「社労士試験 安衛法 過去問で読み解く健康診断のルール」過去問・安衛-28

安衛法は、労働者の安全と健康を確保するためのものですが、労働者の健康状態を知るには健康診断が有効な手段の一つですね。

社労士試験でも、何種類かある健康診断について、その要件を論点にした出題がなされています。

まず、一般健康診断、特殊健康診断といった大枠を押さえておいて、少しずつ細部に入っていくと整理しやすいでしょう。

で、それぞれの目的を理解しておくと、知識も定着しやすいと思いますので、少しずつ進めていきましょう。

それでは最初の問題に入っていきましょう。

1問目は、健康診断を受診している時間は「労働時間」になるのか、ということが問われています。

 

健康診断の実施時間は労働時間?

(平成27年問10オ)

健康診断の受診に要した時間に対する賃金の支払について、労働者一般に対し行われるいわゆる一般健康診断の受診に要した時間については当然には事業者の負担すべきものとされていないが、特定の有害な業務に従事する労働者に対し行われるいわゆる特殊健康診断の実施に要する時間については労働時間と解されているので、事業者の負担すべきものとされている。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

まず、一般健康診断については、業務の遂行と直接関連しているものではなく、一般的な健康を確保するためのものなので、

一般健康診断の受診にかかった時間についての賃金は、事業者が支払わなければならない、とまでは言えません。

しかしながら、一般健康診断は事業主に実施義務があって、労働者にも健康に働き続けてもらうことが事業主の経営に必要なことなので、

できれば健康診断に要した時間分の賃金を事業主が負担することが望ましい、と通達に記載されています。

一方、特定の健康に有害な業務に従事する労働者に対して実施される特殊健康診断については、

健康に有害な業務の遂行に関連する健康診断なわけで、当然に実施されなければならないものです。

なので、特殊健康診断は、原則として所定労働時間内に行われるべきで、特殊健康診断を行うためにかかる時間は、労働時間となるので、

事業者はその時間分の賃金を支払う必要があり、もし、時間外に行われた時は、割増賃金を支払わなければなりません。

これらの論点については、通達からのものですので、リンクを貼っておきますね。

「13 健康管理」の「(2) 第六六条関係」に記載がありますので、ご自由にご参考になさってくださいね。

 

参考記事:労働安全衛生法および同法施行令の施行について 昭和四七年九月一八日 基発第六〇二号

 

健康診断に要する時間分の賃金については上記のとおりですが、健康診断そのものの費用は、誰が負担するべきものなのでしょうか。

事業者?それとも労働者??

 

健康診断の費用は誰が負担する?

(令和元年問10A)

事業者は、常時使用する労働者に対し、定期に、所定の項目について医師による健康診断を行わなければならないとされているが、その費用については、事業者が全額負担すべきことまでは求められていない。

 

解説

解答:誤

「事業者が全額負担すべきことまでは求められていない」の部分が誤りで、健康診断の費用は、当然、事業者が負担すべきものです。

どういうことかというと、安衛法第66条1項には、

事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(中略)を行わなければならない。

と規定されています。

安衛法で、事業者に対して「健康診断しなさいよ」と義務を課しているわけですから、その費用についても事業者に負担義務がある、というわけです。

では、事業者は雇っている労働者全員に対して一般健康診断を受けさせなければならないのでしょうか。

たとえば、週1回しか出勤してこないパートさんに対しても健康診断の実施義務があるのでしょうか??

 

一般健康診断を受診させる労働者の範囲

(令和元年問10C)

期間の定めのない労働契約により使用される短時間労働者に対する一般健康診断の実施義務は、1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上の場合に課せられているが、1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数のおおむね2分の1以上である者に対しても実施することが望ましいとされている。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

いわゆるフルタイムより労働時間数が短い労働者については、まず、

「1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上である」

場合は、フルタイムの労働者と同様に一般健康診断の実施義務があります。

で、

「1週間の労働時間数が、当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数のおおむね2分の1以上である者」

についても、一般健康診断を実施することが望ましい、と通達に書かれています。

こちらの通達も下にリンクを貼っておきますのでご参考になさってくださいね。

(P13の「(リ) 健康診断(指針第3の1の(9)関係)」に記載があります。)

 

参考記事:短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の施行について

 

さて、一般健康診断には、いくつか種類があり、「雇入時の健康診断」、「定期健康診断」、「特定業務従事者の健康診断」などがあります。

次の過去問では、「特定業務従事者の健康診断」についての論点になっているのですが、

「高所作業」に従事している労働者は、特定業務従事者の健康診断を受けなければならないのでしょうか。

 

高所作業は特定業務従事者の健康診断の対象?

(平成27年問10ウ)

事業者は、高さ10メートル以上の高所での作業に従事する労働者については、当該業務への配置替えの際及び6月以内ごとに1回、定期に、労働安全衛生規則に定める項目について健康診断を実施しなければならない。

 

解説

解答:誤

高所作業については、「特定業務」とはなっていませんので、特定業務従事者の健康診断の対象ではありません。

特定業務というのは、常時500人以上の労働者を従事させるときに産業医の専属が義務付けられている有害業務を指しています。

たとえば、深夜業坑内業務などが特定業務となっています。

ちなみに、特定業務従事者の健康診断は、その業務への配置替えの時と、6ヶ月以内ごとに1回行う必要があります。

では最後に「臨時の健康診断」についての過去問を見ておきましょう。

下の問題では、「誰が」、「誰の意見に基づいて」臨時の健康診断を指示するのか、という論点になっています。

 

臨時の健康診断の指示

(平成23年問9B)

都道府県労働局長は、労働安全衛生法第66条の規定により、労働者の健康を保持するため必要があると認めるときは、労働衛生指導医の意見に基づき、実施すべき健康診断の項目、健康診断を受けるべき労働者の範囲その他必要な事項を記載した文書により、事業者に対し、臨時の健康診断の実施その他必要な事項を指示することができる。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

臨時の健康診断は、「都道府県労働局長が」、「労働衛生指導医の意見に基づいて」、事業者に対して臨時の健康診断の実施その他必要な事項を指示することができます。

たとえば、事業場で特定の職業性疾病、たとえば、化学物質に起因する呼吸器の疾患が多発したり、有害物が大量に漏れ出した時などに都道府県労働局長が臨時の健康診断の実施を事業者に指示することができるのです。

文字どおり、緊急事態発生時に「臨時」に行われる健康診断ですね。

 

今回のポイント

  • まず、一般健康診断の受診にかかった時間についての賃金は、必ずしも事業者が支払わなければならないというわけではありません。
  • 特殊健康診断の場合、特殊健康診断を行うためにかかる時間は、労働時間となるので、事業者はその時間分の賃金を支払う必要があり、もし、時間外に行われた時は、割増賃金を支払わなければなりません。
  • 健康診断の費用は、当然、事業者が負担すべきものです。
  • フルタイムより労働時間数が短い労働者については、「1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上である」場合は、フルタイムの労働者と同様に一般健康診断の実施義務があります。
  • 特定業務従事者の健康診断は、夜業坑内業務などの特定業務が対象で、その業務への配置替えの時と、6ヶ月以内ごとに1回行う必要があります。
  • 臨時の健康診断は、都道府県労働局長労働衛生指導医の意見に基づいて、事業者に対して臨時の健康診断の実施その他必要な事項を指示することができます。

 

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