〜「徴収法 これで分かる!口座振替での納付要件」徴-28〜
今回は、労働保険料の口座振替での納付についての過去問を集めてみました。
口座振替とは、つまるところ、銀行引き落としのことです。
口座振替で納付できるのは、納付書によって行われる次のものになります。
- 概算保険料(延納を含む)
- 確定保険料
ここで意識しておきたいのは、口座振替の対象となっているのは「通常手続き」に適用されている、ということを頭の片隅に入れておきましょう。
最初の過去問は口座振替の要件についてですが、そもそも口座振替は「必ず」行われるものなのか、という論点です。
口座振替の承認は絶対にしなければならない?
(平成30年労災問10D)
労働保険料の口座振替の承認は、労働保険料の納付が確実と認められれば、法律上、必ず行われることとなっている。
解説
解答:誤
「納付が確実と認められれば、法律上、『必ず』行われることとなっている」というわけではありません。
条文を確認してみましょう。
(口座振替による納付等)
※赤字の部分だけ読んでもらっても大丈夫です。
法21条の2
1 政府は、事業主から、預金又は貯金の払出しとその払い出した金銭による印紙保険料以外の労働保険料(以下この条において単に「労働保険料」という。)の納付(厚生労働省令で定めるものに限る。)をその預金口座又は貯金口座のある金融機関に委託して行うことを希望する旨の申出があつた場合には、その納付が確実と認められ、かつ、その申出を承認することが労働保険料の徴収上有利と認められるときに限り、その申出を承認することができる。
つまり、あくまでもお役所にとって口座振替が有利にはたらくのであれば承認ができる、ということになっています。
納付が確実ということだけで承認をするわけではないよ、ということですね。
あ、ここでもう一つ押さえておきたいのは、「印紙保険料は口座振替はできない」、ということです。
条文の最初の方に書いてありますので、チェックしておきましょう。
では、労働保険料の口座振替の要件についてもっと見ていきましょう。
冒頭に、
『口座振替で納付できるのは、納付書によって行われる概算保険料(延納を含む)と確定保険料です。』と書かせていただきました。
次のケースはどう判断すればいいのでしょう?
ややこしい書き方をしているがつまりは、、、
(平成24年雇用問8C)
確定保険料の額から既に納付した概算保険料の額を控除した不足額の納付については、口座振替による納付の対象とならない。
解説
解答:誤
問題文の場合は、口座振替の対象になります。
たとえば、継続事業の場合は、前年度の確定保険料と当年度の概算保険料を一緒に納付することになります。
確定保険料というのは、概算保険料の精算ということですから、誤差があって当たり前なんですよね。
問題文では「不足額」とちょっと表現を変えていますが、概算保険料と確定保険料の差額を支払うということですから全く問題ありません。
このように、問題文がひねった表現になっていても、落ち着いて判断するようにしましょう。
次は、口座振替の場合、労基署を経由できるのかという論点です。
まずは問題文に目を通して見ましょう。
口座振替ができるのなら?
(平成30年労災問10B)
口座振替による労働保険料の納付が承認された事業主は、概算保険料申告書及び確定保険料申告書を所轄都道府県労働局歳入徴収官に提出するが、この場合には労働基準監督署を経由して提出することはできない。
解説
解答:誤
口座振替による労働保険料の納付が承認された事業主は、労働基準監督署を経由して提出することができます。
また、労基署以外にも、日本銀行(本店、支店、代理店及び歳入代理店をいう。)を経由することができますが、納付する保険料がない場合はダメです。
納付するお金を持っていないのに銀行に行っても取り合ってくれません。笑
では、次は増加概算保険料を口座振替できるのかという論点を確認しましょう。
増加概算保険料は口座振替できるんだっけ?
(平成30年労災問10C)
労働保険徴収法第16条の規定による増加概算保険料の納付については、口座振替による納付の対象となる。
解説
解答:誤
増加概算保険料の納付は、口座振替の対象とはなりません。
増加概算保険料は、賃金総額等の増加が見込まれた日または一般保険料が変更した日から「30日以内」に納付する必要があります。
口座振替は先述したとおり、「銀行引き落とし」ですので、口座振替の依頼をしていては納付期限に間に合いません。
なので、増加概算保険料など臨時の納付には口座振替が使えないんですね。
下記はちょっとややこしい書き方をしていますが、先ほどの理屈から考えればすぐに判断できると思います。
認定決定された確定保険料の口座振替は可能、、、?
(平成27年労災問9E)
労働保険徴収法第21条の2の規定に基づく口座振替による納付の承認を受けている建設の事業を行う事業主が、建設の有期事業で、納期限までに確定保険料申告書を提出しないことにより、所轄都道府県労働局歳入徴収官が労働保険料の額を決定し、これを事業主に通知した場合において、既に納付した概算保険料の額が当該決定された確定保険料の額に足りないときは、その不足額を口座振替により納付することができる。
解説
解答:誤
認定決定された確定保険料は、その不足額を口座振替により納付することはできません。
認定決定された確定保険料は、15日以内に納付する必要がありましたよね。
15日では口座振替は残念ながら間に合いません。
ちなみに、認定決定された概算保険料についても、口座振替により納付することができません。
最後に、追徴金のケースについても確認しましょう。
理屈は同じですよ。
追徴金の口座振替は可能?
(平成30年労災問10E)
労働保険料の追徴金の納付については、口座振替による納付の対象とならない。
解説
解答:正
問題文のとおり、労働保険料の追徴金の納付については、口座振替による納付の対象とならない。
追徴金の納付期限は30日以内ですから、やっぱり口座振替の手続きが間に合わないですね。
今回のポイント
- 口座振替で納付できるのは、納付書によって行われる概算保険料(延納を含む)と確定保険料になります。
- 政府は、事業主から、印紙保険料以外の労働保険料の納付を口座振替で行うことを希望する旨の申出があった場合には、その納付が確実と認められ、かつ、その申出を承認することが労働保険料の徴収上有利と認められるときに限り、その申出を承認することができます。
- 口座振替による労働保険料の納付が承認された事業主は、労働基準監督署を経由して提出することができます。
- 増加概算保険料の納付は、口座振替の対象とはなりません。
- 認定決定された確定保険料は、その不足額を口座振替により納付することはできません。
- 追徴金の納付も、口座振替による納付の対象になりません。
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