変形労働時間制は、その成立要件だったり(就業規則とか労使協定)、労基署への届出の義務、労働時間の上限など色々と要件があります。
それらを整理するのは大変ですが、テキストを読んでいるだけではなかなか身につけることはできません。
問題演習を繰り返し行ったり、表を作ったりしてメリハリをつけながら覚える方が効果があると思います。
最終的には覚えきれなかったものは暗記してしまうことになるでしょうが、それまでにできるだけ潰しておくようにしましょう。
今回は、一年変形労働時間制とフレックスタイム制についての過去問を集めてみましたが最初の問題は、
一年変形労働時間制における労働時間の上限についての過去問になっています。
一年変形労働時間制の場合、労働時間のマックスは?
(平成30年問2イ)
いわゆる一年単位の変形労働時間制においては、隔日勤務のタクシー運転者等暫定措置の対象とされているものを除き、1日の労働時間の限度は10時間、1週間の労働時間の限度は54時間とされている。
解説
解答:誤
一年変形労働時間制の労働時間の限度は、1日=10時間、1週間=52時間となっており、「54時間」は誤りです。
ちなみに、一年変形労働時間制では、
- 対象期間において、その労働時間が48時間を超える週が連続する場合の週数が3以下であること
- 対象期間をその初日から3箇月ごとに区分した各期間(3箇月未満の期間を生じたときは、当該期間)において、その労働時間が48時間を超える週の初日の数が3以下であること
とも規定されています。
では実際に労働日などを確定していく上で注意することはあるのでしょうか。
次の過去問では休日の特定についての論点になっています。
一年変形労働時間制の休日の特定
(平成30年問2ウ)
いわゆる一年単位の変形労働時間制においては、その労働日について、例えば7月から9月を対象期間の最初の期間とした場合において、この間の総休日数を40日と定めた上で、30日の休日はあらかじめ特定するが、残る10日については、「7月から9月までの間に労働者の指定する10日間について休日を与える。」として特定しないことは認められていない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
通達(平成6年5月31日基発330号)によると、労働日を特定するということは、逆にいうと休日も特定することになります。
反対に、休日を特定しないと労働日も特定されないことになります。
なので、問題文のように「労働者の指定する10日間について休日を与える」としてしまったら、労働日が特定されたことにならないのでアウト、というわけです。
さて、次はフレックスタイム制についてのお話です。
フレックスタイム制のキモともいうべき論点について次の問題で確認しましょう。
フレックスタイム制と就業規則
(平成30年問2ア)
常時10人以上の労働者を使用する使用者が労働基準法第32条の3に定めるいわゆるフレックスタイム制により労働者を労働させる場合は、就業規則により、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定にゆだねることとしておかなければならない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
常時10人以上の労働者がいる場合は、就業規則が必ず必要になりますので、フレックスタイム制を実施する場合は、
就業規則に、労働者が始業と終業の時刻を自分で決定する旨の規定をしておく必要があります。
この、始業と終業の時刻を労働者に任せる、というのがフレックスタイム制の核ですね。
で、このフレックスタイム制は労基署への届出が要るのでしょうか。
何かの要件に該当した場合のような気がするのですが、次の問題でチェックしてみましょう。
フレックスタイム制を導入するには労基署へ届出が要る?
(令和2年問6B)
労働基準法第32条の3に定めるいわゆるフレックスタイム制を実施する際には、清算期間の長さにかかわらず、同条に掲げる事項を定めた労使協定を行政官庁(所轄労働基準監督署長)に届け出なければならない。
解説
解答:誤り
「清算期間の長さにかかわらず」ではなく、フレックスタイム制を実施する際、精算期間が1箇月を超える時には労使協定を行政官庁(所轄労働基準監督署長)に届け出る必要があります。
言い方を変えれば、清算期間が1箇月以内の場合は届け出る必要はありません。
で、実際に運用してみて、もし労働時間が清算期間で設定した総労働時間をオーバーした時はどうなるのでしょうか。
それについての規定はあるのでしょうか。
もし設定した総労働時間を超えてしまったら、、、
(平成30年問1ア)
労働基準法第32条の3に定めるいわゆるフレックスタイム制において、実際に労働した時間が清算期間における総労働時間として定められた時間に比べて過剰であった場合、総労働時間として定められた時間分はその期間の賃金支払日に支払い、総労働時間を超えて労働した時間分は次の清算期間中の総労働時間の一部に充当してもよい。
解説
解答:誤
もし、実際に労働した時間が清算期間における総労働時間を超えた時は、次の清算期間には充当できず、きちんと賃金を支払う必要があります。
逆に、清算期間における総労働時間に足りなかった場合は、次の清算期間に法定労働時間の総枠の範囲内であれば、その分を上積みすることができます。
今回のポイント
- 一年変形労働時間制の労働時間の限度は、1日=10時間、1週間=52時間となっています。
- 一年変形労働時間制はあらかじめ対象期間中の労働日と各労働日の所定労働時間を定める必要があります(最初の期間は除きます)。
- 常時10人以上の労働者がいる場合は、就業規則が必ず必要になりますので、フレックスタイム制を実施する場合は、就業規則に、労働者が始業と終業の時刻を自分で決定する旨の規定をしておく必要があります。
- フレックスタイム制を実施する際、精算期間が1箇月を超える時には労使協定を行政官庁(所轄労働基準監督署長)に届け出る必要があります。
- 実際に労働した時間が清算期間における総労働時間を超えた時は、次の清算期間には充当できず、きちんと賃金を支払う必要があります。
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