労災保険の遺族(補償)給付には、年金と一時金の2種類がありますが、まず支給要件の違いを押さえておきましょう。
次に、支給額や欠格事由など周辺の知識を覚えていくといいですね。
今回は、基本的な知識が問われた過去問を集めましたので、理解の足がかりになれば幸いです。
最初の問題は、「生計維持」の要件が論点になっています。
共働きの状態で生計維持要件が認められるのか見ていきましょう。
妻に収入があると生計を維持していたことにならない?
(平成28年問6イ)
労働者が業務災害により死亡した場合、当該労働者と同程度の収入があり、生活費を分担して通常の生活を維持していた妻は、一般に「労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた」ものにあたらないので、遺族補償年金を受けることはできない。
解説
解答:誤
問題文の場合、妻は「労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた」者にあたるので、所定の要件を満たせば遺族補償年金を受けることができます。
遺族(補償)年金を受給できる遺族としては、
「労働者の配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹であつて、労働者の死亡の当時その収入によつて生計を維持していたもの」
と規定されています。
この生計維持要件は、死亡した労働者の収入だけで生計を維持していたということではなく、
たとえば共働きのように、労働者の収入が生計の一部を維持していればオーケーということです。
ちなみに、遺族(補償)年金の支給要件には、年齢要件もあります。
妻には年齢制限はありませんが、たとえば「夫」であれば、60歳以上または障害の状態にあること、もしくは55歳以上60歳未満で障害の状態にないもの、といった要件があります。
その他、子や父母、孫、祖父母、兄弟姉妹についても年齢要件がありますので、お手持ちのテキストで確認しましょう。
では、次は「子」が遺族(補償)年金を受けるための要件を確認することにしましょう。
次の問題では、先ほどの年齢要件が論点になっています。。。
「子」が遺族補償年金の受給資格者になるための条件
(令和2年問6C)
業務上の災害により死亡した労働者Yには2人の子がいる。1人はYの死亡の当時19歳であり、Yと同居し、Yの収入によって生計を維持していた大学生で、もう1人は、Yの死亡の当時17歳であり、Yと離婚した元妻と同居し、Yが死亡するまで、Yから定期的に養育費を送金されていた高校生であった。2人の子は、遺族補償年金の受給資格者であり、同順位の受給権者となる。
解説
解答:誤
問題文のケースでは、必ずしも子が2人とも遺族補償年金の受給資格者になるわけではありません。
というのも、子が遺族(補償)年金を受けるための要件は、
「労働者の死亡当時その収入によって生計を維持されていて、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある、または障害の状態にあること」
となっています。
問題文では、Yの収入によって生計を維持されていた大学生ということですが、Yの死亡当時は19歳とのことなので、年齢要件から外れています。
障害の状態にあるかどうかは記載がありませんので、もし大学生の子が障害の状態になければ受給資格者になることができません。
一方、高校生の子の方は年齢要件は満たしていますので、あとは、Yから定期的に養育費を送金されていた件について生計維持要件が認められれば遺族補償年金の受給資格者になることができます。
それでは、「遺族(補償)一時金」の方も見ていきましょう。
遺族(補償)一時金の支給要件は、
- 労働者の死亡の当時遺族補償年金を受けることができる遺族がないとき。
- 遺族補償年金を受ける権利を有する者の権利が消滅した場合において、他に当該遺族補償年金を受けることができる遺族がなく、かつ、当該労働者の死亡に関し支給された遺族補償年金の額の合計額が遺族補償一時金の額(給付基礎日額の1000日分)に満たないとき。
となっています。
まず、上記を頭の隅でもいいので置いておいた状態で過去問を見ていくことにしましょう。
遺族補償一時金の支給要件とは
(平成28年問6エ)
遺族補償年金の受給権を失権したものは、遺族補償一時金の受給権者になることはない。
解説
解答:誤
遺族補償年金の受給権を失権したとしても、遺族補償一時金の受給権者になる可能性はあります。
つまり、他に遺族補償年金の受給権者がいなくて、
すでに支給された遺族補償年金の額が遺族補償一時金の額(給付基礎日額の1000日分)に満たない場合は、
遺族補償一時金の受給権者になる可能性が残されているわけです。
では、先ほどの遺族(補償)年金では生計維持要件がありましたが、遺族(補償)一時金に、「生計維持要件」はあるのでしょうか。
下の過去問で確認しましょう。
生計維持関係がなくても遺族補償一時金の受給権者になれる?
