今回は、保険料の納付について取り扱った過去問を集めてみました。
最大のポイントは、事業主には、被保険者が負担する分の保険料と一緒に納付する義務があるということですね。
「もし被保険者にお給料がなく、保険料を天引きできなかったら?」
「保険料はどのタイミングで報酬から天引きするの?」
などといった論点になっていますのでみていくことにしましょう。
それでは最初の問題を見ていきますね。
この問題は、被保険者に報酬がない場合に、保険料の納付をどうするのか、ということが問われていますので読んでいきましょう。
お給料がない場合、被保険者分の保険料はどうなる?
(令和2年問5オ)
事業主は、被保険者に支払う報酬がないため保険料を控除できない場合でも、被保険者の負担する保険料について納付する義務を負う。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
法161条では、
「事業主は、その使用する被保険者及び自己の負担する保険料を納付する義務を負う。」
と規定されています。
保険料自体は事業主と被保険者で半分ずつ負担しますが、
保険料として納付するのが事業主である以上、
被保険者に報酬がなくて保険料を控除できないとしても、規定の保険料の金額を納付する義務があるわけですね。
その後、事業主の方から被保険者に対して被保険者負担分の保険料を請求する形となります。
この論点について、別の視点から問われている過去問がありますので、そちらの方も見ておきましょう。
傷病手当金を受けていて仕事ができない場合でも保険料が?
(令和2年問1B)
被保険者が同一疾病について1年6か月間傷病手当金の支給を受けたが疾病が治癒せず、その療養のため労務に服することができず収入の途がない場合であっても、被保険者である間は保険料を負担する義務を負わなければならない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
報酬がない原因が療養のための休職だったとしても、事業主は保険料を納付する義務があり、
被保険者も自分の保険料を負担する義務を負います。
療養のための休職について、通達がありますので下にリンクを貼っておきますね。
参考記事:休職と被保険者資格について 昭和二六年三月九日 保文発第六一九号
さて通常、事業主が保険料を納付するために、被保険者の報酬から保険料を天引きすることがほとんどだと思いますが、
事業主は、被保険者の報酬から天引きすることについて、どの月の報酬を控除する規定になっているのでしょうか。
下の問題で確認しましょう。
保険料を控除できるタイミングとは
(平成26年問9B)
5月23日に被保険者資格を取得した者の健康保険料の源泉控除について、その者の給与支払方法が月給制であり、毎月20日締め、当月末日払いの場合、事業主は、最初の給与(5月23日から6月20日までの期間に係るもの)で5月分の健康保険料を控除することができるが、毎月末日締め、当月25日払いの場合、最初の給与(5月23日から5月末日までの期間に係るもの)では健康保険料を控除することができない。
解説
解答:正
問題文のとおりで、ポイントとしては、事業主が被保険者の報酬から保険料として控除できるのは、
「前月」の標準報酬月額にかかる保険料なので、問題文の後半のケースでは保険料を控除することはできません。
なので、毎月事業主が控除しているのは「前月」の保険料というわけですね。
ですが、これには例外もあります。
それは、被保険者が退職するときです。
それはどういうことを指しているのか、次の問題を見てみましょう。
保険料を控除できるタイミングとは その2
(平成26年問9C)
勤務していた適用事業所を5月31日で退職し、被保険者資格を喪失した者の健康保険料の源泉控除について、その者の給与支払方法が月給制であり、毎月末日締め、当月25日払いの場合、事業主は、5月25日支払いの給与(5月1日から5月31日までの期間に係るもの)で4月分及び5月分の健康保険料を控除することができる。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
被保険者が退職することで被保険者資格を喪失する時は、前月分と当月分の保険料を報酬から控除することができます。
でないと、問題文の場合、最後の報酬になるわけですから、辞めてからあらためて請求するのも手間ですもんね。苦笑
ちなみに、先ほど傷病手当金を受けて療養している被保険者のお話がありましたが、
傷病手当金は報酬ではないので、事業主が傷病手当金から保険料を控除することは認められていません。
では最後に、もし事業主が納付した保険料が、本来納付する額よりも多かった場合はどのような取り扱いになるのでしょうか。
事業主に還付したりするのでしょうか。
納付した保険料が多かった場合は?
(平成24年問5C)
保険者等は、①被保険者に関する保険料の納入の告知をした後に、告知をした保険料額が当該納付義務者の納付すべき保険料額を超えていることを知ったとき、又は②納付した被保険者に関する保険料額が当該納付義務者の納付すべき保険料額を超えていることを知ったときは、その超えている部分に関する納入の告知又は納付を、その告知又は納付の日の翌日から1年以内の期日に納付されるべき保険料について納期を繰り上げてしたものとみなすことができる。
解説
解答:誤り
問題文中にある「1年以内」というのは「6月以内」が正しい規定です。
保険者等は、
- 被保険者に関する保険料の納入の告知をした後に告知をした保険料額が当該納付義務者の納付すべき保険料額を超えていることを知ったとき または
- 納付した被保険者に関する保険料額が当該納付義務者の納付すべき保険料額を超えていることを知ったときは、
その超えている部分に関する納入の告知または納付を、
その告知又は納付の日の翌日から6月以内の期日に納付されるべき保険料について
納期を繰り上げてしたものとみなすことができます。
つまり、毎月保険料を納付することになるので、たとえば1万円多く納付があったときは、
6月以内の保険料について繰り上げて納付したものとみなすことができる、ということですね。
今回のポイント
- 被保険者に報酬がなくて保険料を控除できないとしても、保険料として納付するのが事業主である以上、規定の保険料の金額を納付する義務があるのです。
- 報酬がない原因が療養のための休職だったとしても、被保険者は、自分の保険料を負担する義務を負います。
- 事業主が被保険者の報酬から保険料として控除できるのは、「前月」の標準報酬月額にかかる保険料となります。
- 被保険者が退職することで被保険者資格を喪失する時は、前月分と当月分の保険料を報酬から控除することができます。
- 保険者等は、
- 被保険者に関する保険料の納入の告知をした後に告知をした保険料額が当該納付義務者の納付すべき保険料額を超えていることを知ったとき または
- 納付した被保険者に関する保険料額が当該納付義務者の納付すべき保険料額を超えていることを知ったときは、
その超えている部分に関する納入の告知または納付を、その告知又は納付の日の翌日から6月以内の期日に納付されるべき保険料について納期を繰り上げてしたものとみなすことができます。
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