休業(補償)給付は、業務上や通勤の途中であった傷病を治している時に、仕事へ行けない間、生活費の補償という形で支給されるものです。
治療中に支給されるものですから、療養(補償)給付とタイミングは一緒になりますね。
また、休業特別支給金もしかりです。
ここでは、休業(補償)給付の額や、支給要件についての過去問をご紹介していきます。
最初の過去問は休業補償給付の額についてです。
傷病が軽いらしく、少しだけ仕事をされているようです。
その場合、休業補償給付の額はどうなるのでしょうか?
仕事をしていて賃金をもらっている場合の休業補償給付の額は?
(平成30年問5E)
業務上の傷病により、所定労働時間の一部分についてのみ労働する日の休業補償給付の額は、療養開始後1年6か月未満の場合には、休業給付基礎日額から当該労働に対して支払われる賃金の額を控除して得た額の100分の60に相当する額である。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
原則としては、「給付基礎日額×60/100」となるのですが、
一部労働した場合の休業補償給付の額は、「(給付基礎日額-賃金の額)× 60/100」となります。
ちなみに、この場合の最高限度額の適用は、給付基礎日額から賃金額を引いた金額について適用されます。
なので、給付基礎日額そのものには適用されませんので注意が必要です。
念のためですが、給付基礎日額は労働基準法の平均賃金に相当する額ですので確認しておきましょう。
さて、休業(補償)給付は休業の1日目から3日目までの待期期間については支給されません。
業務災害である休業補償給付の場合、待期期間の間は事業主が休業補償をする必要があるのですが、通勤災害の場合はどうなるのでしょう。
次の過去問で確認しましょう。
通勤災害の場合の待期期間について、事業主による休業補償は?
(平成24年問2E)
休業給付が支給されない休業の初日から第3日目までの待期期間について、事業主は労働基準法に基づく休業補償の義務を負わない。
解説
解答:正
問題文のとおりで、通勤災害の場合、待期期間については、労働基準法に基づく休業補償は適用されません。
これはなぜかというと、業務災害の場合は、業務による傷病になるので、事業主が安全管理をする範囲内にありますが、通勤となると、事業主はどうしようもありません。
つまり、通勤については事業主は何の責任もないのです。
責任がないものに対して休業補償をする必要はありませんよね。
待期期間についての取り扱いがわかったところで、会社が休みの日に休業(補償)給付は支給されるのかどうかもチェックしておきましょう。
会社が休みの日でも休業補償給付は支給される?
(平成30年問5D)
会社の所定休日においては、労働契約上賃金請求権が生じないので、業務上の傷病による療養中であっても、当該所定休日分の休業補償給付は支給されない。
解説
解答:誤
会社の所定休日でも休業補償給付は支給されます。
これは最高裁の判例からの論点ですので確認しましょう。
〜雪島鉄工所事件〜
※赤字の部分だけ読んでいただいても大丈夫です。
「法一四条一項に規定する休業補償給付は、労働者が業務上の傷病 により療養のため労働不能の状態にあつて賃金を受けることができない場合に支給されるものであり、右の条件を具備する限り、その者が休日又は出勤停止の懲戒処分を受けた等の理由で雇用契約上賃金請求権を有しない日についても、休業補償給付の支給がされると解するのが相当である。」
となっています。
そもそも休業補償給付は、傷病を治療していて仕事ができない間の生活費の補償ですから、休日の場合でも支給されるということなんですね。
さて、上記の判例で「休日又は出勤停止の懲戒処分を受けた等の理由で雇用契約上賃金請求権を有しない日についても、休業補償給付の支給がされる」とありました。
懲戒処分中でも休業補償給付が出るということについても過去問がありますのでご紹介しますね。
懲戒処分で出勤停止の間も休業補償給付が出る??
(平成25年問2A)
休業補償給付は、労働者が業務上の傷病により療養のため労働不能の状態にあって賃金を受けることができない場合であれば、出勤停止の懲戒処分のため雇用契約上賃金請求権が発生しない日についても支給される。
解説
解答:正
先述したとおり、休業補償給付は出勤停止の懲戒処分のため雇用契約上賃金請求権が発生しない日についても支給されます。
さて、懲戒処分中でも休業補償給付が出るのであれば次のケースはどうなるのでしょう。
休業補償給付を受けている労働者が「留置施設」に入ってしまった場合です。。。
留置施設に入った場合、休業補償給付はどうなる?
(平成24年問3E)
労働者が留置施設に留置されて懲役、禁錮又は拘留の刑の執行を受けている場合、休業補償給付は支給されない。
解説
解答:正
問題文のように、留置施設に留置されている場合には、休業補償給付は支給されません。
ここでは根拠となっている規定をご紹介します。
法14条の2
労働者が次の各号のいずれかに該当する場合(厚生労働省令で定める場合に限る。)には、休業補償給付は、行わない。
一 刑事施設、労役場その他これらに準ずる施設に拘禁されている場合
二 少年院その他これに準ずる施設に収容されている場合
となっています。
これは、休業補償給付が支給されない理由は、悪いことをしていたからではなく、施設に入っていれば衣食住の心配はないわけで、生活はできるわけですから、お金までは出す必要はないだろう、ということではないでしょうか。
今回のポイント
- 一部労働した場合の休業補償給付の額は、「(給付基礎日額-賃金の額)× 60/100」となります。
- 通勤災害の場合、待期期間については、労働基準法に基づく休業補償は適用されません。
- 会社の所定休日でも休業補償給付は支給されます。
- 休業補償給付は出勤停止の懲戒処分のため雇用契約上賃金請求権が発生しない日についても支給されます。
- 留置施設に留置されている場合には、休業補償給付は支給されません。
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