労働保険料は徴収法の根っこと言えるかもしれませんね。
保険料の定義をきっちりと押さえておかないと、この後の概算保険料や確定保険料、印紙保険料につなげることができないからですね。
まずは労働保険料にどんな種類があり、どのように金額が決まっていくのか見ていくことにしましょう。
では最初の問題に進みますね。
1問目は、労働保険料の種類が論点になっています。
さあ、労働保険料にはどんなものがあったのか確認していきましょう。
労働保険料にはどんなものがある?
(令和元年労災問8A)
労働保険徴収法第10条において政府が徴収する労働保険料として定められているものは、一般保険料、第1種特別加入保険料、第2種特別加入保険料、第3種特別加入保険料及び印紙保険料の計5種類である。
解説
解答:誤り
徴収法の労働保険料として定められているのは、
- 一般保険料
- 第1種特別加入保険料(中小事業主)
- 第2種特別加入保険料(一人親方)
- 第3種特別加入保険料(海外派遣者)
- 印紙保険料(日雇労働被保険者)
- 特例納付保険料(雇用保険の遡及適用)
の6種類です。
問題文には特例納付保険料が抜けていますね。
で、一般保険料には労災保険率と雇用保険率がありますが、これらはどのように決められるのでしょうか。
次の問題では労災保険率について取り扱っていますので見てみましょう。
労災保険率はどのように決まる?
(平成30年雇用問8E)
労災保険率は、労災保険法の適用を受けるすべての事業の過去5年間の業務災害、複数業務要因災害及び通勤災害に係る災害率並びに二次健康診断等給付に要した費用の額、社会復帰促進等事業として行う事業の種類及び内容その他の事情を考慮して厚生労働大臣が定める。(問題文を一部補正しています)
解説
解答:誤り
労災保険率は、適用を受ける過去5年間ではなく「過去3年間」の業務災害などに要した額や社会復帰促進等事業を考慮して厚生労働大臣が定めます。
ちなみに、令和3年の法改正で「複数業務要因災害」も労災保険率の考慮の対象として加えられています。
で、この労災保険率や雇用保険率に対して賃金総額を掛けると一般保険料になるわけですが、「賃金」についても見ておきましょう。
徴収法でいうところの「賃金」は、労働の対償として事業主が労働者に支払うものを指しますが、
退職金や結婚祝金などについては賃金総額に参入されないことになっています。
しかし、次の問題のケースではどうなのでしょうか?
一般保険料の算定基礎となる賃金とは
(平成29年労災問8A)
労働者が在職中に、退職金相当額の全部又は一部を給与や賞与に上乗せするなど前払いされる場合は、原則として、一般保険料の算定基礎となる賃金総額に算入する。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
退職金ではなく、退職金「相当額」を給与や賞与に上乗せして前払いする場合は、賃金総額に参入されて、一般保険料の計算に入ることになります。
一般的に退職金というのは、功労報償や退職後の生活保障といった意味合いがあり、
必ずしも労働の対償がすべての要素というわけではありませんが、
退職金相当額が前払いされると、労働者の通常の生計に組み入れられる可能性が高くなり、
給与や賞与の要素が強くなるので、労働の対償と判断されるわけですね。
さて、ここで法改正がらみの過去問を見ておきましょう。
現在では行われていない制度ですが、法改正に対応していないと引っかかってしまいかねない問題になっています。
64歳以上の労働者に対する保険料って??
(令和2年雇用問10E)
事業主が負担すべき労働保険料に関して、保険年度の初日において64歳以上の労働者(短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者を除く。)がいる場合には、当該労働者に係る一般保険料の負担を免除されるが、当該免除の額は当該労働者に支払う賃金総額に雇用保険率を乗じて得た額である。
解説
解答:誤り
現在では、4月1日時点で64歳以上の労働者に対する一般保険料の免除は行われていません。
少し前までは問題文のような制度があったのですが、令和2年度から廃止になっています。
これを見ていると70歳定年制が着々と進行しているのかもしれませんね。
では最後に、第1種特別加入保険料について見ていきましょう。
第1種特別加入保険料は特別加入保険料算定基礎額の総額(給付基礎日額×365日分)に第1種特別加入保険料率を掛けたものになるのですが、
第1種特別加入保険料率がどのような仕組みになっているのか、下の問題で確認しましょう。
第1種特別加入保険料率はどのようにして決定する?
(令和2年労災問10A)
第1種特別加入保険料率は、中小事業主等が行う事業に係る労災保険率と同一の率から、労災保険法の適用を受けるすべての事業の過去3年間の二次健康診断等給付に要した費用の額を考慮して厚生労働大臣の定める率を減じた率である。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
第1種特別加入保険料率は、
「中小事業主等が行う事業に係る労災保険率と同一の率」ー「過去3年間の二次健康診断等給付に要した費用の額を考慮して厚生労働大臣の定める率を減じた率」
ということになっていますが、厚生労働大臣の定める率は、現在「0」なので、
第1種特別加入保険料率は、数字としては、「中小事業主等が行う事業に係る労災保険率」と同じになっています。
この第1種特別加入保険料率に特別加入保険料算定基礎額の総額を掛けると第1種特別加入保険料になるというわけです。
今回のポイント
- 徴収法の労働保険料として定められているのは、
- 一般保険料
- 第1種特別加入保険料(中小事業主)
- 第2種特別加入保険料(一人親方)
- 第3種特別加入保険料(海外派遣者)
- 印紙保険料(日雇労働被保険者)
- 特例納付保険料(雇用保険の遡及適用)
の6種類です。
- 労災保険率は、適用を受ける過去5年間ではなく「過去3年間」の業務災害などに要した額や社会復帰促進等事業を考慮して厚生労働大臣が定めます。
- 退職金「相当額」を給与や賞与に上乗せして前払いする場合は、賃金総額に参入されて、一般保険料の計算に入ることになります。
- 現在では、4月1日時点で64歳以上の労働者に対する一般保険料の免除は行われていません。
- 第1種特別加入保険料率は、「中小事業主等が行う事業に係る労災保険率と同一の率」ー「過去3年間の二次健康診断等給付に要した費用の額を考慮して厚生労働大臣の定める率を減じた率(現在はゼロ)」となります。
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