給付制限については、ぜひ横断的な学習を取り入れることをオススメします。
法律によって若干取り扱いが違ってくるので、1科目ずつ勉強するよりも、横断学習をした方が効率が上がるためです。
特に、厚生年金の場合、独自の規定があったりしますので、機会を見つけて他の法律と比べてみてくださいね。
それでは最初の問題を見てみましょう。
この問題では、他の法律でもよく見る「故意」と「重大な過失」が論点になっていますので、思い出しながら確認しましょう。
「故意」と「重大な過失」の違い
(令和元年問6E)
被保険者が故意に障害を生ぜしめたときは、当該障害を支給事由とする障害厚生年金又は障害手当金は支給されない。また、被保険者が重大な過失により障害を生ぜしめたときは、保険給付の全部又は一部を行わないことができる。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
給付制限には絶対的給付制限と相対的給付制限がありますが、
- 絶対的給付制限 →「故意に」障害を生ぜしめたとき → 「支給しない」
- 相対的給付制限 → 「重大な過失」により障害を生ぜしめたとき →「全部又は一部」を行なわないことができる。
というようになっています。
ちなみに、相対的給付制限には、他の要件があります。
それがどんなケースなのかを次の問題で確認しましょう。
受診命令に従わなかったらどうなる?
(平成27年問6E)
老齢厚生年金の額に加算される加給年金額の対象となっている障害の状態にある19歳の子が、実施機関が必要と認めた受診命令に従わなかったときは、厚生年金保険法第77条の規定による支給停止が行われることがある。(問題文を一部補正しています)
解説
解答:正
問題文のとおりです。
相対的給付制限には、重大な過失以外に、実施期間が必要と認めた受診命令に正当な理由なく従わなかったり、診断を拒んだ場合にも該当し、年金たる保険給付の額の全部又は一部につき、その支給を停止することができます。
また、支給制限には、全部または一部の年金給付の支給を停止するということではなく、
年金給付の金額のランクを変更したり、あえて維持するという給付制限の仕方もあります。
それは、障害厚生年金の等級のことを指しているのですが、どういうことなのか次の問題を見てみましょう。
障害の程度を増進させた場合は?
(平成29年問5B)
実施機関は、障害厚生年金の受給権者が、故意若しくは重大な過失により、又は正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、その障害の程度を増進させ、又はその回復を妨げたときは、実施機関の診査による改定を行わず、又はその者の障害の程度が現に該当する障害等級以下の障害等級に該当するものとして、改定を行うことができる。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
- 故意もしくは重大な過失により、または
- 正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより
- その障害の程度を増進させ、又はその回復を妨げたときは、
- 障害厚生年金の改定を行わない、または現に該当する等級以下の等級に改定をすること
ができる、ということなのですが、つまりはお金欲しさに自分の障害等級を操作するような行為は認めないよ、ということですね。
ただし、障害厚生年金の受給権自体を消滅させることはありません。
さて、次はちょっと違う角度からの給付制限を見てみましょう。
基本的には、保険料を納付していない分についての保険給付は行われません。
なので、保険料を徴収する権利が時効で消滅した場合は、その分の保険給付は行われないのが原則ですが、
所定の要件を満たせば事情は変わってくるようです。
次の問題を読んでみましょう。
保険料を徴収する権利が時効で消滅した時の取り扱い
(平成30年問3ア)
保険料を徴収する権利が時効によって消滅したときは、当該保険料に係る被保険者であった期間に基づく保険給付は行わない。当該被保険者であった期間に係る被保険者の資格の取得について、厚生年金保険法第31条第1項の規定による確認の請求があった後に、保険料を徴収する権利が時効によって消滅したものであるときも同様に保険給付は行わない。
解説
解答:誤り
問題文の場合、保険給付は行われます。
つまり、被保険者の資格について確認や訂正の請求があった後に、保険料を徴収する権利が時効で消滅した場合は、消滅した分の保険給付は行われます。
たとえば、自分の被保険者資格について訂正の請求をしたのに、回答までの間に時間は流れ、どんどん時効で消滅していく被保険者期間ができてしまいます。
そんな不利益を解消するための措置ですね。
なので、上記の場合は、原則からみた場合、例外的な措置ということになりますね。
では、最後に第三者行為災害について確認しておきましょう。
キーワードは、「価額の限度」ですね。
第三者行為災害の場合の保険給付
(平成29年問2D)
政府等は、第三者の行為によって生じた事故により保険給付を行ったときは、その給付の価額の限度で、受給権者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。また、政府等は、受給権者が当該第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、その価額の限度で、保険給付をしないことができる。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
第三者行為災害の場合、
- 保険給付を行ったときは、その給付の価額の限度で、受給権者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得し、
- 受給権者が、第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、その価額の限度で、保険給付をしないことができます。
今回のポイント
- 給付制限には絶対的給付制限と相対的給付制限がありますが、
- 絶対的給付制限 →「故意に」障害を生ぜしめたとき → 「支給しない」
- 相対的給付制限 → 「重大な過失」により障害を生ぜしめたとき →「全部又は一部」を行なわないことができる。
という違いになっています。
- 相対的給付制限には、重大な過失以外に、実施期間が必要と認めた受診命令に正当な理由なく従わなかったり、診断を拒んだ場合にも該当し、年金たる保険給付の額の全部又は一部につき、その支給を停止することができます。
- 故意もしくは重大な過失により、または正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことによりその障害の程度を増進させ、又はその回復を妨げたときは、障害厚生年金の改定を行わない、または現に該当する等級以下の等級に改定をすることができます。
- 保険料を徴収する権利が時効で消滅した場合は、その分の保険給付は行われないのが原則ですが、被保険者の資格について確認や訂正の請求があった後に、保険料を徴収する権利が時効で消滅した場合は、消滅した分の保険給付は行われます。
- 第三者行為災害の場合、保険給付を行ったときは、その給付の価額の限度で、受給権者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得し、受給権者が、第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、その価額の限度で、保険給付をしないことができます。
毎日の勉強のヒントにどうぞ♫
これから一般常識、白書統計、法改正と、新しい分野の勉強が立て続けに始まりますが、
そちらに一極集中するというよりは、これまで学習した科目の復習と並行することができるといいですね。
時間配分を工夫してうまく皿を回していきましょう♫
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