いわゆる失業手当というのは、正式には「基本手当」というのですが、
1日あたりの失業手当は、「基本手当の日額」と呼ばれます。
で、基本手当の日額をどうやって計算するのかというと、「賃金日額×給付率」となります。
賃金日額は離職前に支払われた賃金がベースになるのですが、その計算方法について社労士試験の過去問ではどのように問われているのか、まず確認していきましょう。
賃金の計算はどこまでの期間を計算する?
(令和元年問2イ)
基本手当の日額の算定に用いる賃金日額の計算に当たり算入される賃金は、原則として、算定対象期間において被保険者期間として計算された最後の3か月間に支払われたものに限られる。
解説
解答:誤
「3か月間」ではなく、「6か月間」となります。
規定では、
「賃金日額は、算定対象期間において被保険者期間として計算された最後の6か月間に支払われた賃金(臨時に支払われる賃金及び3か月を超える期間ごとに支払われる賃金を除く。)の総額を180で除して得た額とする」
となっているのです。
つまり、離職前6カ月間の賃金の平均額を出すというわけですね。
では、「賃金」の範囲はどうなっているのでしょう。
次の過去問で確認しましょう。
みなし残業代の取り扱いはどうなってる?
(平成26年問3ア)
月あたり一定の時間外労働があったものとみなして支給される定額残業手当が、実際に行われた時間外労働に基づいて算出された額を上回るとき、その差額は賃金に含まれない。
解説
解答:誤
定額残業代と実際の残業代の差額も賃金に含まれます。
これは取扱要領からの出題で、このように規定されています。
〜取扱要領50402〜
「雇用保険法による賃金とは、法第4条第4項に規定するとおり、名称の如何を問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うすべてのものをいうのであるが、
この場合、労働の対償として支払われるものとは、現実に提供された労働に対して支払われるもののみを意味するものではなく、
一般に、契約その他によってその支給が事業主の義務とされるものを意味すると解せられる。」
となっています。
なので、雇用契約書などで、「あなたの賃金はこうなっていますよ」と明記されたものは、それが賃金にあたるということですね。
ただ、賃金には、臨時に支払われる賃金と3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金は含まれませんのでご注意を。
取扱要領をご覧になりたい方は下記のリンクからどうぞ↓
参考記事:取扱要領50402
では、労働者に社宅などを提供している場合、それは賃金の範囲に入るのでしょうか。
社宅などの住宅供与は賃金になる?
(平成26年問3オ)
事業主が労働の対償として労働者に住居を供与する場合、その住居の利益は賃金日額の算定対象に含まない。
解説
解答:誤
事業主が労働の対償として労働者に住居を供与する場合、その住居の利益は賃金日額の算定対象に含まれます。
事業主が労働者の家賃を肩代わりしているような場合は、賃金になるよということでしょうね。
ちなみに、取扱要領ではこうなっています。
〜取扱要領50501〜
「住居の利益は、賃金とされる。
ただし、住居施設を無償で供与される場合において、住居施設が供与されない者に対して、住居の利益を受ける者と均衡を失しない定額の均衡手当が一律に支払われない場合は、当該住居の利益は賃金とはならない。」
となっています。
でも、均衡手当が一律に支払われる場合は、住宅の利益が賃金になる可能性があるということですね。
取扱要領をご覧になりたい方は下記のリンクからどうぞ↓
次は、賃金に含まれる「時間的な」範囲についての過去問です。
たとえば、月の途中で退職した月給制の方の場合はどう計算するのでしょう。
月の途中で退職した場合、賃金日額の算定はどうする?
(平成30年問3C)
月給者が1月分の給与を全額支払われて当該月の中途で退職する場合、退職日の翌日以後の分に相当する金額は賃金日額の算定の基礎に算入される。
解説
解答:誤
問題文の場合、退職日の翌日以後の分に相当する金額は賃金日額の算定の基礎に「算入されません」。
では規定を確認しましょう。
〜取扱要領50503〜
「月給者が月の中途で退職する場合に、その月分の給与を全額支払われる例があるが、この場合、退職日の翌日以後の分に相当する金額は賃金日額の算定の基礎に算入されない。」
となっています。
実際に労働の対償となっていないお給料まで賃金日額の算定には入らないということですね。
取扱要領をご覧になりたい方は下記のリンクからどうぞ↓
では最後に、育児休業の関係でお給料が下がっている時に会社が倒産してしまった場合、賃金日額はどうなってしまうんでしょう。
お給料が下がった状態で算定されてしまうんでしょうか。。。
時短勤務中に会社が倒産してしまった場合の賃金日額の計算は??
(令和元年問2ア)
育児休業に伴う勤務時間短縮措置により賃金が低下している期間中に事業所の倒産により離職し受給資格を取得し一定の要件を満たした場合において、離職時に算定される賃金日額が勤務時間短縮措置開始時に離職したとみなした場合に算定される賃金日額に比べて低いとき、勤務時間短縮措置開始時に離職したとみなした場合に算定される賃金日額により基本手当の日額を算定する。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
つまり、問題文のケースで基本手当の日額を算定する場合、実際の離職時の賃金を見るのではなく、時短勤務を開始前の賃金をベースに算定するということです。
ちょっと長いですが規定を確認しておきましょう。
〜取扱要領50661〜
「育児休業、介護休業又は育児・介護に伴う勤務時間短縮措置(以下 3 において「短縮 措置等」という。)により賃金が喪失、低下している期間中又はその直後に倒産・解雇等の理由等により離職し、受給資格を取得し一定の要件を満たした場合については、
離職時に算定される賃金日額が、短縮措置等開始時に離職したとみなした場合に算定される賃金日額に比べて低い場合は、 短縮措置等開始時に離職したとみなした場合に算定される賃金日額により基本手当の日額を算定することとする。」
ですので、問題文の場合は、労働者保護のため、杓子定規的に算定するのではなく、ちゃんと(?)働いていた時の賃金をベースにして賃金日額を決めてくれるということですかね。
ここで注意するべきは、自主退職ではなく、倒産や解雇などの理由で退職した場合とあるので、自主退職は対象にならないっぽいです。
取扱要領をご覧になりたい方は下記のリンクからどうぞ↓
今回のポイント
- 賃金日額は、算定対象期間において被保険者期間として計算された最後の6か月間に支払われた賃金(臨時に支払われる賃金及び3か月を超える期間ごとに支払われる賃金を除く。)の総額を180で除して得た額となります。
- 定額残業代と実際の残業代の差額も賃金に含まれます。
- 住居の利益は、賃金とされます。
- 退職日の翌日以後の分に相当するお給料は賃金日額の算定の基礎に算入されません。
- 育児休業や介護休業の関係で時短中でお給料が下がっている時に、会社が倒産、解雇になった場合、基本手当の日額を算定する時は、実際の離職時の賃金を見るのではなく、時短勤務を開始前の賃金をベースに算定します。
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