今回の記事では、労働に関する一般常識ということで、労働契約法から「労働者と使用者の関係」についての過去問を取り上げたいと思います。
労働契約法は、毎年と言っていいほど社労士試験で出題されていますが、
労働者、使用者に対する考え方は法律によって違ってきますのでこれを機に確認するようにしたいですね。
それでは最初の過去問を見てみましょう。
ここでは、労働者の定義が論点になっていますが、労働基準法との違いに注目したいですね。
労働契約法でいうところの「労働者」とは
(平成24年問1A)
労働契約法における「労働者」とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいうとされており、これに該当すれば家事使用人についても同法は適用される。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
労働契約法でいう労働者は、「使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者」ということになっています。
ここで気をつけたいことは、労働基準法では家事使用人は適用除外になっていますが、
労働契約法については適用されますので混同しないように注意しましょう。
ちなみに、労働契約法で労働者の適用除外になるのは、
- 国家公務員及び地方公務員
- 同居の親族(親族のみを使用している場合)
となっています。
次に、使用者の定義についても見ておきましょう。
ここでも、労働基準法と労働契約法の違いが論点になっていますので、
労働基準法と労働契約法の違いが論点になっていますので、
どう違うのか見てみましょう。
「使用者」の定義についての考え方
(平成29年問1A)
労働契約法第2条第2項の「使用者」とは、「労働者」と相対する労働契約の締結当事者であり、「その使用する労働者に対して賃金を支払う者」をいうが、これは、労働基準法第10条の「使用者」と同義である。
解説
解答:誤り
使用者の定義については、労働契約法と労働基準法では違いがあります。
労働契約法では、使用者は「その使用する労働者に対して賃金を支払う者をいう」となっており、
一方、労働基準法は、「事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう」と規定されています。
つまり、労働契約法でいうところの使用者は、「賃金を支払う者」となっているので、法人であれば会社組織ということになりますが、
労働基準法の場合、事業の経営担当者も範囲に入っており、たとえば社長や取締役などの個人も範囲に入っていますので、
労働契約法の使用者の方が、定義している範囲が狭くなっていますね。
なので、使用者の考え方については、労働契約法と労働基準法では違いがあります。
さて、ここで労働契約へと視点を移していきたいと思います。
労働契約には、締結、変更、終了というように変化していくものですが、
労働契約を締結したり変更する場合に考慮しておかなければならないことがあります。
それは労働契約法ではどのように規定しているのでしょうか。
労働契約を締結・変更する場合は?
(平成23年問4A)
労働契約法に関して、労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとされている。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
労働契約を締結・変更する場合、まず労働者と使用者が対等の立場で合意することが大前提となります。
特に、労働契約の変更については、使用者が労働者に対して一方的に行っていることがありますが、
あくまで「合意」あっての変更であることに注意しましょう。
また、労働契約を締結・変更する場合は、「就業の実態に応じて、均衡を考慮」することも規定されていますので、
いくら契約の内容を自由に決定できる(民法521条)からといって好き勝手に決めることができるということではないですし、
労働基準法でも規制されることになります。
また、労働契約を締結・変更するときには、
「労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする」
と労働契約法第3条3項で規定されています。
この規定について、下の問題では「正社員」と、たとえば勤務地限定社員のような「多様な正社員」との転換にも適用されるのかが論点になっていますので見てみましょう。
労働契約の変更にかかる原則とは
(平成27年問1B)
労働契約の基本的な理念及び労働契約に共通する原則を規定する労働契約法第3条のうち、第3項は様々な雇用形態や就業実態を広く対象とする「仕事と生活の調和への配慮の原則」を規定していることから、いわゆる正社員と多様な正社員との間の転換にも、かかる原則は及ぶ。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
「仕事と生活の調和への配慮」というのは、いわゆる「ワークライフバランス」のことを指しています。
たとえば、独身の間は正社員としてバリバリ働き、結婚して子どもを持つようになると、転勤がネックになることがあります。
なので、子育ての間は勤務地限定社員に転換することも選択肢の一つになります。
子育てが終わって身軽になったら再び正社員として働くということも考えられますね。
というように、「正社員・多様な正社員」の転換といった労働契約の変更を行うときにも、
ワークライフバランスの原則が及ぶということも押さえておきたいですね。
とはいっても、会社それぞれに整備されている制度によって労働契約が規定されていることも多く、
労働者にとってはどのような選択肢があるのか分からないこともあるでしょうし、
そもそも労働契約の内容自体を理解した状態で労働契約を締結できているとも限りません。
なので、労働契約法では、
「使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとする。」(法4条)
と規定しています。
最後の問題では、どのようなシチュエーションで使用者が労働者へ説明するのかが問われていますので見ておきましょう。
使用者が労働者の労働契約の理解を深める場面とは
(令和元年問3A)
労働契約法第4条第1項は、「使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにする」ことを規定しているが、これは労働契約の締結の場面及び変更する場面のことをいうものであり、労働契約の締結前において使用者が提示した労働条件について説明等をする場面は含まれない。
解説
解答:誤り
使用者が労働者へ労働条件の説明を行うのは、労働契約の締結の場面及び変更するときだけでなく、
労働契約の締結前に、使用者が提示した労働条件について説明するときも含まれます。
こちらについては通達のリンクを貼っておきますので、ご自由にご参考になさってくださいね。
「4 労働契約の内容の理解の促進(法第4条関係)」のところに記載があります。
参考記事:「労働契約法の施行について」の一部改正について 平成30年12月28日 基発1228第17号 平成24年8月10日 基発0810第2号
今回のポイント
- 労働契約法でいう労働者は、「使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者」ということになっていて家事使用人も適用されます。
- 労働契約法では、使用者は「その使用する労働者に対して賃金を支払う者をいう」となっていますので、たとえば法人であれば会社組織がそれにあたります。したがって労基法での定義よりも狭い範囲になっています。
- 労働契約を締結・変更する場合、まず労働者と使用者が対等の立場で合意することが大前提となっていて、労働契約を締結・変更する場合は、「就業の実態に応じて、均衡を考慮」することも規定されています。
- 「正社員・多様な正社員」の転換といった労働契約の変更を行うときにも、「仕事と生活の調和への配慮(ワークライフバランス)」の原則が及びます。
- 使用者が労働者へ労働条件の説明を行うのは、労働契約の締結の場面及び変更するときだけでなく、労働契約の締結前に、使用者が提示した労働条件について説明するときも含まれます。
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