健康保険料の納付についての出題は、社労士試験でちょくちょくありますが、納付期限の原則や退職時の保険料の取り扱い、事業主の保険料納付義務に関するものまでバラエティに富んでいますね。
また退職したときに、どの月の保険料まで控除するのかについての事例問題もあったりします。
事例問題については、すぐに解けそうならその場で取り組んでも大丈夫ですが、もし時間がかかりそうなら、迷わず後回しにしましょう。
あなたが手こずりそうな事例問題は、他の受験生も手こずる可能性が高いですから、必然的に正答率も下がる傾向にあります。
なので、確実に正答できる問題からやっつけるようにしましょうね。
では最初の問題を見てみましょう。
1問目は保険料の納付期限についての問題です。
原則に基づいた問題なのでしっかり押さえておきましょう。
保険料の納付期限は?
(平成22年問8B)
被保険者に関する毎月の保険料は、翌月末日までに、納付しなければならないが、任意継続被保険者に関する保険料については、その月の末日(初めて納付すべき保険料については、保険者が指定する日)までに納付しなければならない。
解説
解答:誤
一般被保険者の保険料は翌月末日が納付期限ですが、任意継続被保険者の場合は、「その月の末日」ではなく、「その月の10日」が期限になっています。
ただ、問題文にあるように、初めて納付すべき保険料については、「保険者が指定する日」としています。
さて、一般被保険者の場合は自分で保険料を納めることはせず、事業主がお給料から天引きして保険料を納付しているわけですが、「賞与」の場合の取り扱いはどうだったでしょうか。
下の問題で確認しましょう。
賞与の場合、保険料を賞与から控除することができる?
(平成24年問5D)
事業主は、被保険者に対して通貨をもって賞与を支払う場合においては、被保険者の負担すべき標準賞与額に係る保険料に相当する額を当該賞与から控除することができる。
解説
解答:正
問題文のとおりで、賞与についても被保険者が負担する標準賞与額にかかる保険料を、事業主が被保険者に払う賞与から控除することができます。
で、事業主は賞与から保険料を控除したらその金額を被保険者に通知する必要があります。
これは、賞与の場合だけでなく、報酬の場合も同じですね。
さて、もし実際に納めた保険料が、納めるべき保険料の金額よりも多かった場合はどうやって調整するのか次の過去問で見てみましょう。
もし保険料を多く納付していたら、、、
(平成24年問5C)
保険者等は、①被保険者に関する保険料の納入の告知をした後に、告知をした保険料額が当該納付義務者の納付すべき保険料額を超えていることを知ったとき、又は②納付した被保険者に関する保険料額が当該納付義務者の納付すべき保険料額を超えていることを知ったときは、その超えている部分に関する納入の告知又は納付を、その告知又は納付の日の翌日から1年以内の期日に納付されるべき保険料について納期を繰り上げてしたものとみなすことができる。
解説
解答:誤
問題文の最後にある「1年以内」が誤りで、正解は「6月以内」です。
保険者は、
- 被保険者に関する保険料の納入の告知をした後に告知をした保険料額が当該納付義務者の納付すべき保険料額を超えていることを知ったとき
または
- 納付した被保険者に関する保険料額が当該納付義務者の納付すべき保険料額を超えていることを知ったとき
は、超えている部分の保険料額を6月以内に納付されるべき保険料について納期を繰り上げてしたものとみなすことができます。
つまり、余分の保険料を返還していると手間がかかるので次の保険料に充てるね、ということですね。
それでは保険料の給与からの控除について、事例問題を見てみましょう。
ポイントは、月の途中で退職しているのか、それとも月末で退職しているのかによって、保険料を控除する月が変わってくる点ですね。
保険料控除についての事例問題
(令和元年問10C)
給与計算の締切り日が毎月15日であって、その支払日が当該月の25日である場合、7月30日で退職し、被保険者資格を喪失した者の保険料は7月分まで生じ、8月25日支払いの給与(7月16日から7月30日までの期間に係るもの)まで保険料を控除する。
解説
解答:誤
問題文の場合、保険料は7月分までではなく、6月分までとなります。
規定では、
「前月から引き続き被保険者である者がその資格を喪失した場合においては、その月分の保険料は、算定しない」
となっていますので、7月30日に退職すると資格喪失は7月31日になりますから、7月分の保険料は徴収されないことになります。
ただ、7月31日に退職した場合は、資格喪失は8月1日になりますので、7月分の保険料は徴収されます。
次は、雇用関係は続いているものの、休職しているためにお給料がなく保険料が支払えない状態のとき、被保険者分の保険料はどうなるのでしょうか。
次の問題で確認しましょう。
休職してお給料が入らない場合、保険料はどうなる?
(令和元年問10B)
被保険者の長期にわたる休職状態が続き実務に服する見込がない場合又は公務に就任しこれに専従する場合においては被保険者資格を喪失するが、被保険者の資格を喪失しない病気休職の場合は、賃金の支払停止は一時的であり、使用関係は存続しているため、事業主及び被保険者はそれぞれ賃金支給停止前の標準報酬に基づく保険料を折半負担し、事業主はその納付義務を負う。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
被保険者の資格を喪失しない病気休職の場合は、事業主は通常どおり被保険者分も含めて保険料を納付しなければなりません。
ただ、被保険者にも保険料を納付する義務があるので、事業主は被保険者に対して、保険料分のお金を払うよう請求する形になります。
私も病気で休職していた時がありましたが、社会保険料を会社に毎月振り込むのはキツかったですね。
ちなみに、これは通達にありますので下にリンクを貼っておきますね。
参考記事:休職と被保険者資格について 昭和二六年三月九日 保文発第六一九号
では最後に、先ほどの論点を違う形で出題されたものがありますので、そちらも確認しておきましょう。
もし被保険者側の保険料が全額控除できなかったら、、、
(平成29年問6B)
事業主は、当該事業主が被保険者に対して支払うべき報酬額が保険料額に満たないため保険料額の一部のみを控除できた場合においては、当該控除できた額についてのみ保険者等に納付する義務を負う。
解説
解答:誤
「控除できた一部の額」ではなく、事業主は保険料「全額」を納付しなければなりません。
今回のポイント
- 一般被保険者の保険料は翌月末日が納付期限ですが、任意継続被保険者の場合は、「その月の10日」が期限になっています。
- 賞与についても被保険者が負担する標準賞与額にかかる保険料を、事業主が被保険者に払う賞与から控除することができます。
- 保険者は、
- 被保険者に関する保険料の納入の告知をした後に告知をした保険料額が当該納付義務者の納付すべき保険料額を超えていることを知ったとき
または、
- 納付した被保険者に関する保険料額が当該納付義務者の納付すべき保険料額を超えていることを知ったとき
は、超えている部分の保険料額を6月以内に納付されるべき保険料について納期を繰り上げてしたものとみなすことができます。
- 前月から引き続き被保険者である者がその資格を喪失した場合は、その月分の保険料は徴収されません。
- 被保険者の資格を喪失しない病気休職の場合は、事業主は通常どおり被保険者分も含めて保険料を納付しなければなりませんし、被保険者にも保険料を納付する義務があるので、事業主は被保険者に対して、保険料分のお金を払うよう請求する形になります。
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