今回は、使用者と労働者との間で交わされる労働契約の締結をテーマにした過去問を集めてみました。
労働契約は、労働者にとって一番大切なものになりますから、労基法でも色々と規定されていますので社労士試験でもよく出題されています。
今一度、確認しておきましょう。
では、過去問に入って行きたいと思います。
最初の問題は、労働条件の明示が論点になっています。
しかも、派遣がからんできているのですが、派遣労働者への労働条件の明示はどうなっているのでしょうか。
派遣元の使用者は労働条件の明示をしなくてもいい??
(平成24年問2E)
派遣元の使用者は、労働者派遣法第44条第2項における労働基準法の適用に関する特例により、労働時間に係る労働基準法第32条、第32条の第1項等の規定については、派遣先の事業のみを派遣中の労働者を使用する事業とみなすとされているところから、これらの特例の対象となる事項については、労働基準法第15条による労働条件の明示をする必要はない。
解説
解答:誤り
派遣元の使用者は、労働者に対して労働時間や休憩、休日など労働基準法第15条に定められた労働条件の明示をする必要がありますので誤りです。
派遣労働者が仕事をするのは派遣先の事業場なので、労基法第32条で定めている労働時間や休憩、休日の規定については派遣先に適用されますが、
労働契約を結ぶのは派遣元の使用者なので、法第15条に基づく労働条件の明示はきっちりと労働者に対して行う必要があります。
では次に、労働契約と労働基準法の関係について見ておきましょう。
労働契約の内容が、必ずしも労働基準法の規定に沿っているとは限りません。
もし、労働契約の内容が労働基準法の規定と違っていた場合にどうなるのか次の問題で確認しましょう。
労働契約と労働基準法の関係
(平成27年問3A)
労働協約に定める基準に違反する労働契約の部分を無効とする労働組合法第16条とは異なり、労働基準法第13条は、労働基準法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とすると定めている。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
労基法第13条では、
「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする」
となっており、無効となった部分については労基法の基準となります。
また、労基法の基準に達しない労働契約のすべてが無効になるのではなく、基準に達していない部分だけが無効になるのも意識しておきたいですね。
さて、次の問題は満60歳以上の労働者との労働契約の期間がテーマになっています。
労基法では、労働契約の期間の長さは最長で3年となっていますが、満60歳以上の労働者と、後述する専門的知識等を有する者については別途定められていますので見てみましょう。
満60歳以上の労働者との労働契約の期間の上限
(平成29年問3A)
満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約について、労働契約期間の上限は当該労働者が65歳に達するまでとされている。
解説
解答:誤り
満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約については、65歳が上限なのではなく、「5年」が上限になっています。
なので、63歳の時に締結する労働契約の年数も5年が上限なので、65歳に縛られているわけではありません。
で、次の問題は、高度の専門知識等がある労働者との労働契約ですが、年数以外にも規定があるので注意して読んでみましょう。
高度の専門知識等がある労働者との労働契約のルール
(令和2年問5ア)
専門的な知識、技術又は経験(以下「専門的知識等」という。)であって高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者との間に締結される労働契約については、当該労働者の有する高度の専門的知識等を必要とする業務に就く場合に限って契約期間の上限を5年とする労働契約を締結することが可能となり、当該高度の専門的知識を必要とする業務に就いていない場合の契約期間の上限は3年である。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
高度の専門知識等を有する者との労働契約の期間は、最長5年ですが、
これは専門的知識を必要とする業務にちゃんと就くことが条件になりますから、それ以外の業務につく場合は、原則どおり3年の労働契約が最長になります。
先ほどの60歳以上の者との労働契約にはそのような規定はありませんから区別しておきましょう。
で、労働契約の3年の原則が適用されないものがもう一つあります。
それは、「一定の事業の完了に必要な期間を定めるもの」なのですが、どういう意味なのか最後に確認しておきましょう。
「一定の事業の完了に必要な期間」ってどういうこと?
(平成27年問3B)
契約期間の制限を定める労働基準法第14条の例外とされる「一定の事業の完了に必要な期間を定めるもの」とは、その事業が有期的事業であることが客観的に明らかな場合であり、その事業の終期までの期間を定める契約であることが必要である。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
「一定の事業の完了に必要な期間を定めるもの」というのは、たとえばダムの建設工事やトンネル、ビルの建設工事のように、その事業の終期が明確になっているものを指します。
有期的事業で終期が明らかな事業については、労働契約の期間もそれに合わせて締結してもよいということになっています。
普通の会社の場合は、「◯年後に会社をたたみます」なんてことはあまりありませんよね。
なので、労働への不当な足止めをしないよう、有期の労働契約は3年が上限になっているのですね。
ちなみに、無期雇用の労働者の場合は、民法第627条によって、2週間前に通知すればいつでも労働契約を解除できることになっているので、労働契約の上限は設定されていません。
今回のポイント
- 派遣元の使用者は、労働者に対して労働時間や休憩、休日など労働基準法第15条に定められた労働条件の明示をする必要があります。
- 労基法第13条では、「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする」となっており、無効となった部分については労基法の基準となります。
- 満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約については、「5年」が上限になっています。
- 高度の専門知識等を有する者との労働契約の期間は、最長5年ですが、専門的知識を必要とする業務に就くことが条件なので、それ以外の業務につく場合は、原則どおり3年の労働契約が最長になります。
- 労働契約の3年の原則の例外として「一定の事業の完了に必要な期間を定めるもの」がありますが、ダムの建設工事などのように、その事業の終期が明確になっているものを指します。
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