雇用保険法での被保険者とは、「適用事業に雇用される労働者であつて、第6条各号に掲げる者以外のものをいう。(法4条)」と規定されています。
これをこのまま解釈すると、被保険者になるには、「雇用されている」ことが条件になっていますね。
(ちなみに、「第6条各号」というのは、1週間の所定労働時間が20時間未満の人などの適用除外について記載されています)
社労士試験では、一種の事例問題のような形で出題されることがあります。
でも、「雇用されているかどうか」の視点で見ると解答が見えてきますので、落ち着いて問題文を読むようにしましょうね。
代表取締役、ということは??
(平成24年問1B)
株式会社の代表取締役が被保険者になることはない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
代表取締役ということは企業のトップということですね。
「雇用されている」立場ではないですから(逆に雇用する方の立場ですね)、雇用保険の被保険者になることはありません。
ちなみに、健康保険法の場合は、法人から報酬を得ているときは、健康保険の被保険者になりますので、比較して覚えておきましょう。
さて、働き方改革で副業をする方が増えていますが、2つ以上の会社に勤めている場合、雇用保険はどうなるのでしょうか。
次の過去問をチェックしましょう。
2つ以上の会社に勤めている場合は、両方の会社の被保険者になる??
(平成25年問1C)
同時に2以上の雇用関係について被保険者となることはない。
解説
解答:正
同時に2以上の雇用関係にある場合は、「その者が生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける雇用関係にある方の雇用関係についてのみ被保険者となります。」
なので、同時に2つ以上の被保険者になることはありません。
労災保険の場合は、両方の会社の被保険者になりますね。
たとえば、A社の勤務を終えて、B社に向かう途中にケガをしたら、B社の通勤災害が適用される可能性があります。
どうして、雇用保険と労災保険で取り扱いが違うのかというと、本当の理由はわかりませんが、
雇用保険は被保険者も保険料を負担しますが、労災保険は全額事業主が負担するから、イメージすると区別しやすいと思います。
では、働き方改革とくれば、テレワークを活用した在宅勤務がありますが、在宅勤務者と雇用保険についての過去問がありますので、確認しましょう。
在宅勤務者は雇用保険の被保険者でいられる?
(平成30年問2A)
労働日の全部又はその大部分について事業所への出勤を免除され、かつ、自己の住所又は居所において勤務することを常とする在宅勤務者は、事業所勤務労働者との同一性が確認できる場合、他の要件を満たす限り被保険者となりうる。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
在宅勤務者も、事業所勤務労働者との同一性が確認できれば原則として被保険者となりうります。
在宅勤務といっても、働いている場所が違うだけで、就業規則などのルールが事業所で勤務している従業員と同じであれば、その会社の雇用保険の被保険者になりうる、ということですね。
ただ、クラウドソーシングなど請負で契約をしている在宅勤務者の場合は、事業所で勤務している従業員とルールが違うことが多いですから注意が必要ですね。
では最後に、生命保険会社などの外務員さんと雇用保険の関係についての過去問を見ておきましょう。
生命保険会社の外務員さんは被保険者になれない??
(平成27年問1E)
生命保険会社の外務員、損害保険会社の外務員、証券会社の外務員は、その職務の内容、服務の態様、給与の算出方法等からみて雇用関係が明確でないので被保険者となることはない。
解説
解答:誤
生命保険会社の外務員、損害保険会社の外務員、証券会社の外務員の方々は、「その職務の内容、服務の態様、給与の算出方法等の実態により判断して雇用関係が明確である場合」は、被保険者となります。
つまり、職務の内容などが事業主の支配下にあって「雇用関係」が確認される場合は被保険者になるということなんですね。
くわしく確認したい方は行政手引にありますので、参照してみてくださいね。
リンクを開いてスクロールしていただき、19ページに記載があります。
参考記事:行政手引20351 P19 「ヘ 生命保険会社の外務員等」
今回のポイント
- 雇用保険の被保険者になるには、適用事業に「雇用されている」労働者であることが条件になっています。
- 株式会社の代表取締役が被保険者になることはありません。
- 同時に2以上の雇用関係にある場合は、その者が生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける雇用関係にある方の雇用関係についてのみ被保険者となります。
- 在宅勤務者も、事業所勤務労働者との同一性が確認できれば原則として被保険者となりうります。
- 生命保険会社の外務員、損害保険会社の外務員、証券会社の外務員の方々は、「その職務の内容、服務の態様、給与の算出方法等の実態により判断して雇用関係が明確である場合」は、被保険者となります。
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