「厚生年金法 過去問を読んで理解する給付制限の考え方」厚-43

給付制限で困るのは、「支給しない」、「支給しないことができる」、「差し止め」など色々と種類があることですね。

どんな場合にどんな給付制限がかかるのかややこしいですね。

また、科目によって取り扱いが若干異なってくるところも厄介です。

最終的には、一通り勉強したら横断学習でやっつけてしまうのが一番良さそうですが、まずは一つずつ確認していくことにしましょう。

 

故意の犯罪行為はどこまで制限されるのか

(平成27年問5C)

被保険者が、自己の故意の犯罪行為により、死亡の原因となった事故を生じさせたときは、保険給付の全部又は一部を行なわないことができることとなっており、被保険者が精神疾患のため自殺した場合には遺族厚生年金は支給されない。

 

解説

解答:誤

問題文の場合、遺族厚生年金は支給されます。

自己の故意の犯罪行為により、死亡の原因となった事故を生じさせたときは、保険給付の全部又は一部を行なわないことができる」というのはもちろん正しいのですが、

自殺の場合は、精神的に異常をきたしている状態で行われることが多いので、自殺をしたからといって無条件で「故意」と判断することは適当ではないとされています。

もちろん、精神状態が正常だったと証明されたときはその限りではありません。

こちらは通達が出ておりますので、リンクを貼っておきますね。

 

参考記事:自殺により保険事故を生じた場合の遺族年金の給付制限について 昭和三五年一〇月六日 保険発第一二三号

 

次は、障害厚生年金についてのお話です。

故意や重大な過失などで、障害厚生年金の受給権者の障害の状態をひどくしてしまったときの取り扱いです。

その人の障害等級はどのように処置されるのでしょうか。

 

故意や重大な過失で障害の程度がひどくなったときの取り扱い

(平成22年問7C)

障害厚生年金の受給権者が、故意または重大な過失によりその障害の程度を増進させたときは、直ちに、その者の障害の程度が現に該当する障害等級以下の障害等級に該当する者として額の改定を行うものとする。

 

解説

解答:誤

「直ちに〜改定を行う」といった断定的な処置になるわけではありません。

障害厚生年金の受給権者

  • 故意  もしくは
  • 重大な過失により  または
  • 正当な理由がなくて療養に関する指示に従わない

ことによって、障害の程度がひどくなったり、回復を妨げたときは、

  • 障害厚生年金の額の改定を行わない

または

  • 現に該当する障害等級以下の障害等級に改定を行う

ことが「できる」と規定しています。

なので、「直ちに〜改定を行う」わけではないということですね。

さて、次の問題は給付制限とはニュアンスが違うのですが、「時効」がテーマになっています。

保険給付は、基本的に保険料が支払われていないと支給されません。

なので、時効で保険料を徴収できなくなったら、その期間分の保険給付を受けられないという理屈になりますね。

でも、被保険者について手続きするのは被保険者ではなく、事業主ですよね?

もし、事業主側に何らかの過失があった時はどうなるのでしょう、というのが次の問題です。

 

時効になった保険料と保険給付の関係とは

(平成27年問8B)

保険料を徴収する権利が時効によって消滅したときは、当該保険料に係る被保険者であった期間に基づく保険給付は行われないが、当該被保険者であった期間に係る被保険者資格の取得について事業主の届出があった後に、保険料を徴収する権利が時効によって消滅したものであるときは、この限りでないとされている。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

原則は、保険料を徴収する権利が時効によって消滅した場合、その保険料の対象となる期間については保険給付は行われないのですが、

被保険者の「資格取得」について「届出」や、「確認の請求」、「訂正の請求」があった「後に」、保険料を徴収する権利が時効で消滅したものについては大丈夫、ということになります。

そのかわり、保険料はきちんと納付する必要はありそうですけどね。

次の問題は、「届出」などをしなかったときの給付制限についての論点です。

届出などををしなかった場合に、なんらかのペナルティがあるというのはわかるのですが、どのようなものになるのかは、きちんと押さえておかなければなりません。

具体的には、「停止」と「差し止め」の違いですね。

下の問題で確認することにしましょう。

 

届出や書類の提出をしなかったらどうなる?

(平成22年問7D)

老齢厚生年金の受給権者が、正当な理由がなくて、厚生年金保険法施行規則の規定により行わなければならない届出またはこれに添えるべき書類を提出しない場合には、保険給付の全部または一部を一時停止することができる。(本問は、第1号厚生年金被保険者期間に基づく保険給付とします)

 

解説

解答:誤

「所定の届出をしなかった」り、「書類などを提出しない」ときは、保険給付の「停止」ではなく、「差し止め」になります。

で、「停止」と「差し止め」ではどこが違うのかというと、どちらも問題が解決するまで保険給付が止められる、という点では同じなのですが、

問題が解決した時に、「停止」はその時点から給付が始まるだけです。

それに対して「差し止め」は、問題が解決したら、止まっていた期間分の保険給付がさかのぼって支給されるのが決定的な違いです。

たとえば、書類の提出をしていなかった期間が3ヶ月あったとしたら、3ヶ月間は保険給付が止められてしまうわけですが、書類提出をしてしまえば、止まっていた3ヶ月分の保険給付もちゃんと支給される、というわけです。

逆に「停止」される、ってなった意地でも書類提出はちゃんとするでしょうね。笑

ではなく最後に「届出」についての支給制限について過去問をもう一問見て慣れておくようにしましょう。

先ほどの問題よりは内容が少し具体的になっています。

 

届出をしなかったら、、、?

(平成30年問4イ)

第1号厚生年金被保険者期間に基づく老齢厚生年金の受給権者(加給年金額の対象者があるものとする。)は、その額の全部につき支給が停止されている場合を除き、正当な理由なくして、厚生年金保険法施行規則第35条の3に規定する加給年金額の対象者がある老齢厚生年金の受給権者に係る現況の届書を提出しないときは、当該老齢厚生年金が支給停止され、その後、当該届書が提出されれば、提出された月から支給停止が解除される。

 

解説

解答:誤

問題文は「届書」を提出しないケースですので、支給停止ではなく、「差し止め」に該当します。

なので、届書が提出されれば差し止められていた加給年金額はさかのぼって支給されることになります。

 

今回のポイント

  • 自己の故意の犯罪行為により、死亡の原因となった事故を生じさせたときは、保険給付の全部又は一部を行なわないことができる」としています。
  • ただ、自殺の場合は、精神的に異常をきたしている状態で行われることが多いので、自殺をしたからといって無条件で「故意」と判断することは適当ではないとされています。
  • 障害厚生年金の受給権者
    • 故意  もしくは
    • 重大な過失により  または
    • 正当な理由がなくて療養に関する指示に従わない

    ことによって、障害の程度がひどくなったり、回復を妨げたときは、

    • 障害厚生年金の額の改定を行わない  または

     

    • 現に該当する障害等級以下の障害等級に改定を行う

    ことが「できる」と規定しています。

  • 保険料を徴収する権利が時効によって消滅した場合、その保険料の対象となる期間については保険給付は行われないのですが、被保険者の「資格取得」について「届出」や、「確認の請求」、「訂正の請求」があった「後に」、保険料を徴収する権利が時効で消滅したものについては大丈夫、ということになります。
  • 「所定の届出をしなかった」り、「書類などを提出しない」ときは、保険給付の「差し止め」になります。

 

 

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