このブログでは、毎日科目を変えてお送りしています。
なぜかというと、早いうちに全科目に触れておくことで、社労士試験の全容がイメージしやすくなり、勉強のペースが掴みやすくなるからです。
なので、あまり構えずに「ふ〜ん、そうなんだ」くらいの気軽な気持ちで読んでみてくださいね。
今回は、労働基準法から「賃金の定義」について見ていきたいと思います。
労働基準法第11条には、
「この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」
と規定されています。
とはいうものの、具体的にどれが賃金になって、賃金にならないものにはどんなものがあるのか分かりませんので、過去問を通して見ていくことにしましょう。
ガソリン代は「賃金」?
(令和元年問3オ)
私有自動車を社用に提供する者に対し、社用に用いた場合のガソリン代は走行距離に応じて支給される旨が就業規則等に定められている場合、当該ガソリン代は、労働基準法第11条にいう「賃金」に当たる。
解説
解答:誤り
問題文の場合、賃金には当たりません。
ガソリン代は走行距離に応じて支給されることが就業規則に定められているということなので、
そのガソリン代は、実費弁償にあたり、賃金にはなりません。
ただし、ガソリン代が「一律1万円」というような形で実費弁償の要素が薄くなる形で支給されていると、賃金に該当する可能性があります。
では、別の角度で賃金について見てみましょう。
下の問題では、本来、労働者が負担するべき所得税や社会保険料などを、事業主が代わりに負担している場合、
その事業主が負担している部分が賃金にあたるのかどうかが問われていますので確認しましょう。
事業主が労働者が負担するべき所得税を負担したらどうなる?
(令和3年問1E)
労働者が法令により負担すべき所得税等(健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料等を含む。)を事業主が労働者に代わって負担する場合、当該代わって負担する部分は、労働者の福利厚生のために使用者が負担するものであるから、労働基準法第11条の賃金とは認められない。
解説
解答:誤り
問題文の場合、事業主が労働者に代わって所得税を負担している部分は、本来は労働者が負担する部分なので賃金にあたります。
先ほどのガソリン代と違い、実費の弁償というわけではなく、所得税の肩代わりという名の賃金になるということですね。
さて、次は退職金について見てみましょう。
労働の対償である毎月のお給料と違い、退職金は、「これまでよく頑張ってくれたね」という功労報償の要素が強いお金ですし、突発的に支給されるものなので、通常は賃金に該当しません。
でも、ある性格を帯びると退職金も賃金になりますので、どういうことなのか見てみましょう。
退職金が賃金に該当するための条件
(平成27年問4D)
労働協約、就業規則、労働契約等によってあらかじめ支給条件が明確である場合の退職手当は、労働基準法第11条に定める賃金であり、同法第24条第2項の「臨時に支払われる賃金」に当たる。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
退職手当は、通常は賃金になりませんが、労働協約や就業規則、労働契約などによって、あらかじめ支給条件が明確になっている場合は賃金に該当することになります。
これは、退職手当に限らず、結婚祝金や災害見舞金などについても同じ考え方です。
では最後に、賃金に該当しないものについてもう少し見ておきましょう。
下の問題では、いろいろな種類の手当てが並んでいますが、賃金に該当しないものが入っています。
それはいったい、どれでしょうか?
賃金に該当しないものはどれ?
(平成26年問3ア)
賞与、家族手当、いわゆる解雇予告手当及び住宅手当は、労働基準法第11条で定義する賃金に含まれる。
解説
解答:誤り
賞与や家族手当、住宅手当は賃金ですが、「解雇予告手当」は賃金ではありません。
解雇予告手当は、使用者が労働者を解雇するために一方的に渡すもので、過去の労働に対する対償の性格はありませんので、
解雇予告手当は、賃金とはなりません。
今回のポイント
- ガソリン代が、走行距離に応じて支給されることが就業規則に定められている場合、そのガソリン代は、実費弁償にあたり賃金にはなりません。
- 本来、労働者が負担するべき所得税や社会保険料などを、事業主が代わりに負担している場合、その事業主が負担している部分については賃金となります。
- 退職手当は、通常は賃金になりませんが、労働協約や就業規則、労働契約などによって、あらかじめ支給条件が明確になっている場合は賃金に該当することになります。
- 賞与や家族手当、住宅手当は賃金ですが、「解雇予告手当」は賃金ではありません。
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