴収法 読むだけでわかる!有期事業の一括のポイントとは」過去問・徴-50

一括」は徴収法においていくつかある関門の一つと言っていいでしょう。

一口に一括と言っても、有期事業、継続事業、請負事業のそれぞれに一括の要件があり、一括の反対に「分離」もあったりするので、押さえる知識量が多いからですね。

ここでは、有期事業の一括についての過去問を集めましたので、少しずつ押さえていくようにしましょう。

それでは最初の問題を見てみましょう。

有期事業が一括されるための業種が論点になっています。

はたして、どんな業種が有期事業の一括の対象になるのでしょうか。

 

有期事業の一括の対象になる業種は?

(平成28年労災問8A)

有期事業の一括の対象は、それぞれの事業が、労災保険に係る保険関係が成立している事業のうち、建設の事業であり、又は土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業とされている。

 

解説

解答:誤

有期事業の一括の対象となる事業は、「建設の事業であり、又は立木の伐採の事業」のみに限られているので、土地の耕作若しくは開墾などの事業は対象外です。

ただ、有期事業の一括として認めれられるには業種だけクリアすれば良いわけではありません。

事業の規模も一括の要件として規定されています。

では、その規模はどのようになっているのか、次の問題で確認してみましょう。

 

有期事業の一括の対象になる事業規模とは

(平成28年労災問8B)

有期事業の一括の対象となる事業に共通する要件として、それぞれの事業の規模が、労働保険徴収法による概算保険料を算定することとした場合における当該保険料の額が160万円未満であり、かつ期間中に使用する労働者数が常態として30人未満であることとされている。

 

解説

解答:誤

有期事業の一括の対象になる規模としては、「概算保険料の額に相当する額が160万円未満」である必要がありますが、「労働者数が常態として30人未満」という規定はありません。

また、もう少し踏み込んだ要件があるのですが、

建設の事業の場合は、「概算保険料の額に相当する額が160万円未満かつ請負金額1億8千万円未満であること」

立木の伐採の事業では、「概算保険料の額に相当する額が160万円未満、かつ、素材の見込生産量1,000立方メートル未満であること」

有期事業の一括の要件となっています。

さて、有期事業の一括の要件をすべて満たしたとして、一括の成立について届出が必要なのでしょうか。

また、届出が必要だとしたらどのように手続きをすることになるのでしょうか??

 

有期事業の一括のための手続き??

(平成28年労災問8C)

労働保険徴収法第7条に定める有期事業の一括の要件を満たす事業は、事業主が一括有期事業開始届を所轄労働基準監督署長に届け出ることにより有期事業の一括が行われ、その届出は、それぞれの事業が開始された日の属する月の翌月10日までにしなければならないとされている。

 

解説

解答:誤

有期事業の一括は、法律上当然に行われるので、届出をする必要はありません。

以前は、一括有期事業開始届を提出していたのですが、この制度は廃止されました。

ただ、報告をする必要はあって、一括有期事業の事業主は、次の保険年度の6月1日から起算して40日以内、

または保険関係が消滅した日から起算して50日以内に「一括有期事業報告書」を所轄都道府県労働局歳入徴収官に提出する必要があります。

で、有期事業の一括が法律上当然に行われるのは分かりましたが、一括するメリットはあるのでしょうか。

言い換えると、一括することで、何かトクをすることがあるんでしょうか?

次の問題で見てみましょう。

 

有期事業の一括の効果

(平成30年労災問8D)

2以上の有期事業が労働保険徴収法による有期事業の一括の対象になると、それらの事業が一括されて一の事業として労働保険徴収法が適用され、原則としてその全体が継続事業として取り扱われることになる。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

有期事業が一括される → 2以上の有期事業全体が継続事業として取り扱われることで、保険料の申告や納付の手続きが簡略化されます。

どういうことかというと、事業が開始されたとき、事業が終了したときには、それぞれ保険関係の届出と保険料の納付が必要になるのですが、

たとえば、期間の短い工事ごとにそれらの手続きをしていたら事業主も行政も大変な事務の量になってしまいます。

そこで、有期事業を一まとめにしてしまうことで手続きを簡略化しているのですね。

これが、有期事業の一括のメリットというわけです。

しかし、特に建設工事であれば、途中で仕様が変更になったりしたりして、請負金額が減ったりすることも十分に考えられます。

そんな時、有期事業の一括の要件に該当したときはどうなるのでしょうか。

最後に下の問題で確認しておきましょう。

 

途中で事業の規模が変わったときの取り扱い

(平成28年労災問8D)

当初、独立の有期事業として保険関係が成立した事業が、その後、事業の規模が変動し有期事業の一括のための要件を満たすに至った場合は、その時点から有期事業の一括の対象事業とされる。

 

解説

解答:誤

最初に、独立の有期事業として取り扱われた事業が、規模が変わって、一括の対象に該当することになったとしても、有期事業の一括に組み入れられることはありません。

工事の金額は、その時々ですぐに変わってしまうものなので、それに振り回されることになると、かえって届出の事務がややこしくなるので、一度決めた路線を変更することはしない、ということなのでしょうね。

 

今回のポイント

  • 有期事業の一括の対象となる事業は、「建設の事業であり、又は立木の伐採の事業」のみに限られています。
  • 有期事業の一括の要件として、建設の事業の場合は、「概算保険料の額に相当する額が160万円未満かつ請負金額1億8千万円未満であること」、立木の伐採の事業では、「概算保険料の額に相当する額が160万円未満、かつ、素材の見込生産量1,000立方メートル未満であること」となっています。
  • 有期事業の一括は、法律上当然に行われるので、届出をする必要はありません。
  • 有期事業が一括されると、2以上の有期事業全体が継続事業として取り扱われるので、保険料の申告や納付の手続きが簡略化されます。
  • 最初に、独立の有期事業として取り扱われた事業が、規模が変わって、一括の対象に該当することになったとしても、有期事業の一括に組み入れられることはありません。

 

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