寡婦年金は「掛け捨て防止年金」と言われることがあります。
どういうことかというと、「夫」が第1号被保険者として要件を満たしていながら、老齢基礎年金を受け取る前に不幸にして亡くなってしまったときに、夫が払った保険料を少しでも年金にして妻に支給しよう、というものです。
その寡婦年金を妻が受け取るのは、妻が60歳から65歳までの期間です。
お気づきのとおり、これはあくまで「妻」に対しての年金です。
もう少し時代が進んだら「寡夫年金」というのもできるんでしょうかね?笑笑
それでは過去問を見ていくことにしましょう。
寡婦年金の支給要件は?
(令和元年問4E)
死亡日の前日において死亡日の属する月の前月までの第1号被保険者としての被保険者期間に係る保険料納付済期間を5年と合算対象期間を5年有する夫が死亡した場合、所定の要件を満たす妻に寡婦年金が支給される。なお、当該夫は上記期間以外に第1号被保険者としての被保険者期間を有しないものとする。
解説
解答:誤
寡婦年金が支給されるには、亡くなった夫が、第1号被保険者の被保険者期間として、保険料納付済期間と保険料免除期間の合計が10年以上あることが必要ですが、合算対象期間は要件に含まれないので、問題文の場合は支給要件を満たしていません。
規定としては、
「寡婦年金は、死亡日の前日において死亡日の属する月の前月までの第1号被保険者としての被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が10年以上である夫が死亡した場合において、
夫の死亡の当時夫によつて生計を維持し、かつ、夫との婚姻関係が10年以上継続した65歳未満の妻があるときに、その者に支給する。
ただし、その夫が障害基礎年金の受給権者であつたことがあるとき、又は老齢基礎年金の支給を受けていたときは、この限りでない。」
となっています。
「夫との婚姻関係が10年以上」という要件も意識しておきましょうね。
では次に、寡婦年金の額についての過去問をチェックしましょう。
寡婦年金はいくらもらえるの?
(平成28年問2D)
寡婦年金の額は、死亡日の属する月の前月までの第1号被保険者としての被保険者期間に係る死亡日の前日における保険料納付済期間及び保険料免除期間につき、国民年金法第27条の老齢基礎年金の額の規定の例によって計算した額とされている。
解説
解答:誤
「老齢基礎年金の額の規定の例によって計算した額」ではなく、「老齢基礎年金の額の規定の例によって計算した額の4分の3に相当する額」となります。
先述したとおり、寡婦年金は「掛け捨て防止年金」の性格を持っているので、老齢基礎年金の満額をもらえるわけではない、ということでしょうか。
それに、もともとは夫が払った保険料で妻が年金をもらうわけですから、ここはガマン、といったところでしょうね。
と、ここで気になるのが遺族基礎年金です。
夫が亡くなったということは、妻に遺族基礎年金が支給される可能性は充分あるわけです。
もし、妻が遺族基礎年金をもらえる場合、寡婦年金も一緒にもらえるのでしょうか??
寡婦年金と遺族基礎年金は一緒にもらえる?
(平成29年問8D)
一定要件を満たした第1号被保険者の夫が死亡し、妻が遺族基礎年金の受給権者となった場合には、妻に寡婦年金が支給されることはない。
解説
解答:誤
問題文のような規定はなく、要件がそろえば、寡婦年金の受給権も発生します。
ただ、遺族基礎年金と寡婦年金の両方を受給することはできず、どちらか一方を選択することになります。
ちなみに、併給することはできませんが、
たとえば、先に遺族基礎年金を受給しておいて、遺族基礎年金をもらい終わった後に、60歳から65歳までの間、寡婦年金をもらうということは可能です。
妻にとっては助かる規定ですね。
最後に、遺族基礎年金の支給要件について確認されたい場合は、下記の記事を参考になさってくださいね。
今回のポイント
- 寡婦年金が支給されるには、亡くなった夫が、第1号被保険者の被保険者期間として、保険料納付済期間と保険料免除期間の合計が10年以上あることが必要です。
- 寡婦年金の額は、老齢基礎年金の4分の3の金額です。
- 遺族基礎年金と寡婦年金の両方の受給権が発生した場合は、どちらかを選択することになります。
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