過去問

「社労士試験 労基法 もう一度確認!休業手当に関する要件とは」過去問・労基-61

今回の記事では、「休業手当」についての論点を大問にした平成27年に出題された事例問題を取り上げたいと思います。

一口に休業手当と言っても、休業手当が発生する要件、金額などいろいろな要素が入っていますので、知識の整理をするにはいいですね。

事例を読んで、頭の中に入っている知識について、どの知識の引き出しを開けるのかといった訓練にもなりますので見ていくことにしましょう。

 

(平成27年問5 問題文)

労働基準法第26条に定める休業手当に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
なお、当該労働者の労働条件は次のとおりとする。
所定労働日:毎週月曜日から金曜日
所定休日:毎週土曜日及び日曜日
所定労働時間:1日8時間
賃金 : 日給 15000 円
計算された平均賃金:10000円

 

休業手当を支払うべき日は?

(選択肢A)

使用者の責に帰すべき事由によって、水曜日から次の週の火曜日まで1週間休業させた場合、使用者は、7日分の休業手当を支払わなければならない。

 

解説

解答:誤り

問題文には1週間の休業とありますが、土曜日と日曜日は休日のため、休業手当を支払う必要はなく、5日分の休業手当を支払うことになります。

そもそも休業というのは、もともと労働日である日について業務を停止するということになりますので、

最初から休日である日については休業手当は発生しませんね。

通達でも、

「労働協約、就業規則又は労働契約により休日と定められている日については、休業手当を支給する義務は生じない

とされています。

では次の問題を見てみましょう。

今度は、まる1日の休業ではなく、休業によって労働時間が短縮されたケースになっています。

働いた時間があるので、その分の賃金が発生するわけですが、休業手当の支払額がどうなるのか確認しましょう。

 

休業した日に賃金が支払われたら?

(選択肢B)

使用者の責に帰すべき事由により労働時間が4時間に短縮されたが、その日の賃金として7,500円の支払がなされると、この場合にあっては、使用者は、その賃金の支払に加えて休業手当を支払わなくても違法とならない。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

休業手当の趣旨は、休業があって収入が下がることで労働者の生活が危ぶまれるところ、

休業手当を使用者が支払うことで生活保障をしようというものです。

その金額は、平均賃金の100分の60となっているので、すでに賃金として平均賃金の100分の60以上が支払われる場合は、

休業手当を支払う義務はありません。

ただ、支払われる賃金が平均賃金の100分の60に満たない場合は、100分の60となるように差額を支払う必要があります。

なので、問題文のケースですと、平均賃金が1万円ということで、労働した分の賃金として7500円が支払われますので、休業手当の支払いは必要ないことになります。

さて、次は振替休日と休業手当の関係について問われた問題です。

振替休日というのは、休日出勤をする必要が出たときに、あらかじめ休日と労働日を振り替えることですが、休業手当がからんだ場合はどのような扱いになるのでしょう。

 

振替休日と休業手当

(選択肢C)

就業規則の定めに則り、日曜日の休日を事業の都合によってあらかじめ振り替えて水曜日を休日とした場合、当該水曜日に休ませても使用者に休業手当を支払う義務は生じない。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

先ほどの選択肢Aでやったように、休日に対して休業手当を支払う必要はありません。

問題文では、もともと労働日であった水曜日が日曜日に休日出勤をするということで、事前に振り替えられましたので、

この水曜日に関しては、労働日ではなく休日となります。

ですから、振替休日になった日に対して休業手当を支払う必要はなくなったわけです。

ではここで、どのような休業の場合に休業手当を支払う義務が生じるのか確認しておきましょう。

キーワードは「使用者の責」に帰すべき事由による休業の場合に休業手当を支払う必要があるのですが、

下の問題の場合はどうなのでしょうか。

 

休業手当の支払義務が生じる要件とは

(選択肢D)

休業手当の支払義務の対象となる「休業」とは、労働者が労働契約に従って労働の用意をなし、しかも労働の意思をもっているにもかかわらず、その給付の実現が拒否され、又は不可能となった場合をいうから、この「休業」には、事業の全部又は一部が停止される場合にとどまらず、使用者が特定の労働者に対して、その意思に反して、就業を拒否する場合も含まれる。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

使用者の責」に帰すべき事由による休業というのは、労働者の立場から見たときに、労働契約どおりに働く意思はあるのに、会社が一方的に休業を言い渡す場合のことを指します。

なので、問題文のように、使用者が特定の労働者に対して就業を拒否する場合も含まれます

たとえば、30日前に解雇の予告をした労働者に対して、「もう出勤しなくていいよ」と一方的に就業を拒否した場合は、休業手当の支給が必要になります。

では最後の問題は、「使用者の責」になるかどうかが論点になっています。

はたして「使用者の責」になるのでしょうか?

 

使用者の責に帰すべき事由?

(選択肢E)

休電による休業については、原則として労働基準法第26条の使用者の責に帰すべき事由による休業に該当しない。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

問題文のように、電力会社の休電による休業の場合は、「使用者の責」による休業とはならないので、休業手当を支払う義務はありません。

休電以外にも、天災事変などでの不可抗力による休業も休業手当の対象となりません

これについては厚生労働省から、東日本大震災の影響により計画停電が行われたときに、停電中の休業については休業手当の対象にならない旨のお知らせがあります。

リンクを貼っておきますので、ご自由にご参考になさってくださいね。

 

参考記事:計画停電が実施される場合の労働基準法第26条の取扱いについて

 

ただし、停電があっても業務ができるのに使用者が一方的に休業にした場合には、休業手当を支払う義務が発生することもあります。

 

今回のポイント

  • 労働協約、就業規則又は労働契約により休日と定められている日については、休業手当を支給する義務は生じません
  • 休業手当の金額は、平均賃金の100分の60となっているので、すでに賃金として平均賃金の100分の60以上が支払われる場合は、休業手当を支払う義務はありません。
  • 振替休日になった日に対して休業手当を支払う必要はありません。
  • 使用者の責」に帰すべき事由による休業というのは、労働者の立場から見たときに、労働契約どおりに働く意思はあるのに、会社が一方的に休業を言い渡す場合のことを指します。
  • 天災事変や電力会社の休電による休業の場合は、「使用者の責」による休業とはならないので、休業手当を支払う義務はありません。

 

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さらに、スランプを脱したきっかけも記録しておくと、予防策としても使えますよ。

 

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