休業(補償)給付は、業務上や通勤をしていてケガや病気になり、仕事ができない場合に生活費の補償として支給されるものですが、
療養のために労働ができず賃金を受けない日の第4日目から支給開始となります。
待期期間である3日間については、業務災害であれば事業主が休業補償を行う必要があります。
社労士試験では、事業主が賃金を一部支払っていた場合の休業補償給付の計算方法や、休業補償給付が不支給になる要件などについて問われていますので見ていくことにしましょう。
最初の問題は、労働者が休業中に事業主が賃金を支払っている場合の休業補償給付の金額が論点になっていますので、まずこちらからみていきますね。
事業主が賃金を支払っていたら休業補償給付は?
(平成30年問5B)
業務上の傷病により、所定労働時間の全部労働不能で半年間休業している労働者に対して、事業主が休業中に平均賃金の6割以上の金額を支払っている場合には、休業補償給付は支給されない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
休業補償給付が支給されるためには、「賃金を受けない日」であることが要件の一つですが、
この「賃金を受けない日」の定義は、労働時間がゼロの場合、
- まったく賃金を受けない日 あるいは
- 平均賃金の60%未満の賃金を受けた日
ということになります。
なので、平均賃金の60%以上が支払われている場合は、賃金を受けない日とはならず、休業補償給付は支給されません。
ちなみに、所定労働時間のうち一部分だけ労働不能の場合は、
平均賃金から労働したことによる賃金額を差し引いた額に対して60%未満の額が事業主から支払われているときには「賃金を受けない日」となります。
次に、休業補償給付の支給額について見ていきます。
労働時間がゼロの場合は、給付基礎日額の60%が休業(補償)給付として支給されます。
ちなみに、給付基礎日額というのは、労基法第12条の平均賃金に相当する額です。
では、所定労働時間のうち、少しでも働いていて賃金が支払われるときに休業補償給付がどのように計算されるのか、
次の問題で確認しましょう。
休業補償給付の計算の仕方
(令和2年問6A)
労働者が業務上の負傷又は疾病による療養のため所定労働時間のうちその一部分のみについて労働し、当該労働に対して支払われる賃金の額が給付基礎日額の20%に相当する場合、休業補償給付と休業特別支給金とを合わせると給付基礎日額の100%となる。
解説
解答:誤り
問題文のように給付基礎日額が100%になることはありません。
所定労働時間のうち一部労働した場合の休業補償給付の金額は、
(給付基礎日額 ー 部分算定日に対する賃金額)×60%
となります。
休業特別支給金についても、給付基礎日額から部分算定日に対する賃金額を差し引いた額の20%となりますので、
支払われた賃金の額が給付基礎日額の20%に相当する額だったとしても、すべて合わせて100%になることはありません。
ちなみに、部分算定日というのは、一部労働をして賃金が支払われるか、時間帯年休などで年次有給休暇の賃金が支払われる日のことをいいます。
さて、次は休業(補償)給付そのものが支払われるのかどうか、という論点について見ていきましょう。
下の問題では、所定休日について休業補償給付が支給されるのかどうかが問われていますので確認していきますね。
所定休日は休業補償給付の対象外?
(平成30年問5D)
会社の所定休日においては、労働契約上賃金請求権が生じないので、業務上の傷病による療養中であっても、当該所定休日分の休業補償給付は支給されない。
解説
解答:誤り
会社の所定休日であっても、業務上の傷病によって療養していて労働不能の状態で賃金を受けることができない場合は休業補償給付の支給があります。
これは、雪島鉄工所事件という最高裁判例からの出題ですが、雇用契約上、賃金請求権がない日についても休業補償給付が支給されるとしています。
実は、この判例にはもう一つ論点があって、「出勤停止」の処分を受けている日に対して休業補償給付が支給されるのか、ということにも言及されているので合わせて見てみましょう。
もし出勤停止処分中だったら、、、
(平成25年問2A)
休業補償給付は、労働者が業務上の傷病により療養のため労働不能の状態にあって賃金を受けることができない場合であれば、出勤停止の懲戒処分のため雇用契約上賃金請求権が発生しない日についても支給される。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
先ほどの問題と合わせて、会社の所定休日や出勤停止処分を受けている日についても休業補償給付は支給されます。
しかし、休業補償給付の支給がなされないケースが規定されています。
最後に、休業(補償)給付が支給制限を受ける事由について確認しておきましょう。
休業補償給付が支給されないケースとは
(平成24年問3E)
労働者が留置施設に留置されて懲役、禁錮又は拘留の刑の執行を受けている場合、休業補償給付は支給されない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
休業(補償)給付が支給されないのは、
- 刑事施設、労役場その他これらに準ずる施設に拘禁されている場合
- 少年院その他これに準ずる施設に収容されている場合
のいずれかで厚生労働省令で定める場合となっています。
問題文のように、留置施設に留置されて懲役、禁錮若しくは拘留の刑の執行を受けている場合は、上記の厚生労働省令に該当するので休業補償給付は支給されません。
ちなみに、未決勾留中の場合は支給されます。
今回のポイント
- この「賃金を受けない日」の定義は、労働時間がゼロの場合、
- まったく賃金を受けない日 あるいは
- 平均賃金の60%未満の賃金を受けた日
ということになります。
- 所定労働時間のうち一部労働した場合の休業補償給付の金額は、『(給付基礎日額 ー 部分算定日に対する賃金額)×60%』となります。
- 会社の所定休日や出勤停止処分を受けている日であっても、業務上の傷病によって療養していて労働不能の状態で賃金を受けることができない場合は休業補償給付の支給があります。
- 休業(補償)給付が支給されないのは、
- 刑事施設、労役場その他これらに準ずる施設に拘禁されている場合
- 少年院その他これに準ずる施設に収容されている場合
のいずれかで厚生労働省令で定める場合となっています。
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