病院などで診療を受けるときは、通常は保険証を提示して自己負担分のお金を支払うことで、「現物給付」という形で健康保険が負担してくれますよね。
でも療養費というのは、「なんらかの事情で」診療費などを一旦すべて自己負担した後、申請して現金を支給してもらうシステムのことです。
身近な例では、就職してすぐ病院に行ったけど、事業主が資格取得届の手続き中で被保険者証がまだ届いていないので、
窓口で取りあえず10割負担分のお金を支払っておいて、後日、健康保険証がきたら再び窓口に行って健康保険分のお金を返してもらう、といったケースですね。
その療養費がどのような要件で支給されるのか、社労士試験ではどのような形で問われているのかを見ていくことにしましょう。
最初の問題は、療養費の支給要件についての問題です。
療養費が支給されるための条件を確認しましょう。
療養費の支給要件は?
(平成24年問6B)
被保険者が療養の給付若しくは入院時食事療養費、入院時生活療養費若しくは保険外併用療養費の支給に代えて療養費の支給を受けることを希望した場合、保険者は療養の給付等に代えて療養費を支給しなくてはならない。
解説
解答:誤
療養費は、被保険者が療養の給付から代えることを希望しても、支給されるわけではありません。
療養費は、保険者が
- 療養の給付や入院時食事療養費、入院時生活療養費若しくは保険外併用療養費の支給を行うことが困難であると認めるとき
- 被保険者が保険医療機関等以外の病院、診療所、薬局などから診療、薬剤の支給などを受けた場合において、やむを得ないものと認めるとき
に支給されます。
赤字で書いてある「困難」と「やむを得ない」がキーワードになっています。
あと、下線を引いている療養費の対象になっている項目にも注目です。
次の問題で療養費が支給される範囲をチェックしておきましょう。
療養費が支給される範囲は?
(令和元年問2C)
保険者は、訪問看護療養費の支給を行うことが困難であると認めるときは、療養費を支給することができる。
解説
解答:誤
訪問看護療養費は療養費の支給対象になっていません。
もう一度、療養費の対象になるものを確認しましょう。
- 療養の給付
- 入院時食事療養費
- 入院時生活療養費
- 保険外併用療養費
です。
こうやって見てみると、訪問看護療養費のような自宅で受けるものは対象になっていませんね。
で、先ほどのキーワードになっていた、「困難」と「やむを得ない」について取り扱った過去問を見てみましょう。
困難とかやむを得ない場合というのは、具体的にどのようなケースを指すのでしょうか。
療養費の支給要件にある「困難」・「やむを得ない」、、って??
(平成27年問6D)
被保険者が無医村において、医師の診療を受けることが困難で、応急措置として緊急に売薬を服用した場合、保険者がやむを得ないものと認めるときは、療養費の支給を受けることができる。
解説
解答:正
問題文のように、その地方に保険医がいない場合や、保険医はいてもその人がケガや病気で診療に従事することができない場合などには、「困難」と「やむを得ない」の要件を満たしています。
ただ、保険診療の評判が良くないからとか、他に保険医がいるにもかかわらず自分の好みで保険医以外の医者に診てもらった、
などといった場合は、「困難」と「やむを得ない」の要件からは外れるので療養費の支給はなされません。
こちらは通達からの出題になっていますので下にリンクを貼っておきますね。
参考記事:療養費の支給条件について 昭和二四年六月六日 保文発第一〇一七号
さて、療養費と輸血にかかる血液料金を題材にした問題を見てみましょう。
血の「形態」によって扱いが変わってくるようです。
血液料金で療養費になるものは?
(平成26年問1B)
輸血に係る血液料金は、保存血の場合も含めて療養費として支給され、療養の給付として現物給付されることはない。
解説
解答:誤
「生鮮血」の場合は療養費として扱われますが、「保存血」は療養の給付として現物給付されます。
「保存血」は病院などに保管してあるものですので、わざわざ療養費にしなくても、療養の給付として現物給付した方が早そうですね。
「生鮮血」の場合は、どちらかというと緊急に血を提供してもらう必要があった場合、血を提供してもらった人に支払った血液代金(現金)については、保険の範囲内で療養費の申請ができることになっています。
ちなみに、親子などの親族から血をもらった場合は支給できないそうですよ。
では最後に海外にいる被保険者から療養費の申請があった場合の規定について見ておきましょう。。
海外の病院では当然のことながら日本の健康保険は使えませんから、かかった診療費などは、一度自分で支払ったうえで健康保険の療養費の支給申請をするわけですね。
その申請の流れがどうなっているのか下の過去問で見ていくことにしますね。
海外から療養費の支給申請があった時の手続き方法は?
(平成27年問2C)
現に海外に居住する被保険者からの療養費の支給申請は、原則として事業主を経由して行うこととされている。また、その支給は、支給決定日の外国為替換算率(買レート)を用いて海外の現地通貨に換算され、当該被保険者の海外銀行口座に送金される。
解説
解答:誤
海外にいる被保険者からの療養費の支給申請は、事業主を経由して行い、療養費の受領も事業主が代理して行いますので、
保険者から海外の口座に送金されることはありません。
また、邦貨換算率は、その支給決定日の外国為替換算率(売レート)を使います。
今回のポイント
- 療養費は、保険者が
- 療養の給付や入院時食事療養費、入院時生活療養費若しくは保険外併用療養費の支給を行うことが困難であると認めるとき
- 被保険者が保険医療機関等以外の病院、診療所、薬局などから診療、薬剤の支給などを受けた場合において、やむを得ないものと認めるとき
に支給されます。
- 「生鮮血」の場合は療養費として扱われますが、「保存血」は療養の給付として現物給付されます。
- 海外にいる被保険者からの療養費の支給申請は、事業主を経由して行い、療養費の受領も事業主が代理して行います。
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