労働保険料には、「一般保険料、特別加入の保険料(第1種〜3種)、印紙保険料」とあるわけですが、今回は一般保険料の計算の仕方についての過去問をチェックしていきます。
一般保険料を計算するには、賃金総額に、労災保険料率、雇用保険料率をそれぞれ乗じて算出します。
ちなみに、労災保険料分は事業主が全額負担し、雇用保険料分は事業主と労働者がそれぞれ決められた配分を負担しています。
ではまず最初に、雇用保険の適用がない人がいる場合の一般保険料の計算についての過去問を見ていきましょう。
雇用保険法の適用を受けない人がいる場合はどうする?
(平成24年雇用問10C)
労働保険徴収法第39条第1項に規定する事業以外の事業であっても、雇用保険法の適用を受けない者を使用する事業については、当該事業を労災保険に係る保険関係及び雇用保険に係る保険関係ごとに別個の事業とみなして一般保険料の額を算定する。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
問題文にある、「労働保険徴収法第39条第1項」というのは下記のようになっています。
法39条
1 都道府県及び市町村の行う事業その他厚生労働省令で定める事業については、当該事業を労災保険に係る保険関係及び雇用保険に係る保険関係ごとに別個の事業とみなしてこの法律を適用する。
これは二元適用事業についての規定ですね。
本試験でこういった条文番号が書かれていたときに、
「え?何の規定なんだろう??汗」
と焦ることもあると思いますが、条文の番号などみんな覚えているわけではありませんので、慌てる必要は全くありません。
むしろ、「あ、これは出題者の陽動作戦だな」くらいの余裕を持つようにしましょう。
なので、条文番号が出てきても、それは無視してそれ以外の問題文に意識を集中するようにしましょうね。
横道にそれましたが、問題の解説に戻りましょう。
条文番号の部分は無視して、、、、
雇用保険法の適用を受けない者がいる場合は、労災保険と雇用保険の賃金総額が変わってくるので、それぞれの賃金総額で労働保険料を計算して一般保険料を出すという意味で、保険関係ごとに「別個の事業とみなす」ということになります。
次は、雇用保険料率について、事業の種類がどう区分されているのかということを聞いてきています。
ちょっと見てみましょうか。
え、園芸サービス??
(令和元年労災問9A)
一般保険料における雇用保険率について、建設の事業、清酒製造の事業及び園芸サービスの事業は、それらの事業以外の一般の事業に適用する料率とは別に料率が定められている。
解説
解答:誤
園芸サービスの事業は、「農林水産業等」に入らず、「一般の事業」に区分されています。
ちなみに、雇用保険率は、次の3つの区分に分かれています。
- 一般の事業
- 農林水産業等・清酒製造業
- 建設の事業
どうして園芸サービスが農林水産業に入らないのか、私は知りません。
推測ですが、農林水産業は清酒製造業と合わせて、農作物などのモノを作る(獲る)業種ですね。
対して、園芸サービスは文字通り「サービス」を提供する業種とみなされるので農林水産業とは一線を画している気がします。。。
ちなみに、厚生労働省が雇用保険料率について通知していますが、園芸サービスについて書かれている箇所があります。
下に参考用としてURLを添付しますので、よろしければご覧になってみてくださいね。
(一番下に「園芸サービス」についての記載があります。)
参考記事:令和2年度の雇用保険料率について
さて、建設の事業では、賃金総額の特例というものがあって、賃金総額を正確に出すことが難しい場合は「請負金額」をベースに賃金総額を計算することになっています。
その「請負金額」について、どこまで金額を計上するかという問題が出ていますので確認しましょう。
請負金額に入れなくてもいいですか?
(令和元年労災問8C)
賃金総額の特例が認められている請負による建設の事業においては、請負金額に労務費率を乗じて得た額が賃金総額となるが、ここにいう請負金額とは、いわゆる請負代金の額そのものをいい、注文者等から支給又は貸与を受けた工事用物の価額等は含まれない。
解説
解答:誤
「注文者等から支給又は貸与を受けた工事用物の価額等は含まれない」の部分が誤りです。
まず、賃金総額の特例は、
「請負による建設の事業に係る賃金総額については、賃金総額を正確に算定することが困難な場合、その事業の種類に従い、請負金額に労務費率を乗じて得た額を賃金総額とする。」
と規定されています。
で、
注文者等から支給又は貸与を受けた工事用物(機械装置)の価額等は請負金額に加算する
のが原則となっており、問題文は誤りとなるのです。
ただし、「機械装置の組立て又は据付けの事業」が、賃金総額の特例で請負金額を出す場合は、機械装置の価額相当額を含みませんので注意が必要です。
ところで、賃金の中には通貨以外のもので支払われるものもあります。
その際、どこまで賃金の範囲に入るのか、お役所では誰が権限を持っているのか、ということを決めておく必要があります。
次の過去問を見てみましょう。
通貨以外のもので支払われる賃金の範囲は誰が決める?
(令和元年雇用問10C)
労働保険徴収法第2条第2項の賃金に算入すべき通貨以外のもので支払われる賃金の範囲は、労働保険徴収法施行規則第3条により「食事、被服及び住居の利益のほか、所轄労働基準監督署長又は所轄公共職業安定所長の定めるところによる」とされている。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
ちなみに、文中にある「労働保険徴収法第2条」の規定は以下のようになっています。
法2条
2 この法律において「賃金」とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うもの(通貨以外のもので支払われるものであつて、厚生労働省令で定める範囲外のものを除く。)をいう。
3 賃金のうち通貨以外のもので支払われるものの評価に関し必要な事項は、厚生労働大臣が定める。
つまり、
賃金に算入すべき通貨以外のもので支払われる賃金の範囲は労基署長や公共職業安定所長が決めますが、評価については厚生労働大臣が決める
ということになっているようですね。
今回のポイント
- 雇用保険法の適用を受けない者がいる場合は、労災保険と雇用保険の賃金総額が変わってくるので、それぞれの賃金総額で労働保険料を計算して一般保険料を出すことになります。
- 園芸サービスの事業は、「農林水産業等」に入らず、「一般の事業」に区分されています。
- 賃金総額の特例で賃金総額を計算する場合、請負金額に、注文者等から支給又は貸与を受けた工事用物(機械装置)の価額等を加算することになっています。
- 賃金に算入すべき通貨以外のもので支払われる賃金の範囲は労基署長や公共職業安定所長が決めますが、評価については厚生労働大臣がすることになっています。
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