元方事業者とは、いわゆる「元請」にあたる事業者のことです。
たとえば、ビルを建てたいAさんがいたとして、AさんがB会社にビルの建設を発注したとします。
ということは、Bさんが元方事業者になるわけです。
そして、元方事業者のなかでも、建設業または造船業の特定事業を行う事業者を特定元方事業者といいます。
今はビル一つ建てる場合でも、多くの下請け業者、孫請け業者などが協力して工事を行いますので、元方事業者は事故が起こらないようにきちんと統率をする責任があるということですね。
では、社労士試験で元方事業者にはどんな責任があるのか見てみましょう。
元方事業者はどこまで指導すればいいの?
(平成22年問8B)
製造業に属する事業の元方事業者は、関係請負人が、当該仕事に関し、労働安全衛生法又は同法に基づく命令の規定に違反しないよう必要な指導を行わなければならず、これらの規定に違反していると認めるときは、是正のため必要な指示を行わなければならないが、関係請負人の労働者に対しては、このような指導及び指示を直接行ってはならない。
解説
解答:誤
問題文の場合、製造業の元方事業者は、「関係請負人の労働者に対しても必要な指導を行わなければなりません」。
元方事業者は自分の会社の従業員だけでなく、下請け業者や孫請け業者にもきちんと指導をしてね、ということですね。
また、製造業の元方事業者は、以下のような規定もあります。
法30条2の1項 製造業その他政令で定める業種に属する事業(特定事業を除く。)の元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、作業間の連絡及び調整を行うことに関する措置その他必要な措置を講じなければならない。
では、次の過去問を見てみましょう。
造船業は船を製造するんですが、、、
(平成22年問8D)
造船業に属する事業の元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、協議組織の設置及び運営を行うこと、作業場所を巡視すること、関係請負人が行う労働者の安全又は衛生のための教育に対する指導及び援助を行うこと等に関する必要な措置を講じなければならない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
造船業は、船を製造する製造業ですが、冒頭にも述べたとおり、建設業と並んで特定元方事業者に分類されます。
ですので、必要な措置も特定元方事業者のものになるんですね。
特定元方事業者が行うべき措置とは
① 協議組織の設置及び運営を行うこと。
② 作業間の連絡及び調整を行うこと。
③ 作業場所を巡視すること。
④ 関係請負人が行う労働者の安全又は衛生のための教育に対する指導及び援助を行うこと。
などです。
製造業に比べて建設業、造船業の方が危険が多いので、それだけやらなければならないことが多いということです。
では最後に、特定元方事業者の巡視に関する過去問を確認しましょう。
特定元方事業者の巡視の頻度は?
(平成27年問8C)
特定元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するために、作業期間中少なくとも1週間に1回、作業場所を巡視しなければならない。
解説
解答:誤
特定元方事業者は、「1週間に1回」ではなく、「毎作業日に少なくとも1回」巡視を行う必要があります。
巡視については、衛生管理者などにも規定がありますので、下記の記事も参考にしてもらえると嬉しいです。
今回のポイント
- 製造業に属する事業の元方事業者は、労働安全衛生法又は同法に基づく命令の規定に違反しないよう、関係請負人の労働者に対しても、必要な指導及び指示を行う必要があります。
- 特定元方事業者(建設業、造船業)が行うべき措置とは① 協議組織の設置及び運営を行うこと。
② 作業間の連絡及び調整を行うこと。
③ 作業場所を巡視すること。(毎作業日に少なくとも1回)
④ 関係請負人が行う労働者の安全又は衛生のための教育に対する指導及び援助を行うこと。
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