(平成25年問1B)
労働者が業務災害により死亡した場合、その祖父母は、当該労働者の死亡当時その収入により生計を維持していなかった場合でも、遺族補償一時金の受給者となることがある。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
遺族(補償)一時金の場合、生計維持要件がなくても受給権者や受給資格者になる可能性があります。
ただ、生計維持要件は、受給権者の順位に影響します。
つまり、遺族(補償)一時金の受給権者の順位は、
- 配偶者(生計維持要件なし)
- 労働者の死亡の当時その収入によって生計を維持していた「子→父母→孫→祖父母」
- 生計維持関係のない「子→父母→孫→祖父母」
- 兄弟姉妹
となっています。
こちらの順位については、障害(補償)差額一時金と比較しておくと面白いので確認してみてくださいね。
では最後に、「兄弟姉妹」と遺族(補償)一時金の関係について確認しておきましょう。
先ほど出ました、遺族(補償)一時金の受給権者の順位を見ておいてくださいね。
兄弟姉妹が遺族補償一時金の受給権者になるための条件
(平成28年問6オ)
労働者が業務災害により死亡した場合、その兄弟姉妹は、当該労働者の死亡の当時、その収入により生計を維持していなかった場合でも、遺族補償一時金の受給権者となることがある。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
兄弟姉妹の場合、遺族(補償)一時金の受給権者になる順位としては、
生計維持のあるなしに関わらず、順位は一番最後になりますが、受給権者になる可能性があります。
兄弟姉妹ということは、亡くなった労働者と年齢が近く、仕事をしていて生活能力があるのではないかということで、
労災給付で支援する必要はないと考えられているのかもしれませんね。苦笑
今回のポイント
- 遺族(補償)年金の生計維持要件は、たとえば共働きのように、労働者の収入が生計の一部を維持していればオーケーです。
- 子が遺族(補償)年金を受けるための要件は、「労働者の死亡当時その収入によって生計を維持されていて、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある、または障害の状態にあること」となっています。
- 遺族(補償)一時金の支給要件は、
- 労働者の死亡の当時遺族補償年金を受けることができる遺族がないとき。
- 遺族補償年金を受ける権利を有する者の権利が消滅した場合において、他に当該遺族補償年金を受けることができる遺族がなく、かつ、当該労働者の死亡に関し支給された遺族補償年金の額の合計額が遺族補償一時金の額(給付基礎日額の1000日分)に満たないとき。
となっています。
- 遺族(補償)一時金の受給権者の順位は、
- 配偶者(生計維持要件なし)
- 労働者の死亡の当時その収入によって生計を維持していた「子→父母→孫→祖父母」
- 生計維持関係のない「子→父母→孫→祖父母」
- 兄弟姉妹
となっています。
各科目の勉強法の記事をまとめました
労働基準法から一般常識までの全科目の勉強法の記事をまとめましたのでぜひご覧ください
リンク「社労士試験 独学合格法 各科目の勉強方法の記事をまとめました!」
科目ごとにまとめて記事を見ることができます!
スマホでご覧になっていただいている場合は、一番下までスクロールすると、科目名が並んでいますのでご覧になりたい科目をタップいただくと、その科目だけの記事を見ることができます。
もしくは、一番右上の三本線(メニューになっています)をタップしていただいて科目名を表示させる方法もあります。
ぜひご活用ください!
この記事へのコメントはありません。