過去問

「社労士試験・労災保険法 苦手な通勤災害の事例問題を解くときに意識したいこととは」労災-48

通勤災害の事例問題を解くときに意識しておきたいことは、「通勤してたら起こりそうなことかどうか」ということです。

通勤災害は、「労働者の通勤による負傷、疾病、障害または死亡」のことですが、通勤に通常伴う危険が具体化したことでケガなどをしてしまったときに該当します。

あと、通勤そのものについての考え方を押さえておくことも大事ですね。

つまり、事故にあった時の移動が通勤として認められるかどうか、ということですね。

とはいっても、実際に問題文に触れてみないとピンと来ないですので一つ一つ見ていくことにしましょう。

最初の問題は、事故にあった時の移動が通勤なのかどうか、という論点になっています。

実は、事故にあったとき、家に帰るつもりではなかったようなのです。。。

 

同じ通勤経路でも目的が違えば??

(平成29年問5A)

退勤時に長男宅に立ち寄るつもりで就業の場所を出たものであれば、就業の場所から普段利用している通勤の合理的経路上の災害であっても、通勤災害とは認められない。

 

解説

解答:誤り

問題文の場合、通勤災害となります。

文中には、「退勤時に長男宅に立ち寄るつもりで」とありますが、普段通勤で使っているバスとは違うバスで長男宅に向かうつもりだったようです。

ただ、バス停は同じ所にあったので、通勤経路からは外れていなかったため、通勤災害と認められたのですね。

上記は通達(昭和50年1月17日 基収2653号)からの出題ですが、それによると、

通勤とは、被災労働者の行為を外形的、かつ、客観的にとらえて判断するものであり、

本件については、たとえ長男宅に立ち寄るつもりで就業の場所を出たものであっても、

いまだ通常の合理的な通勤経路上にある限りにおいては

当該被災労働者の行為は法7条1項の通勤と認めるのが妥当である」

となっています。

次は通勤の考え方を別の角度から見てみましょう。

一般的に通勤というと、朝に家を出るときと、夕方職場から家に帰るときをイメージすることが多いと思います。

(もちろん色々な働き方がありますので、必ずしも当てはまるわけではありませんが)

しかし、お昼休みに食事のため家に戻る人はどれだけいるでしょうか。

お昼ご飯を食べて職場に戻る場合も「通勤」になるのでしょうか。

 

お昼休みに一度家に帰って職場に戻るのも通勤?

(平成28年問3C)

午前の勤務を終了し、平常通り、会社から約300メートルのところにある自宅で昼食を済ませた労働者が、午後の勤務に就くため12時45分頃に自宅を出て県道を徒歩で勤務先会社に向かう途中、県道脇に駐車中のトラックの脇から飛び出した野犬に下腿部をかみつかれて負傷した場合、通勤災害と認められる

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

まず、通勤は家と職場の1往復しか認められないわけではありません。

なので、問題文のようにお昼休みに昼食を取って職場に戻るときも通勤になります。

で、野犬にかみつかれて負傷した件については、通勤による災害が、経験則上通勤していたら起こりうるであろうと認められる危険の具体化のことをいうので通勤災害と認められます。

つまり、歩いていて転んだとか、自動車で運転していて事故を起こした場合だけを適用するのではなく、通勤をしていて起こりうる危険も通勤との相当因果関係が認められれば通勤災害になるのです。

ではもう一問、同じようなケースを見てみましょう。

 

建設現場から物が落ちてきた!そのせいでケガしても通勤災害?

(平成25年問7C)

通勤の途中において、歩行中にビルの建設現場から落下してきた物体により負傷した場合、通勤による災害と認められない。

 

解説

解答:誤り

通勤の途中で、歩行中に建設現場から落ちてきた物に当たって負傷した場合は、通勤災害に認められる可能性があります。

こちらも、先ほどの犬にかまれた場合と同じく、通勤をしていて通常伴う危険が現実化したものと認められます。

ただ、会社へ行く通勤経路は同じでも、通勤と認められないケースもあるのです。

次の過去問を見てみましょう。

 

通常の出勤時間とかけ離れている場合、通勤として認められる??

(平成24年問1B)

運動部の練習に参加する目的で、午後の遅番の出勤者であるにもかかわらず、朝から住居を出る等、所定の就業開始時刻とかけ離れた時刻に会社に行く場合も、通勤に該当する。

 

解説

解答:誤り

問題文のように、通常の出勤時間とかけ離れた時間に家を出発した場合は、行く先は会社だったとしても通勤としては認められません

それは、会社に仕事をしに行くために家を出たというより、仕事以外の用事で会社に向かったということで、

通勤の要素が薄くなり、相当因果関係もないとみなされてしまいます。

なので、通勤と認められるには、仕事の始業時間に見合った時間に家を出ることが要件になります。

さて、最後にちょっと変わったパターンの問題を見てみましょう。

職場に到着して、タイムカードを押した後でも通勤災害になる可能性がある、というお話です。

 

タイムカードを押した後に通勤経路に戻ったときでも、、、

(平成28年問3E)

マイカー通勤をしている労働者が、勤務先会社から市道を挟んだところにある同社の駐車場に車を停車し、徒歩で職場に到着しタイムカードを押した後、フォグライトの消し忘れに気づき、徒歩で駐車場へ引き返すべく市道を横断する途中、市道を走ってきた軽自動車にはねられ負傷した場合、通勤災害と認められる。

 

解説

解答:正

問題文のとおり、タイムカードを押した後のタイミングでも通勤災害と認められることがあります。

こちらも通達(昭和49年6月19日基収1739号)からの出題なのですが、問題文のように、普段マイカー通勤をしている人が、

職場についてからライトを消し忘れたのに気づいて自分の車に戻ることは普通にありうることで、

通勤をしていて通常伴う危険が現実化したと認められるので、タイムカードを押した後のタイミングで事故にあったとしても通勤災害になるということです。

ただ、事業場内に入ってから時間がほどんど経過していないタイミング、というのは通勤災害になるか判断要素の一つにはなりますね。

 

今回のポイント

  • 通勤災害は、「労働者の通勤による負傷、疾病、障害または死亡」のことですが、通勤に通常伴う危険が具体化したことでケガなどをしてしまったときに該当します。
  • なので、通勤災害の事例問題を解くときに意識しておきたいことは、「通勤してたら起こりそうなことかどうか」ということです。
  • 通勤は家と職場の1往復しか認められないわけではありません。
  • 通勤と認められるには、仕事の始業時間に見合った時間に家を出ることが要件になります。

 

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