労働基準法では、労働者より立場の強い使用者に対して、労働者を守るために色々な規定を設けています。
その中の一つが強制労働を禁止している法5条です。
また、強制労働につながりかねない要素である、損害賠償額の予定を禁止した法6条について取り扱った過去問を集めてみましたので見ていきましょう。
最初の問題は、法5条にある強制労働の禁止に関する問題です。
条文に「不当」とあるのですが、その定義がどのようになっているのか見てみましょう。
「不当」の定義とは
(令和2年問4B)
労働基準法第5条に定める「精神又は身体の自由を不当に拘束する手段」の「不当」とは、本条の目的に照らし、かつ、個々の場合において、具体的にその諸条件をも考慮し、社会通念上是認し難い程度の手段をいい、必ずしも「不法」なもののみに限られず、たとえ合法的であっても、「不当」なものとなることがある。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
労基法第5条には、
「使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。」
とあり、その中の「不当」がこの問題文の論点になっているのですが、
暴行や脅迫など明らかな不法行為にあたらなくても、世間一般の常識(社会通念上)に照らして、「それはひどいよね」というものになると「不当」にあたる可能性があるということですね。
では、そもそも法5条でいうところの使用者と労働者はどのように定義されているのか、次の問題で確認しましょう。
使用者と労働者の関係性
(令和元年問3イ)
労働基準法第5条は、使用者は、労働者の意思に反して労働を強制してはならない旨を定めているが、このときの使用者と労働者との労働関係は、必ずしも形式的な労働契約により成立していることを要求するものではなく、事実上の労働関係が存在していると認められる場合であれば足りる。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
問題文にある形式的な労働契約というのは、たとえば雇用契約書を交わしているとか、使用者が労働条件通知書を交付しているというようなことを指しますが、
そもそも労働者に労働を強制するような使用者が、雇用契約書を交わしているとは限りませんので、
使用者の指揮命令の元に労働者が働いているという事実上の労働関係があれば、使用者と労働者の関係性は成立するということですね。
では、この法5条に違反した場合の罰則がどうなっているのかを見てみましょう。
ここでは、数字をしっかり押さえておきたいですね。
強制労働に違反した場合の罰則
(平成29年問5イ)
労働基準法第5条に定める強制労働の禁止に違反した使用者は、「1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金」に処せられるが、これは労働基準法で最も重い刑罰を規定している。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
法5条の強制労働の禁止事項に違反した場合の、
「1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金」
というのは労働基準法の罰則の中で最強の罰則になっています。
ちなみに、次に重い罰則が、中間搾取を禁止した法6条違反などに適用される「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」ですから格段の違いですね。
さて、次は労働者の強制労働につながりやすい損害賠償について取り扱った過去問を見てみましょう。
労働基準法第16条では、
「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」
と規定していますが、どのような行為が禁止されているのか確認していきたいと思います。
労働者に損害賠償の請求はできる?
(平成23年問2C)
使用者は、労働契約の締結において、労働契約の不履行について違約金を定めることはできないが、労働者が不法行為を犯して使用者に損害を被らせる事態に備えて、一定金額の範囲内で損害賠償額の予定を定めることはできる。
解説
解答:誤り
法16条では、一定金額の範囲内で損害賠償額の予定を定めることも禁止しているので誤りです。
たとえば、労働者が仕事をしないという労働契約の不履行について違約金を決めることはアウトですし、
労働者が設備を壊して使用者に損害を与えたということで労働者に具体的な損害賠償額を決めるのもNGというわけです。
ただ、ここで一つ確認をしておかなければならないのが、労働者が使用者に対して損害を与えた場合に、使用者は労働者に損害賠償を請求することができないのか、ということです。
こちらを最後に見ておくことにしましょう。
労働者に損害賠償の請求はできる? その2
(平成30年問5B)
債務不履行によって使用者が損害を被った場合、現実に生じた損害について賠償を請求する旨を労働契約の締結に当たり約定することは、労働基準法第16条により禁止されている。
解説
解答:誤り
現実に生じた損害について使用者が労働者に賠償を請求すること自体は法16条では禁止していないので誤りです。
法16条では、あくまで「損害賠償の金額を予定」することが禁止されているだけです。
ちなみに、実際に生じた損害に対して、使用者が労働者に全額賠償請求できるのかというと、これはまた別問題です。
使用者には、労働者に対して使用者責任がある以上、労働者に損害のすべてを押し付けることができない可能性は高いですね。
今回のポイント
- 労働基準法第5条に定める「精神又は身体の自由を不当に拘束する手段」の「不当」とは、社会通念上是認し難い程度の手段をいいます。
- 法5条にある使用者と労働者の関係は、使用者の指揮命令の元に労働者が働いているという事実上の労働関係があれば、使用者と労働者の関係性は成立するということですね。
- 法5条の強制労働の禁止事項に違反した場合の罰則は、「1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金」となっています。
- 法6条では、労働契約の不履行について違約金を定めることはできず、損害賠償額の予定を定めることもできません。
- 現実に生じた損害について使用者が労働者に賠償を請求すること自体は法16条では禁止していません。
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