今回は、元方事業者や注文者、建築物貸与者などが、関係する人の安全を守るために定められたルールを論点にした過去問を集めてみました。
問題文やテキストには、「元方事業者」だの「建築物貸与者」だのとあまり聞きなれない単語が出てくるので、嫌気がさしそうな気も起こりそうですが、
文章をよく読んでると、なんとなく世間の一般常識で判断できそうなものもありますので、あきらめずに食いついてみましょう。
それでは最初の問題は、元方事業者に課せられた規定についての論点になっていますので見ていくことにしましょう。
元方事業者というのは、一つの場所でおこなう仕事の一部を請負人に請け負わせている者のことを指します。
違った表現をすると、たとえば、国から「橋を作って」と発注を受けて仕事をする会社が元方事業者ということになります。
で、国から発注を受けた元方事業者が、さらに下請会社に一部の仕事を注文したりする場合、元方事業者が注文者、下請会社は請負人ということになるわけですね。
では、その元方事業者がしなければならない措置に違反した場合、罰則が適用されるのでしょうか?
元方事業者の措置規定に違反したら罰則が?
(平成26年問8エ)
労働安全衛生法第29条第2項には、元方事業者の講ずべき措置等として、「元方事業者は、関係請負人又は関係請負人の労働者が、当該仕事に関し、この法律又はこれに基づく命令の規定に違反していると認めるときは、是正のため必要な指示を行わなければならない。」との規定が置かれており、この規定の違反には、罰則が付いている。
解説
解答:誤り
問題文の場合、罰則はありません。
つまり、法第29条第2項の元方事業者の講ずべき措置についての規定に違反しても罰則はないのです。
ただ、元方事業者から指示を受けた関係請負人や関係請負人の労働者はその指示に従わなければならない、という規定はあります。
さて、元方事業者のうち、建設業または造船業を行う事業者のことを特定元方事業者と言いますが、
この特定元方事業者が講じなければならない措置についても社労士試験で出題されています。
次の問題では建設業の特定元方事業者について関係請負人に対する措置について出題されていますので確認しましょう。
特定元方事業者の講じるべき措置とは
(平成26年問10A)
建設業に属する事業を行う特定元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われるときは、当該場所の状況(労働者に危険を生ずるおそれのある箇所の状況を含む。以下本問において同じ。)、当該場所において行われる作業相互の関係等に関し関係請負人がその労働者であって当該場所で新たに作業に従事することとなったものに対して周知を図ることに資するため、当該関係請負人に対し、当該周知を図るための場所の提供、当該周知を図るために使用する資料の提供等の措置を講じなければならない。ただし、当該特定元方事業者が、自ら当該関係請負人の労働者に当該場所の状況、作業相互の関係等を周知させるときは、この限りでない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
建設業の特定元方事業者の現場で新しく働くことになった関係請負人の労働者向けに、関係請負人がその新人さんに危険箇所などを教えるために必要な資料を、その特定元方事業者はちゃんと渡してあげてね、という規定になっています。
建設現場は一つでも、いろいろな会社や労働者の方が働いているので、みんなが安心して安全に働けるように特定元方事業者が情報共有してねということなんでしょうね。
次は、仕事の注文者が守らなければならない措置についての問題になります。
常識といえば常識だとは思うのですが。。。
注文者が請負人に対して守るべき措置とは
(平成24年問10A)
注文者は、その請負人に対し、当該仕事に関し、その指示に従って当該請負人の労働者を労働させたならば、労働安全衛生法又は同法に基づく命令の規定に違反することとなる指示をしてはならない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
たとえば元方事業者が下請会社に仕事を振って下請会社の労働者に働いてもらうなら、安衛法違反になることを指示してはいけません、ということですね。
では、工場用の建物を貸している人が講じなければならない措置について次の過去問を見てみましょう。
工場用の建築物を貸す場合にも必要な措置がある?
(平成24年問10C)
工場の用に供される建築物を他の事業者に貸与する者は、所定の除外事由に該当する場合を除き、当該建築物の貸与を受けた事業者の事業に係る当該建築物による労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
これは工場用の建物もそうですし、事務所が入る雑居ビルなんかも労働災害を防止するための必要な措置を講じる必要があるのですが、
これは複数の事業者が入っている場合にやらなきゃならないことで、建物を一つの事業者に貸す場合は対象外になっています。
さて最後に、貨物を発送する人が講じなければならない措置を確認しましょう。
貨物を運ぶのは一つの会社、一人の労働者だけとは限りません。
普通はいろいろな人が運搬に関わりますので、運搬中に事故が起きないように必要な措置ということになります。
貨物を発送する人がするべき措置
(平成24年問10E)
重量が1つで0.5トンである貨物を発送しようとする者は、所定の除外事由に該当する場合を除き、当該貨物に見やすく、かつ、容易に消滅しない方法でその重量を表示しなければならない。
解説
解答:誤り
「0.5トン」ではなく、「1トン以上」の貨物を発送しようとするときは、その貨物を一番最初に運送ルートに乗せようとする者が、
見やすく容易に消滅しない方法で、貨物の重量を表示する必要があります。
ただ、その貨物が包装されていない状態で、すぐに重量が分かる場合はその必要はありません。
今回のポイント
- 元方事業者が、関係請負人などが法違反をしていると認めたときには、是正のために必要な指示をしなければなりませんが、その規定に違反しても罰則はありません。
- 建設業の特定元方事業者の現場で新しく働くことになった関係請負人の労働者向けに、関係請負人がその新人さんに危険箇所などを教えるために必要な資料を、その特定元方事業者はちゃんと渡さなければなりません。(特定元方事業者が直接教える場合は対象外です。)
- 注文者は、請負人に対して、振った仕事に関して、その指示に従って請負人の労働者を労働させたのであれば、労働安全衛生法又は同法に基づく命令の規定に違反するような指示をしてはいけません。
- 工場用の建物や、事務所が入る雑居ビルを貸す者は労働災害を防止するための必要な措置を講じる必要があります。
- 「1トン以上」の貨物を発送しようとするときは、その貨物を一番最初に運送ルートに乗せようとする者が、見やすく容易に消滅しない方法で、貨物の重量を表示する必要があります。
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