賃金支払の5原則といえば
- 通貨支払
- 直接払
- 全額払
- 毎月1回以上払
- 一定期日払
の5つですね。
労使協定や労働協約がどこの原則に適用されるだとか、端数の切り上げや切り捨てなど色々な論点が詰まっているので、社労士試験でもよく出題されていますね。
テキストを読み込んで覚えていくのもテですが、過去問に何度も触れることで、
どういった形で論点を問われるのかを知る方が早かったりしますので、早めに問題演習に入るようにすることをオススメします。
銀行口座を指定するということは?
(平成28年問3A)
使用者は、労働者の同意を得た場合には、賃金の支払について当該労働者が指定する銀行口座への振込みによることができるが、「指定」とは、労働者が賃金の振込み対象として銀行その他の金融機関に対する当該労働者本人名義の預貯金口座を指定するとの意味であって、この指定が行われれば同意が特段の事情のない限り得られているものと解されている。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
以前は、通貨払の原則により、現金で労働者にお給料を手渡していたそうです。(「そうです」としたのは、私は経験していないからです。笑)
しかし、お給料を現金で渡すというのは、用意する方も受け取る方も管理が大変ですよね。
このキャッシュレスの時代にあってはなおさらです。
話を戻しますと、この問題文のポイントは、労働者本人名義の預貯金口座の「指定が行われれば同意が特段の事情のない限り得られている」というところです。
口座の番号を教えるということは、振込に同意したから教えたんだよね、ということですね。
あと、通達によると、「振込み」とは、「振り込まれた賃金の全額が所定の賃金支払日に払い出し得るように行われることを要するものであること。」
まあ、それはそうですよね。
たとえば、25日がお給料日で、25日の朝にお給料が入っていないと、色々な支払のための振込作業ができないですもんね。
ちなみに、労使協定や労働協約で本人が同意した、ということにはならないので注意が必要です。
あくまで個人個人から同意を得てね、ということですね。
さて、労働協約といえば、賃金についての規定がありましたね。
次の過去問を見てみましょう。
賃金支払の5原則で労働協約が登場するのは?
(平成29年問6A)
労働協約の定めによって通貨以外のもので賃金を支払うことが許されるのは、その労働協約の適用を受ける労働者に限られる。
解説
解答:正
これも通貨払の原則なのですが、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合は、例外が認められています。
労働協約に別段の定めをする場合というのは、たとえば通勤定期券を現物支給するケースですね。
ちなみに、全額払の例外は「労使協定」でしたね。
この、労働協約と労使協定をひっくり返して出題されることが多いですのでしっかりと押さえておきましょう。
次は、全額払の原則についての過去問を確認しましょう。
賃金の端数処理はどうなってる?
(平成29年問6C)
1か月の賃金支払額(賃金の一部を控除して支払う場合には控除した額。)に100円未満の端数が生じた場合、50円未満の端数を切り捨て、それ以上を100円に切り上げて支払う事務処理方法は、労働基準法第24条違反としては取り扱わないこととされている。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
端数処理については以下のようになっています。
- 1か月の賃金支払額(賃金の一部を控除して支払う場合には控除した額。)に100円未満の端数が生じた場合、50円未満の端数を切り捨て、それ以上を100円に切り上げて支払うこと。
- 1か月の賃金支払額(賃金の一部を控除して支払う場合には控除した額。)に生じた1,000円未満の端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払うこと。
であれば、全額払の原則には違反しないということになっています。
つまり、「1か月」の賃金について、「10円単位の四捨五入」、「100円単位の繰越」ができるということですね。
また、1か月における残業や休日労働などの「労働時間」については、1時間未満の端数の四捨五入が認められています。
どういうことかというと、30分未満の端数を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げるのはオーケーということです。
最後に賃金に過払いがあったときの取り扱いの考え方について出題がありましたのでチェックしてみましょう。
賃金に過払いがあったときにいつ調整すればいい?
(平成29年問6D)
賃金の過払を精算ないし調整するため、後に支払われるべき賃金から控除することは、「その額が多額にわたるものではなく、しかもあらかじめ労働者にそのことを予告している限り、過払のあつた時期と合理的に接着した時期においてされていなくても労働基準法24条1項の規定に違反するものではない。」とするのが、最高裁判所の判例である。
解説
解答:誤
「過払のあつた時期と合理的に接着した時期においてされていなくても」の部分が誤りです。
これは「最判昭和44年12月18日(福島県教組事件)」の判例からの出題なのですが、
「許さるべき相殺は、過払のあつた時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてされ、また、あらかじめ労働者にそのことが予告されるとか、その額が多額にわたらないとか、要は労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれのない場合でなければならない」
となっています。
確かに多く払いすぎたお給料を相殺するわけですから、結果的にもらう金額は変わらないにしても、1月の過払いを年末のお給料で相殺するよ、と言われてもビミョーですよね。
なんか損した気分になりますし。苦笑
なぜ、この過去問を取り上げたかというと、
社労士試験では、択一にしても選択にしても、判例から出題されることがよくあります。
私は受験勉強をしているとき、判例集などを買って読んでいたこともありましたが、、、
判例をすべて覚えていくのは事実上不可能な話です。
ではどうするんだ、という話になるんですが、「判例も所詮、法律の主旨から外れることはない」と開き直りました。
でも、合格することができたのです。
なので、たとえば
「労働基準法は労働者保護のためにある」という主旨を押さえておけば問題の正誤を判断できることが多いので、丸暗記主義に走らなくても大丈夫です。
労基法や労働一般などで判例から出されている過去問に何度も触れることで、法律の主旨が分かってくると思いますから、安心して学習を進めていくようにしましょう。
今回のポイント
◆賃金支払の5原則
- 通貨支払
- 直接払
- 全額払
- 毎月1回以上払
- 一定期日払
◆法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合は、通貨払の例外が認められています。
◆全額払の例外は「労使協定」です。
◆「1か月」の賃金について、「10円単位の四捨五入」、「100円単位なら繰越」ができます。
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