今回は、長時間労働者への医師による面接指導についての過去問を集めてみました。
通常の健康診断とは別に、時間外労働や休日労働が一定時間を超えて、労働者に疲労の蓄積が認められる時に、
労働者が「面接指導して!」と言ってきたら事業者には面接指導をする義務があります。
そこで、面接指導をする段階から、その後の事業者の対応までの流れを追っていくことにしましょう。
最初の過去問は、都道府県労働局長と面接指導の関連についての論点です。
都道府県労働局長に面接指導を指示する権限が??
(平成23年問9C)
都道府県労働局長は、労働安全衛生法第66条の8の規定により、労働者の精神的健康を保持するため必要があると認めるときは、労働衛生指導医の意見に基づき、面接指導を受けるべき労働者の範囲その他必要な事項を記載した文書により、事業者に対し、面接指導の実施その他必要な事項を指示することができる。
解説
解答:誤
都道府県労働局長には、問題文のような権限はありません。
都道府県労働局長が事業者に指示をするのは、労働衛生指導医の意見に基づいて行う、臨時の健康診断のことですね。
通常、長時間にわたる労働に関する面接指導は、労働者の申出により、事業者が行うものです。
労働者側の要件としては、
- 時間外・休日労働時間が月80時間を超えること
- 疲労の蓄積が認められる労働者が対象
となっていますが、
- 月100時間超の時間外・休日労働を行った研究開発業務従事者
- 高度プロフェッショナル制度適用者については、1週間あたりの健康時間が40時間を超えた場合におけるその超えた時間について、1月あたり100時間を超えるもの
については、申出がなくても面接指導を行う必要があります。
次は、派遣労働者の場合に面接指導をするのは派遣元、派遣先のどっちなのかという問題です。
派遣労働者に面接指導をするのは誰?
(平成27年問9E)
派遣就業のために派遣され就業している労働者に対して労働安全衛生法第66条の8第1項に基づき行う医師による面接指導については、当該労働者が派遣され就業している派遣先事業場の事業者にその実施義務が課せられている。
解説
解答:誤
派遣労働者への面接指導は、派遣先ではなく、派遣元に実施義務が課せられています。
実際に雇用しているのは派遣元であって、派遣元が労働時間などについて労働者と契約をするのですから、面接指導も派遣元がするのが筋というものなんでしょうね。
では、実施した面接指導の結果の記録の保存期間は何年に設定されているのでしょうか。
次の過去問で確認しましょう。
面接指導の結果は何年保存する必要がある?
(平成25年問8B)
事業者は、面接指導の結果に基づき、法定の事項を記載した当該面接指導の結果の記録を作成して、これを5年間保存しなければならない。
解説
解答:正
事業者は、面接指導の結果に基づいて、その結果の記録を作成して、5年間保存しなければなりません。
これは、一般健康診断などの保存期間と一緒なので、まとめて押さえておきましょう。
さて、労働者に対して面接指導をしたのはいいですが、その後が大切です。
面接指導をする目的は、労働者の健康を守ることですから、面接しっぱなしでは困るわけです。
ということで、面接指導が終わったあと、事業者は何をしなければならないのかを確認しましょう。
面接指導が行われたら事業者はどうする?
(平成25年問8E)
事業者は、面接指導の結果に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、面接指導が行われた後、遅滞なく、医師の意見を聴かなければならない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
面接指導の結果に基づく医師からの意見聴取は、面接指導が行われたあと、「遅滞なく」行われなければなりません。
ちなみに、労働者が自分で見つけた医師のもとで面接指導を受けて、その結果を事業者が受け取った場合も同様です。
で、医師から意見を聴取した事業主は、その結果に基づいて必要な行動を起こす必要が出てくる場合があります。
意見聴取後の事業者の行動についての論点を最後にチェックしましょう。
医師の意見を聞いたあと、事業者がすることとは?
(平成25年問8D)
事業者は、面接指導の結果に基づく医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、当該医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会(労働時間等の設定の改善に関する特別措置法第7条第1項に規定する労働時間等設定改善委員会をいう。)への報告その他の適切な措置を講じなければならない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
事業者は、面接指導の結果に基づいた医師の意見を聞いて、その必要があると認めるときは、労働者の実情を考慮して、
- 就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置
- 当該医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会への報告その他の適切な措置
を講じなければなりません。
今回のポイント
- 面接指導に関する労働者側の要件としては、「時間外・休日労働時間が月80時間を超えること」、「疲労の蓄積が認められる」ことです。
-
派遣労働者への面接指導は、派遣先ではなく、派遣元に実施義務が課せられています。
-
事業者は、面接指導の結果に基づいて、その結果の記録を作成して、5年間保存しなければなりません。
- 面接指導の結果に基づく医師からの意見聴取は、面接指導が行われたあと、「遅滞なく」行われなければなりません。
- 事業者は、面接指導の結果に基づいた医師の意見を聞いて、その必要があると認めるときは、労働者の実情を考慮して、
- 就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置
- 当該医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会への報告その他の適切な措置 を講じなければなりません。
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