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【ふわっと全科目を眺める】「社労士試験 労基法 賃金の支払い」過去問・労基-85

このブログでは、毎日科目を変えてお送りしています。

なぜかというと、早いうちに全科目に触れておくことで、社労士試験の全容がイメージしやすくなり、勉強のペースが掴みやすくなるからです。

なので、あまり構えずに「ふ〜ん、そうなんだ」くらいの気軽な気持ちで読んでみてくださいね。

今日は、労基法から「賃金の支払」について見ていきたいと思います。

使用者が、労働者に対して賃金をどのように支払うのかによって、労働者が多大な不利益をこうむる可能性がありますので、労基法では賃金の支払いの方法についても規定されています。

では、どのようなルールになっているのか、見ていきましょう。

 

賃金のそもそもの支払い方

(平成25年問7ア)

いわゆる通貨払の原則の趣旨は、貨幣経済の支配する社会では最も有利な交換手段である通貨による賃金支払を義務づけ、これによって、価格が不明瞭で換価にも不便であり弊害を招くおそれが多い実物給与を禁じることにある。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

たとえば、働いている会社が文房具の製造メーカーだったとして、お給料がすべて消しゴムだったら困りますよね。

家賃を払ったり食材を買うのは現金で支払うわけで、消しゴムで物々交換するのも大変ですし。笑

なので、労基法では、「通貨払の原則」があるわけです。

とはいっても、賃金の支払いを全て現金でしなければならないか、ということになるとそうでもありません。

所定の手順を踏めば、通貨以外のもので賃金を支払うこともできるようになります。

その手順とはどういうものなのか見てみましょう。

 

通貨以外のもので賃金を支払うには

(令和元年問5A)

労働基準法第24条第1項は、賃金は、「法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、通貨以外のもので支払うことができる。」と定めている。

 

解説

解答:誤り

賃金を通貨以外のもので支払うためには、問題文にある労使協定ではなく、「労働協約」がある場合に可能になります。

労働協約というのは、使用者と労働組合が話し合った決めたルールのことです。

なので、労働組合がない会社では労働協約はありません。

また、通貨以外で賃金を支給するケースといえば、たとえば、通勤費を現金ではなく、定期券で支給するといったことが考えられますね。

ちなみに、労使協定が出てくるのは、所定の費用を賃金から天引きする場合ですね。

それでは次に、「賃金の一定期日払」の原則について見てみましょう。

一定期日払というのは、賃金は決まった日に支払いなさい、というルールのことです。

一般的にお給料日というのは、たとえば「毎月25日」というよう具体的な数字が示されていることが多いですが、

下の問題の場合はどうなのでしょうか。

 

賃金の一定期日払の原則の意味

(平成27年問4E)

労働基準法第24条第2項に定める一定期日払の原則は、期日が特定され、周期的に到来することを求めるものであるため、期日を「15日」等と暦日で指定する必要があり、例えば「月の末日」とすることは許されない。

 

解説

解答:誤り

労基法の一定期日払の原則では、賃金の支払日が特定されて、その日が周期的に来ればいいので、賃金の支払日を「月末」とすることは可能です。

ただ、「毎月第4月曜日」というようにしてしまうと、カレンダーの都合で賃金の支払日の間隔が大きくずれるので許されていません。

つまり、賃金の支払が月給の場合は、およそ30日ごとに定期的に支払われることが大切なんですね。

では最後に、賃金の相殺について確認しておきましょう。

労基法では原則として「全額払の原則」があるので、使用者側が一方的に労働者の賃金から相殺をするのは認められていません。

ただ、最高裁の判例によると、○○があれば労基法違反とは言えない、としています。

では、賃金の相殺に必要なこととは何なのでしょうか?

 

賃金の相殺が認められるための条件

(令和3年問3ウ)

使用者が労働者に対して有する債権をもって労働者の賃金債権と相殺することに、労働者がその自由な意思に基づき同意した場合においては、「右同意が労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、右同意を得てした相殺は右規定〔労働基準法第24条第1項のいわゆる賃金全額払の原則〕に違反するものとはいえないものと解するのが相当である」が、「右同意が労働者の自由な意思に基づくものであるとの認定判断は、厳格かつ慎重に行われなければならない」とするのが、最高裁判所の判例である。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

賃金の相殺は、「労働者の自由な意志」があれば可能としています。

ただ、問題文にもあるように、労働者の自由な意思で相殺に応じたかどうかの認定については、「厳密かつ慎重」に行う必要があるとしています。

なので、労働者の相殺に関する同意書だけでは、裁判で争った場合に無効になる可能性があるということですね。

 

今回のポイント

  • 労基法では、通貨払の原則があり、賃金は通貨で支払う必要がありますが、労働協約により通貨以外のもので賃金を支払うこともできます。
  • 労基法の一定期日払の原則では、賃金の支払日が特定されて、その日が周期的に来ればいいので、賃金の支払日を「月末」とすることは可能です。
  • 全額払の原則により、使用者が一方的に労働者の賃金に対して相殺することはできませんが、労働者が、自由な意思に基づいて同意した場合は、労基法違反とは言えないものの、労働者が真意で合意したかどうかについては、慎重に判断する必要があります。

 

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